082 解放と消滅
『シンを……、悪夢から解放してください……。』
それはカイリの悲しみに満ちた決断だった。
幼馴染を殺す……
それをカイリに決断させてしまった。
これは俺がすべき決断だったはずだ…
なにやってんだよ、まったく。
『カイリ……。カレン、アスカ…、すまない。シンを救えなかったことを許してほしい。』
俺は3人への贖罪の言葉の後、スキルを発動した。
スキル【レベルドレイン】!!
効果はすぐに現れた。
徐々にシンのレベル……生命力が減っていっていた。
[ん?!何ですかこれは⁉生命力が低下している?!どういうことです⁉プロメテウス!!これはどういうことです?!]
突然の出来事に取り乱した【強欲】は俺を睨んでいる!!
[あなたですか!!今すぐやめなさい!!くそっ!!くそっ!!]
必死になって体を動かそうとするも、全く反応していない様子だった。
「みんな、ごめん。カイリ……あり……」
「シン!!」
[くそ!!その顔覚えました!!プロメテウス!!覚悟なさい!!]
【強欲】の言葉を最後に、シンの体は俺たちの前から霧散した。
本当に消滅したのだ。
後に残された物はシンの装備一式だけだった。
それにしても、スキル【レベルドレイン】は本当に鬼畜だった。
シンが貯め続けたレベルを根こそぎ奪い取ったのだから…
俺のレベルは今ので9レベル一気に上がったのだ。
そしてさらに嫌なものを見てしまった。
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基本情報
氏名 :中村 剣斗
年齢 :35歳
職業 :探索者F
称号 :生命の管理者
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生命の管理者:生命の生殺与奪・存在の権限を得た者に与えられる。
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何とも物騒な称号が付いたものだ。
ただ、これは俺が背負うもので間違いないと思う。
俺はシンを消滅させたのだから。
「じゃあ、シン達の装備を回収して帰ろう。自衛隊にも事の顛末を話さないといけないしね。」
「シン?誰ですか?」
?!?!?!?!?!?!?
俺はその場で吐き出してしまった。
カレンの言葉で理解してしまった。
確かに消滅してしまったのだ。
存在そのものが……
「ケントさん?!アスカ、回復魔法をお願い!!」
「先輩!!しっかりしてください!!」
「ケントさん!!ケントさ……」
薄れゆく意識の中でカイリの声が聞こえた気がした。
ピチョン
ピチョン
ピチョン
ピチョン
目を覚ますと、白い天井が目に入ってきた。
ここは知らない場所だ。
「ケントさん!!」
「カイリ……。ここは?」
辺りを見回すと、カイリが俺の横に座っていた。
その目には涙を溜めて、俺の手を握っていてくれた。
どうやら心配かけてしまったようだ。
「ここは訓練施設の医療施設です。ケントさんがいきなり倒れてしまって。そしたら、私たちが第6層に向かったことを知った、自衛隊の方々がちょうど到着して、ここまで運んでくれました。」
「そっか…、ごめん。迷惑かけたね。」
「そんなことありません。あ、お医者さん呼んできますね。あと、みんなも。」
そう言うと、ハンカチで目元を拭ってカイリは病室を出ていった。
ガラガラ
「あ、目を覚まされましたね。それにしても女性を泣かせるとは、中村さんも罪作りですね。」
「一ノ瀬さん…、冗談きついですよ。」
カイリと入れ替わりで病室に入ってきたのは、自衛官の一ノ瀬さんだった。
「中村さんもなかなか無理をされる。『探索者型イレギュラー』の討伐は出来れば自衛隊に任せてほしかったですね。でも、ご無事で何よりです。」
「あの、ここまで運んでくれたのって……。」
「はい、私たちの部隊です。」
「そうでしたか、ありがとうございます。」
「これも我々の任務ですから、お気になさらず。ところで、いったい何があったんですか?突然倒れたと聞いていますが……。」
俺は一ノ瀬さんに一連の出来事を説明した。
もちろんスキルについても。
「それはまた……。中村さん、この件は私の処で一度留めます。おそらく国は中村さんを拘束する可能性が高いです。それほどまでに危険なスキルですから。その、シンと呼ばれた青年についても確認します。記憶だけなのか…、または記録もなのか。そこの所を調べないといけません。」
「一ノ瀬さん、今の会話でわかりました。おそらく、記憶からは抹消されています。訓練施設入り口での一件で、一ノ瀬さんはシンと会っていますから。それをわからなかった時点で、抹消は確定だと思います。」
こいつは参ったな。
たぶん俺はこの後ずっとマークされることになる。
このスキルがどういうものなのか。
どこまで通じるのか。
それもわからないのだから。
「なるほど…。わかりました。シンという青年に、私も会っているんですね。ですが、私にその記憶がない……。つまりは記憶の抹消。存在の抹消だという結論。確かにその通りですね。まず、記録についてはこちらで調べます。どうか、周りには話さないでください。」
コンコンコン
「ケントさん、入りますね。」
「では、私はこれで。」
そう言うと一ノ瀬さんは病室を後にした。




