第4話 地上へ
魔眼でケルベロスを見ると複眼の時よりもケルベロスの状態や魔力量や体力なども良く見える。
そして、レベルでは優っているケルベロスの動きが今までより遅く見える。
「これなら勝てるかも。」
ケルベロスの噛みつきや爪を交わしつつ、腐蝕大爪剣を繰り出す。
腐蝕大爪剣は爪を剣のように伸ばし腐蝕魔法を付与して攻撃する。
素早さも進化した事でケルベロスを圧倒している、
腐蝕大爪剣でケルベロスを切り刻むと魔石を回収。
レベルは212に上昇した。
ステータスも怪物級である事は間違いない。
私が放つ魔力に魔物達が逃げてしまうようになった。
これで無駄な戦闘は避けられそうだが、気を付けなくてはならないのは人間の方かもしれない。
階層もかなり登って来て、感じられる魔物もレベルも低い。
出口の階層には完全に近づきつつある。
ある階層に辿り着くと、遠くから人間の気配と声が聞こえてくる。
このフロアに居る魔物はレベル50程度。
私が見つかれば大騒ぎになりかねない。
だが、人間達の様子がおかしい。
騒ぐ声や悲鳴も聞こえた。
どうやら魔物の群れにでも襲われているようだ。
そっと近づいて見ると。
パーティは5人、男性の冒険者が3人、女性の冒険者が2人、その内1人の女性冒険者は血を流して倒れている。
それを取り囲むようにして男性冒険者がデススパイダーの群れと戦っている。
デススパイダーは蜘蛛の魔物で私同様毒を使って獲物を仕留める。
群れる事も多く、遭遇すると厄介な魔物だ。
「アリアーナ!」
1人の女性が倒れている女性に声を枯らして叫び続けている。
「ダメだ。このままだと全滅する。」
男性達はその周りであたふたしている。
デススパイダー達は人間と言う獲物を前に私の気配に気付いていないようだ。
そして、男性冒険者達は泣き叫んでいる女性冒険者の手を取り倒れている女性冒険者を餌にして自分達は生き残る選択をした。
そうである、見捨ててその場を逃げ切ったのである。
女性冒険者の声がダンジョン内に響き渡っている。
倒れている女性冒険者は既に死んでいる。
魔眼で見ると生命力は無い。
デススパイダー達は死んでいる女性冒険者を取り囲んだ。
そこへ私は飛び込んだ。
女性冒険者の死体の上に飛んできて着地すると、デススパイダー達を睨みつける。
デススパイダー達も折角の獲物を前に逃げる様子を見せない。
「私とやり合うつもり?」
背中の翼をバッと広げると羽根を飛ばしてデススパイダー達を次々と攻撃した。
レベルは明らかで一瞬で50匹程度のデススパイダーを消滅させた。
魔石はしっかり回収して食べた。
そして、足元の女性冒険者をしゃがんでじっくり眺めて見る。
「とても綺麗な女性ね。
耳の先が尖っている。
これは異世界もので良く見るエルフ族の女性ね。
ごめんね。
あなたを私の生きる糧とさせて貰うわね。」
見たところ毒が致命傷となり死んでしまったようだ。
とても美しい緑色の長い髪とスタイルの良いエルフ。
私は彼女の身体に触れた。
それは何故かと言うとスキルの完全擬態を使う為だ。
完全擬態は触れたものや倒した魔物の姿形、スキルや性格、記憶すらも完全に擬態する。
これから私はこのエルフの人生を貰って生きる道の一つとする。
そして、彼女の着ている装備を下着に至るまで全て外して、身体だけ腐蝕魔法で消滅させた。
私は直ぐにエルフ族の女性アリアーナに擬態。
外した装備を身につける。
エルフ族の女性は軽微な装備を身につける様で、銀製の胸当てと魔物の柔軟な皮で作られたインナーと腰巻きからシルクのような肌触りの短いスカート、そして、魔物の皮で作られたブーツと銀製の装飾が施された小手を着用していた。
全て装備すると今のステータスを確認する。
種族 イスラハル
名持ち スルカ・サマリス。
性別 メス
年齢 0歳
レベル215
体力 253551 魔力 278531 物理攻撃 23456 魔法攻撃力 42578 物理防御 13521 魔法防御 33469 速度 45539 運 55871
スキル
猛毒牙 猛毒霧 猛毒舌 猛毒針 剛腕 堅固 浮遊翼
防御翼 隠密 鋼糸
毒魔法レベル10
ポイズンアロー ポイズンスワム ポイズンスラッシュ
デスサイズポイズン
腐蝕魔法レベル10
腐蝕根絶波動 腐蝕大爪剣 腐蝕絶滅眼
無限再生 斬撃無効 炎無効 貫通攻撃レベル10 完全擬態 貫通無効 状態異常無効
飛行 早熟 熱無効 頑丈 魔力探知 魔眼
斬撃効果アップ
称号
魔王の白華 毒舌の転生者 知性の宝玉 猛毒の狩人 リトラとの絆 無謀の先駆者 激毒の死神
だが、完全擬態するとこのステータスでは無く、他の者からは擬態した者のステータスが見える。
つまりステータスもコピー出来るのだ。
アリアーナはレベル35、体力は平均的で魔力は少し高め、俊敏さがあり、武器は弓と双剣を得意としている。
使っていた金の装飾とミスリル加工された立派な弓とアダマンタイト製の高価な双剣も装備して逃げていった冒険者達を追いかけた。
「ちょっと逃げ足が早すぎない?
追いつかないんだけど。」
本当に逃げるのに必死だったのだろう。
階層を登って行っても追いつかない。
ダンジョンの中を魔物を倒しつつやっと出口に辿り着いた。
外の眩しい日差しが私の視界を遮る。
この擬態に馴染む為に魔物を倒しながら出口に向かった。
その結果予想以上に時間がかかってしまった。
完全擬態の身体は魔物を倒すと擬態主のレベルも上昇する。
実際には本体も経験値を稼いでいるのだから当然かもしれない。
「アリアーナ?」
ダンジョンの外に先に逃げた冒険者達を見つけた。
その中の女性冒険者である人間族の魔法使いネミスが駆け寄ってくる。
顔は涙でぐちゃぐちゃに崩れている。
「ネミス。ただいま。」
「おい!アリアーナ、大丈夫なのか?」
「嘘だろ!あの状況で生きてるなんて!」
「マジか…。」
3人の男性は人間族の剣士マット、槍使いケヤット、格闘家アレックス。
皆驚きを隠せない顔をしている。
「目が覚めたら白い天使が居て私を助けてくれたの。
あれは神の使いよ。
間違いないわ。」
私は天使で神の使いと言う事にしておこう。
まあ、この子は既に死んでたし問題ないでしょ。
私達は冒険者ギルドに向かった。