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石猫の錬金術師は今日も憂鬱  作者: 牧野 りせ
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その石が示すものは

 石猫には他の猫とは少し違う特性がある。


 それは身に宿す宝石の石言葉が何らかの作用を引き起こすこと。


 ニオゥはバイカラートパーズの宝石猫である。その石言葉は『調和』で、体から年に数回取れる宝石を水瓶に沈めるとその力が作用するのだろう。その水を使って錬金することで他の錬金術師や薬師が作れない品をニオゥは作ることができる。


 その最たるものは連絡蝶といえる。早々に劣化するという欠点を持ちつつも機密性を考えるとそれも一つの利点となる上に、なぜか今の所宛先はニオゥにしか成功していない。恐らく他の錬金術師に作れと言っても無理だろう。


 それほどの力を発揮する宝石猫の宝石はまだ解明されていない部分が大きいものの、そこは猫人。その秘密を知るものも少なければわざわざ宝石猫を探し回って探求しようという者もいないのだ。


 父親以外の宝石猫と会ったことがないニオゥは、宝石猫の特性をすっかり忘れて、初対面で警戒するはずの相手に何故か違和感なくまるで知人か親戚かのような空気を感じておる己に恐怖する。


 (今まで母さまのパートナーである石猫たちを見て特に何かを感じることなかったから、自分は母さまみたいなデブ専じゃないと思ってたけど!まさか私にもデブ専の血統が流れてて今その血筋がイキイキと発揮されているの!?)


 実の母に向かってガッツリ失礼なことを考えるニオゥである。


 なお、ペリドットの石言葉は『平和』である。


 幼い日のトラウマから無意識のうちに平和で穏やかな生活をおくりたいと願うニオゥにとって、本能が反応したとも言えるわけだが、今のニオゥが気づくことはなかった。


 荷台の馬車いっぱいに積まれた素材によって座る場所がなくなったのでニオゥとダリヤ、ハクロは荷台の煽りを外して水平にすることで座る場所を作った。モミジとホンハクはツユシロと共に御者台に並んだ。


 残りは行き同様護衛も兼ねて走りだ。荷物によってスピードが落ちてる分護衛への負担は少ないが、危険度も上がっている。そのせいで帰路は2度も野党に襲われた。


 流石に街道に転がしておくわけにも行かないのでダリヤとシキが即席で牽引車のようなものを作って二台目の馬車後方に繋ぐことになった。


 始終牽引車に乗せっ放しの野党たちの横で宝石トカゲの蒸し焼きを食べたときはさすがの面々も罪悪感が湧いた。


 なんせ自分たちがゆうゆうと食べてる横で腹の虫が大合唱しているのである。


 他人に対してだいぶドライなニオゥですら『なんかごめんな?』と思いながら食したのだから。


 そんな御一行が街にたどり着くと門の所で牽引車ごと野党を引き渡した。


 なんでも牽引車が便利そうだから門の担当騎士団が買い上げてくれるらしい。


 一代目の馬車の面々はひとまずモミジとその荷物を職人どおりの店の前に下ろし、同様にホンハクの積荷も下ろして三日月食堂(クレセントムーン)の前に馬車をつけて食材を下ろす。


 ニオゥもハクロとツユシロを手伝って厨房と入り口をウロウロしていると背中から声がかかる。


 「ニオゥここにいたのか!」


 「え?」


 聞き慣れた声に振り向くと、そこには予想通り、低めの身長にぽっちゃりボディの父親が立っていた。


 「家に行ったのにいないから心配したんだが、装飾屋の翁殿からツアーに出てるって聞いてね。帰ってくるのを待っていたんだ。」


 「連絡できなくてごめんなさい。こんなに早く来るなんて思ってなかったから。」


 「ははは。これでもずいぶん大回りしたんだけどね。でも待っていおたおかげでちょっとした縁があってね。」


 ご機嫌な父の様子から、不在の間に何らかの商談がまとまったのだろうと予測する。


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