4.訓練室ナンバー21
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イツキはジュースを飲み終わり、
ただただ椅子にもたれかかり天井を見上げていた。
カケルさんいい人だったな・・
それはそうとこれから僕はどうしたらいいのだろうか?
「ピピピピピピ」
不意にスマートウォッチが振動し高い音が鳴り響く。
イツキは慌てる様にスマートウォッチの画面を触ると、
空中に映し出されたモニターにはヒビキからの着信表示が出ていた。
「もしもしー、イツキか?」
少しノイズのかかったヒビキの声。
「はい、ヒビキさん。」
「急で悪いけど、2階の訓練ルームナンバー21に来てくれ」
そうヒビキが言い終わると、電話が切れた。
イツキはナビゲーションを訓練室ナンバー21を選択し、
駆け足でエレベーターに向かった。
2階に到着すると、ナンバーが書かれている複数の訓練室が迷路のように複雑に並んでいた。
これか・・ナンバー21。
イツキは目的地ナンバー21の部屋の前で立ち往生していた。
一体次は何が起きるんだろ?
あーなんか憂鬱になってきたな・・・
訓練室っていうくらいだからいろんな訓練道具でも並べられているのかな?
「ふぅーー・・」少し呼吸を整え扉を開くボタンに手を触れた。
「ウィ――――ン」
扉の先はイツキが思っている様な部屋ではなく、
中は何もない真っ白の明るい巨大な空間で、ヒビキが仰向けで寝転んでいた。
「お待たせしました」
イツキの声でヒビキは大きなあくびをしながら立ち上がった。
「いやーシイナ分隊長にこっぴどく叱られたよ、
本来ならここの案内は俺の仕事だったんだよ」
ヒビキは悪びれる様子はなく、ニヤニヤしていた。
「けど眠くてねー寝ちまったすまん」
「いえ、僕は大丈夫です」
「で、シイナ分隊長は怖かったか何話した?」
ヒビキは面白そうに聞いて来た。
イツキはシイナと話した内容と、カケルという友達が出来た事、
ヤマ分隊長の事を話した。
「なるほどねー、まぁ最初は誰だって困惑する少しずつ慣れていけばいい。」
ヒビキは軽くイツキの肩を叩いて言った。
「あのーここで何をするんですか?」
「そうだな、まずはこの非現実みたいな所に慣れることからかな。」
ヒビキが目を瞑り指を鳴らした。
何もなかった空間が急に歪み一瞬強い光がイツキの視界を奪った。
光が消えたのを瞼越しで確認し少しずつ瞼を開いた。
そこには青い空、ざらざらとした地面、そして5階建ての学校が出現していた。
「これは・・・」
イツキは驚きのあまり鉄の様に体が固まった。
「訓練室は自分の思い通りに景色、建物を創成出来る異次元空間だ。
勿論砂は触れられるし建物を同様。」
慣れている感じでヒビキが手から砂をこぼす。
「どうゆう原理でこんな事が・・・?」
「そこら辺りは俺にもさっぱり意味不明。」
ヒビキはそう言い終わると軽く体をジャンプさせ軽い準備運動を行った。
「よし!、まずは体の使い方からだな。」
次は少し力強く地面を蹴った。
ヒビキの体は高く飛び上がり、校舎3階の窓より少し高い所までその体が浮いていた。
そのまま窓の端を掴み校舎内にヒビキは入って行き。
「まずはここまで来てみろ!」
上から見下ろすようにただそう言った。
地面から校舎の三階までの高さは約八m、
世界一ジャンプ力がある人でもまずこの高さは無理だろう。
「どうなってるんですか!?」
「どうもこうもねーよ、聞いただろ身体能力向上、これがそうだ!」
身体能力向上・・確かにローレンさんやシイナ分隊長が言ってた。
でもこれは向上ってレベルの話じゃない、もう人間かどうかも怪しいレベルだ・・
イツキは開いた口が閉じず唖然としていた。
「言いたい事は分かるが、じっとしていても何も進まないぞ」
ヒビキがイツキを急かすように言った。
イツキはこんなのおかしいと思いながらも軽く準備運動を始めた。
「よし!」
と気合を入れ。
あーもうどうにでもなれー‼
助走をつけて校舎目がけて思いっきりジャンプした。
「おいおいまじかよ・・」
ヒビキはイツキを見て驚いていた。
なぜならイツキの体は学校よりも高く約18m屋上よりも上まで飛んでいたからだ。
「待って、これ予想外ですよヒビキさ―――ん‼」
イツキが叫ぶ。
こんな高く飛ぶなんて当たり前だが考えていなかった。
イツキの体は校舎を通り越して反対側の地面に「ドンッ!」と叩きつけられた。
ヒビキは「・・ウッ」と痛そうだなっと表情を鈍らせて反対側のベランダから
イツキが着地した場所に目をやった。
砂埃が宙を舞って薄っすら影が見える。
「大丈夫か?」
ヒビキは心配そうに言った。
「凄く、なんか凄く、凄い気分でした、まるでスーパーマンだ!」
言いたいことがまとまらないイツキは興奮した様子で言った。
そんな笑顔のイツキを見てヒビキは「はぁー」と安堵した様子と共に、
「どうやら運動神経は悪くないみたいだな」
っと小声で言った。
イツキは全身にアドレナリンが周り、脳内麻薬でハイになり、
いまならなんでもできる様な感覚に陥っていた。
「イツキー-、鬼ごっこしよう!」
ヒビキは挑発するように来いよと手でイツキを招く。
「鬼ごっこですか?」
「あー、お前が鬼だ早い追いかけてこい、
19時にはここを出て飯を食いに行く、後2時間しかないぞ。」
ヒビキはそう言い終わると3階のベランダから校内に姿を消した。
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