第1話 転生したのは、毒の魔物「ポイズンキラー」
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
可愛い女の子キャラには成れないのは分かっていた。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて、私に気がつくと。
「かすみちゃん。どうして…。」
様子がおかしい。
アイドル時代の熱烈なファン?
男性は私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
時田香澄は死んだ。
暖かい感覚と薄暗い空間に自分がいる事に気がつく。
確か、刺されて意識を失って。
目の前の光景は洞窟の中の様な岩肌が見えている。
そして、自分の身体が幼児くらいの大きさで全身が紫色である事が視界に入ってくる。
「え?ど、どうなってるの?」
手を見ると鋭い爪があり、髪は生えているが牙もある。
鏡を見るのが怖くなってきた。
明らかに変だ。
「何が生まれてくるのかと見ていたら、知性を持つポイズンキラーとは、面白い。」
私の後ろに誰か居る。
振り返ると王座に座る黒い人型の魔物が居た。
その魔物は長い髪と黒いローブに全身を覆われて立派な杖を右手に持っている。
「だ、誰?」
凄い威圧感と黒い霧の様な風が私の身体に触れるたびにピリピリと痛い。
「ホホホ。わしは不死の賢者リトラじゃ。
ポイズンキラーが言葉を発するのを初めて見たぞ。
おうおう、そうか、転生者なのだな。
元は人間か?」
威圧感の割には気さくな物言いをしてくる。
「私は刺されて死んだのね。
ここは何処なの?」
「そうであったか。
ここはゼルネサクのダンジョン。
そして、この場所は最下層のワシの部屋じゃ。」
最下層って良くある異世界もののボス部屋って事?
「私の事をポイズンキラーって呼ぶけど、私にはちゃんと名前があるのよ。
時田香澄という名が。」
「ホホホ。この世界での名には相応しくない名だな。
どれ、ワシがそなたに名を贈ろうではないか。
………。」
名を贈るってちゃんとした名前があると言ったのに、この魔物は聞いて無いのね。
「おお!良き名が生まれたぞ。
スルカ・サマリス
良い名だ!」
「ちょっと!何を……、あれ?」
私は自分の名前が思い出せない。
人間の時の名が分からない。
「わしにはこのダンジョンの支配者権限があるのだ。
ここで生まれた知性あるものに名を与える事が出来る。
久々に名を与えたぞ。」
「え?スルカ・サマリスしか解らない。
もう!なんて事するのよ!
親にもらった大事な名前なのよ!」
「ホホホ。今はワシが親みたいなものだ。
お前は人間では無いのだぞ。
魔物として生きていくのだ。
それに相応しい名が良いに決まっている。」
納得が行かないがもう忘れてしまった事をいつまで言っても仕方ない。
これからどうやって生きていくかを考えないと。
「じゃあ、私はどうすれば良いのか教えてよ。」
「ホホホ。では、ステータスを見てやろう。
この世界にはステータスが存在する特に知性持ちの魔物は自分でもステータスを見る事が出来る。
掌を重ねて広げてみろ。」
掌を重ねて、拡げるのね。
こうかしら?
すると、デジタルなデザインの画面が空間に現れた。
そこには私のステータスと呼ばれる物が表示されている。
種族 ポイズンキラー
名持ち スルカ・サマリス。
性別 メス
年齢 0歳
レベル1
体力 2000 魔力 1000 物理攻撃 20 魔法攻撃力 12 物理防御 30 魔法防御 12 速度 50 運 40
スキル
毒牙 毒霧 毒舌 毒魔法レベル1
再生強化 斬撃耐性レベル1
称号
魔王の種子 毒舌の転生者 知性の欠片
「うぅ…、毒舌とかあるし。」
「どれどれ、ほう!
魔王の種子の称号をもっとるとは、それで体力と魔力が高いのか。
これは将来楽しみじゃのう。」
後ろから私のステータスを覗こんでいる。
「何?魔王の種子って?」
「魔王の種子は進化によって魔王種になれると言うことを示す称号だな。
称号の効果として、体力と魔力が100倍になる。」
魔王種?何それ?異世界もので悪者の最たる存在じゃない。
「魔王種に進化って、私進化できるの?」
「その通りだ。
どれどれ、進化の系統を見てやろう。」
そう言うと私に手を翳し、何かを見ている。
「わかったぞ。
先ずはレベルを50まで上げればポイズンデビルに進化する。
その後、レベル100で進化が分かれる。
片側にポイズンバースト
片側にイスラハル
このイスラハルを選べばその先にレベル300でアルハラに進化して、レベル500でアルハラクイーンになる。
そこが最終進化だな。
ポイズンビースト以降はレベル300でポイズンフレア、レベル500でポイズンフレアクイーンになる。
ポイズンフレアクイーンはビースト系になる故、魔王種にはなれない。
アルハラから魔王種になる。
イスラハルから見た目も人間種に見た目が近づく故、お前には良いかも知れんしな。」
今レベル1ですけど、50だって大変なんじゃ無い?
「見た目が人間種に近いってどんな風に変化するの?」
人間種と言ってもお化けみたいな見た目は嫌だ。
「残念だが、そこまで進化したポイズンキラーを見たことが無い。
イスラハルは千年前に一度だけ見たことがある故、伝えたが、未知の領域だ。
ここ最近ではポイズンビーストに進化したポイズンキラーも見たことが無い。
元々それ程強い魔物では無い故、他の魔物や人間に殺されてしまうことが多い。
だが、お前は魔王の種子のお陰で体力も高い。
本来ポイズンキラーは体力も低い。
その点では生き残れる可能性は高いはず。
頑張ってレベル50を目指すと良いぞ。」
言いたい事はわかった。
兎に角生き残るために必死になる必要がある。
だが、ここは最下層。
今の私が外に出れば一瞬で他の魔物の餌になる事確定だろう。
「私はレベル1だからここから出たら即死確定よね?」
「そうであったな。
少しだけ力を貸してやろう。
ここで少しレベルを上げていくが良い。」
そう言うとリトラは地面に魔法陣を展開した。
そして、その魔法陣から魔物が召喚された。
私の目の前にはトカゲのお化けのような魔物が現れた。