希望の光 【月夜譚No.162】
掲載日:2021/10/10
腕が千切れるかと思うほど、ペンライトを振った。大きく、力強く、とにかく振り続けることしかできなかった。
彼がそれを知ったのは、数カ月前のことだ。日課になっているSNSのチェックをしていて、目を剥いた。
もうずっと応援し続けてきたアイドルの笑顔の写真と、「引退」の二文字だった。
ステージの上にいる彼女には、大勢いるファンの一人だ。だが、彼にとって彼女はたった一人の希望の光だったのだ。
ニュースを知った時の絶望を覚えている。心に穴が開いたような喪失感を、今も抱えている。けれど同時に、彼女が決めたことならば祝福しなければいけないと、優しい気持ちも確かにあった。
だから、ただペンライトを振る。推しの最後のステージに全力で応えるのが、ファンの一人としての使命とさえ思った。
涙を見せた彼女の背中が去っても尚、腕の力が尽きるまで、光は灯り続けた。




