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第二十二話 ニアとシルヴァ 一 邂逅

「みみみみみ、見てください、師匠! 冒険者ですよ! 冒険者!!! 」


 ボクのローブを(つか)みながらニアが指をさしていった。

 かなり振動が伝わってくるが人見知りが行き過ぎるとニアはこうなるのか。

 にしてはかなり失礼に当たる事をしているのも事実。


「いやニア。あの二人は恐らく……」

「ししししし、師匠!!! 冒険者です! 野生の、ぼぼぼぼぼ冒険者が現れました」

「……一応ボクも冒険者なのだが」


 彼女の誤解を解こうとしたらまたもや失礼なことを。

 いや、ボクは大丈夫なのだろうけれど普通に向こうからすれば失礼(きわ)まりない行動だ。

 それに向こうも何やら困惑している。

 下手(へた)にニアの言動(げんどう)(とが)められないうちに収拾(しゅうしゅう)をつけないと。


「シャル。ここは私が」

「あ、あぁ。任せたよ。バトラー」


 ペコリとお辞儀をして冒険者の方へ足を向けるバトラー。

 しかし何故彼は威圧を解かないんだ? もうモンスターは(ほとん)どいないだろうに。


 (あき)れる(ひま)もなくバトラーは警戒を続ける冒険者——の恰好をした二人に近付く。

 二人は身を()せ合い警戒を強める。

 バトラーが前まで行き、背筋を伸ばし、(えり)(ただ)して二人を見た。


「失礼。冒険者の方々でしょうか? 」


 おお、いきなり直球いったな。

 だがボクは違うと思うのだが。

 と、言うよりも一人顔見知りがいるのだが。


「……冒険者だ」


 細身なイケメン冒険者がそう言った。


 人族の……貴族子息か?

 確かに冒険者の恰好をしている。しかし服や装備を見る限り、単純な冒険者ではないのは明白(めいはく)。しかし家から追い出された感じでもない。ならば答えは簡単で、差し()め冒険者に(あこが)れて外の出て、護衛が付いたのだろう。


 考えていると「左様ですか」とバトラーの声が聞こえる。

 どこかいつもよりも刺々(とげとげ)しい口調だ。


「何故ここに? 」

「依頼だ」


 でしょうね。

 だと思うよ。うん。予想できていた。むしろ――例え貴族子息だとしても――冒険者が冒険者として仕事をしない方がおかしいと思う。

 もしその装備で、冒険者ではなく、二人でここにいるのならば他の可能性を考えなければならなくなる。


「逆にお聞きしたいのですが……。あの気のようなものを放っていたのは貴方で? 」

「ええ。その通りで」

「何を目的に? 」

「それを貴方に言う必要がありますか」


 いつも通りといえばいつも通りなのだが君はいつもどうしてそう男という存在を敵視するのかね、バトラー。


「バ、バトラーさん。なんか気が立ってますね」

「彼は昔からあんな感じだからね。特にボクに接近する男性には。まぁ見慣れた光景ではあるのだけれども」

「初めて見ました」

「ニアにはあまりあんな態度をとっていないからね。君がカーヴの娘であるのも一因(いちいん)だろうけれども……」


 そう言いながらニアからバトラーに視線を移す。

 バトラーとあの二人はかなり緊張状態のようだ。

 彼の気質(きしつ)なのだろうけれども貴族関係者にあの態度はいただけない。後で説教が必要だ。

 下手(へた)()め事を起こすのはボクの本意(ほんい)ではないのでね。


「……あの冒険者さん。バトラーさんに失礼じゃないでしょうか? 」


 いつの間にか振動が収まったローブの方を見るとそこには少し怪訝(けげん)な顔をしているニアがいた。

 いやどちらかというと失礼なのはバトラーなのだけれども。


「だ、だって、初対面のバトラーさんにあの態度。外見だけを見るならば執事さんですよ? 」


 相手も貴族関係者であるのは明白(めいはく)なのだが……。もしかしてニアは貴族の格好というものを見たことがない?

 有り得るな。

 だがニアはあの装備の高級さを見て――貴族関係者とわからずとも――高位冒険者の可能性を考えないのだろうか。


「確かに姿だけを見るならばバトラーは執事のように見える」

「で、でしょう? 」

「しかしこんな森の奥から執事服の男が出てきたんだ。不審(ふしん)がられても仕方がないとも思うのだが」

「し、師匠はバトラーさんの味方じゃないんですか?! 」

「味方さ。だが違う視点から見ればそう見えるというだけの話。実際問題ここはルーカスの町。ルーカス子爵が治める町だ。勘違いではあるがそこに知らない貴族関係者がいるとなると下手(へた)勘繰(かんぐ)りをされても仕方がない、とも思うがね」


 と、言いバトラーの方を向く。

 しかし向こうもバトラーに気をとられ過ぎてボクの事に気が付いていないようだ。

 この前会ったばかりだというのにボクの事を忘れたか? あの時が初対面だったからその可能性は否定できないな。


「わ、私がガツンと言ってきます!!! 」

「え? 」


 不穏(ふおん)な言葉が聞こえると隣から引っ張る力が消えた。

 ローブの方を見ると居たはずのニアがいない。

 ガツンとって本当に何をするつもりだね、ニア。


 引き()める間もなくニアは貴族子息冒険者と付き人にズカズカ近寄っていた。

 人見知りなニアが積極的にあの中に入ろうとするとは。

 もしかして彼女はバトラーに気でもあるのではないだろうか?

 ニアには悪いがボクにラブな彼だからね。不毛(ふもう)もいいところだ。

 応援は出来ないが、微笑ましく見させていただくよ。


 そして彼女は三人の中に入っていった。


 ★


「すみません!!! 」


 おお、ニアが初対面の男達に大声で割って入った。

 いきなりの乱入者に皆目を見開いて驚いている。

 それを()にも(かい)さず一歩前に出て食い気味に口を開く。


「失礼じゃないでしょうか!!! 」


 うん。君がね。

 今君初対面の相手に物凄く失礼なことをしているよ。


「バトラーさんは不審者じゃありません!!! 」


 大声でバトラー不審者説を否定する。

 確かに不審者じゃないが、それを強調すると不審者感が増すというジレンマ。

 軽く相手の様子を見るとどこか毒気(どくけ)を抜かれた表情をした後、イケメン子息の(ひたい)青筋(あおすじ)が浮かぶのが見えた。


「き、君は誰だね? 」

「何ですか、その上からの物言い! 私はカーヴ工房の工房主。ニアです!!! 貴方は誰ですか、不審者冒険者さん!!! 」


 更に額をピクピクさせている。

 いきなりの不審者扱い。冒険者の段階で不審者ではない可能性が高いのだが、面白そうなので少し放っておくか。


「ふ、不審者……。こ、この女……。俺は不審者じゃない! 」

「なら誰ですか!!! 」

「俺はシルヴァ! シルヴァ・ル「シルヴァ! 」 ! 」


 ん? 御付きの人らしき冒険者が軽く小突(こづ)いた。

 名乗り上げようとしたところを途中で中断され、少し苛立(いらだ)っているが軽くこそこそと何か話している。

 相談が終わったかと思うと「コホン」と軽く咳払いしてバトラーとニアを見た。


「俺はシルヴァだ。冒険者のシルヴァ」

「私はエラルドです。駆け出し冒険者になります」


 ……。そう言う設定なのかい?

ここまで如何だったでしょうか?


面白かった、続きが気になるなど少しでも思って頂けたら、是非ブックマークへの登録や広告下にある★評価よろしくお願いします。

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