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第一話   そのポーター、【ツッコミ】スキルとやらに目覚める

新連載です。


本日は複数話投稿します。

「カンサイ、君は今日限りでポーターをクビだ。さっさと出て行ってくれ」


 僕ことカンサイはびっくり仰天した。


 椅子を倒すほどの勢いで立ち上がる。


「待ってください、グレンさん。いきなりクビというのはどういうことですか? 理由を説明してください」


「理由だと? そんなことは決まっている!」


 グレンさんはテーブルを平手でバンと強く叩いた。


 これには冒険者ギルドの人たちも驚いた様子で一斉にこちらに振り向く。


「君が役立たずの無能だというのがわかったこともそうだが、何より君の容姿が前から気に入らなかった。君みたいな軟弱面と体型、そして汚らしい格好をしたポーターは俺たちのパーティーには不釣り合い。それが君をクビにする理由だ!」


 そ、そんな理由なんてひどすぎる。


 確かに僕は150センチ程度の身長しかない。


 髪もこのグラハラム王国では珍しい黒髪だ。


 体型も荷物持ちに必要な最低限の筋肉しかない。


 格好もグレンさんは立派な鎧と剣、バトーさんは重鎧と大盾、ローラさんは魔法の杖と最高品質なローブを着ているのに対して、僕はお金がないのでボロボロなシャツとズボン姿だ。


 だけど、それは採用の段階でわかっていたことだろう?


 僕の容姿や体型、何より格好が気に食わなかったのなら、その時点で採用を断ってくれていてもよかったはずだ。


 それなのにパーティーに入って約1ヶ月、しかも明日の初給料日を迎える今になってそんなことを言うのはひどすぎる。


「み、皆さんもグレンさんに何か言ってください。こんなのひどすぎるって」


 僕は同じテーブルに座っている他のパーティーメンバーを見回した。


 グレンさんの右隣に座っているローラさんも、グレンさんの左隣に座っているバトーさんもこればかりは仕方がないとばかりな表情を浮かべている。


 2人の表情を見て呆気に取られている僕の耳に、周囲にいた冒険者たちからの嘲笑の声が聞こえてきた。


 僕たち【黄金の神武団】は冒険者ギルドの奥にある、飲食も兼ねることができたテーブルの1つに陣取っていた。


【黄金の神武団】とは、グレンさんがリーダーを務めているA級冒険者パーティーの名前だ。


 20歳で金髪のイケメン魔法剣士――グレン・アシュフォードさん。


 17歳で銀髪の美少女魔法使い――ローラ・ポポーヴァさん。


 24歳で禿頭の筋骨隆々タンク――バトー・グレゴリーさん。


 この3人に新人ポーターで16歳の僕ことカンサイを入れた4人でパーティーを組んでいる。


 いや、もはや組んでいたと過去形にするべきだろうか。


 それほど僕たちのテーブルには淀んだ空気が充満している。


 さっさと目の前から消えてくれ、という空気感だ。


 僕はこの1ヶ月間のことを思い出す。


 どんな凶悪な魔物が出るダンジョンでも懸命に荷物持ちや雑用をこなし、育った施設で算学を習っていたこともあってパーティー内の経理の仕事も頼んでさせてもらった。


 すべては正式なパーティーとして早く認められたかったからだ。


 だからグレンさんからの無茶な要求や、バトーさんからの罵詈雑言、ローラさんからの時間外での買い物時の荷物持ちなども黙って受け入れた。


 何度も心と身体が挫けそうになったが、そのたびに自分を奮い立たせてやる気を出した。


 グレンさんの【黄金の神武団】が募集していたポーターの給料が他のパーティーよりも格段によかったこともある。


 しかもスキルを持っていなくてもパーティーに入れてくれるということもあって、僕は【黄金の神武団】に入れば両親に捨てられた施設育ちというレッテルを剥がし、今の極貧生活から抜け出せると思って頑張って頑張って頑張り抜いた。


 ――最初の1ヶ月は使用期間としての給料しか出せないが、それ以降は普通の給料を払うからな


 そう面接時にグレンさんに言われたことも励みにして。


 直後、僕は給料という言葉を脳裏に浮かばせてハッとした。


「グレンさん、今日でクビになるということはわかりました。でも、そうなると僕の今月の給料はどうなるんでしょう?」

 

 僕はおそるおそるグレンさんに質問した。


「給料? まさか、足手まといで役立たずだったのにまとまな給料をくれと言うんじゃないだろうな?」


 グレンさんは立ち上がると、僕に人差し指をビシッと向けてくる。


「君は世間というものをまったくわかってない。この世はできる人間が金と地位と名誉を手に入れ、君みたいな荷物持ちや雑用しかできない底辺のゴミは何も手に入れることはできない。つまり、君に渡す給料なんて1ルーダたりともない」


「そんな馬鹿な!」


 僕は慌ててグレンさんに駆け寄った。


 無我夢中でグレンさんの鎧に手を触れる。


「1ルーダもくれないなんてあんまりです。せめて正規の給料の半分でも――」


「くどいぞ、カンサイ! それに本当に1つのスキルも使えない本物の無能が俺に触れるんじゃない!」


 次の瞬間、グレンさんは僕に平手打ちを放った。


 パンッ!


 乾いた音ともに、僕の右頬に凄まじい衝撃と痛みが走る。


 そのときだった。


 僕の脳裏に『ピンポーン』という変な音色が聞こえると、そのあとに男とも女ともわからない不思議な声が聞こえてきた。


『カンサイが【ツッコミ】スキルの発動条件を満たしました』


 その不思議な声がたずねてくる。


『あなたのこれまでの不遇な人生に()()()()を入れますか?』

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


読んでみて「面白そう!」「続きがきになる!」と思っていただけましたら、ブックマークや広告の下にある★★★★★の評価を入れていただけますと嬉しいです!


どうか応援のほど宜しくお願い致します。

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