079 間違え
強欲:すべてのモノを欲するがままに得られる。ただし、強制的に【生物の進化】が行われる。種族等すべてランダム。
まったくもって嫌になるな。
こんなの発動したら、人間やめるってことだろうに。
それでもシンは発動させた。
それほどまでにカイリ達を欲していたのだろうな。
そんなものに手を出す前に、きちんと謝罪なりなんなりするべきだろうに。
そして、それに付き合わされたダイスケとリョウが不憫でならない。
結果としてその命を奪われ、【死人人形】となってしまったのだから。
「邪魔だ!!あいつらは俺のものだ!!俺のものだ!!」
「そうは行かないさ。それにお前理解しているか?階層を上がれないということは…、お前はモンスターになっちまったってことを!!」
一瞬シンの動きが鈍ったように思えた。
しかし、それも束の間。
さらに会話がおかしくなっていく。
「嘘だ!!黙れ!!俺のだ!!俺の体だ!!俺のモノだ!!」
すでに正気ですらないのかもしれない。
それにしてもどうしてこんなに冷静でいられるんだろうな…
剣を構えた俺とシンが向きあい距離を探り合う…
「そうだ、思い出した…。お前は…」
シンの様子がおかしい…
ドロドロとしたのもがさらにドロドロとしてまとわりつく。
「お前が…。お前さえいなけば…。お前さえ!!」
シンからいきなり殺気があふれ出す。
その殺気につられて、後ろに控えていたダイスケとリョウが動き出した。
前に見た時よりも動きが早くなっている。
おそらくレベルが上がったんだろうな。
シンも動きが良い。
きちんと訓練していればよかったものを…
「それは俺のせいじゃない。お前が犯した過ちだ。彼女たちは自分たちで選んだんだ。」
「知るか!!」
シンの叫びとともに3人が襲い掛かってきた。
ダイスケが大盾を構えて突っ込んできた。
おそらくシールドバッシュを仕掛けてくるはずだ。
予想通り大盾が俺に迫ってくる。
ガキン!!
俺の盾とダイスケの大盾がぶつかり合う。
俺の体力がダイスケの体力を上回っていた為にダイスケが吹き飛ばされた。
それに巻き込まれるようにリョウも吹き飛ばされていく。
「よくも二人を!!やはり貴様は悪だ!!」
「俺が悪なら、お前は何だ⁉正義の味方とでも言うのか!?違う!!お前はただの人間だ!!」
「うるさいうるさいうるさいうるさい!!これでもくらえ!!【ラッシュ】!!」
いきなりスキルを発動したシンが突っ込んできた。
スキルのおかげで激しい連撃が俺を襲う。
これもステータスのおかげなんだろうか、俺には全く届かない。
「なんで!!なんでなんでなんでなんで!!なんで届かない!!」
シンの攻撃が激しさを増していく。
さらにダイスケたちも参加して激しく俺を責め立てる。
ガキン!!
キン!!
ゴン!!
ステータス上げをしていて助かった。
何とか対応できている。
「くそくそくそくそくそ~~~~~~~!!」
さらにシンの攻撃速度が上がっていく。
俺への恨みなのか、怒りなのか…
呼応するようにダイスケたちの攻撃速度・威力が増大していく。
なるほど、【死人人形】は術者次第で強さが変動するのか。
思ったよりも余裕があった。
確かに速度も威力も高い。
でもそれだけだった。
連携も何もあった物じゃない。
ただやみくもにせめて立ててくるだけだ。
よくも悪くもごり押しだ。
うん、これ以上はダイスケたちが哀れだ。
俺はこの戦いに決着を付けることにした。
スキル【身体強化】【部位強化】!!
俺はこの戦いで初めてスキルを発動させた。
【身体強化】のレベルは5。おおよそ5分が効果時間だ。
上昇率は【身体強化】が5%の上昇。
【部位強化】は部位を10%上昇させ、任意に部位を変更できる。
そしてその効果は歴然だった。
それはそうだ。
スキル使用前でも対応できていたんだから、ステータス上昇した今、対応できないわけがない。
その均衡が破れた瞬間に、決着がついた。
ダイスケがシールドバッシュを仕掛けたのが見えた。
それをサイドステップで躱し腕に【部位強化】を掛け替え、その首を切り落とした。
やはり死体だった。
血液が出るわけではなく、糸が切れたように地面に崩れ落ちた。
「ダイスケ!!貴様~~~~!!よくもダイスケを殺したな!!ユルサナイ!!」
「黙れ!!ダイスケはすでに死んでいた!!シン、お前がそいつをスキルで【死人人形】にしたんだ!!お前の巻き沿いで死んだその二人の生をお前が欲したから……、だからそいつらは【死人人形】としてお前の側にいたんだ!!」
「嘘だ!!ウソだ!!ウソダ!!USODA!!●×△□!!」
もうすでに俺に理解できる言葉ですらなくなっていった。
シンはもう、モンスターになり果てていたんだな。
ただただ、元の関係に戻りたい一心で強くなるためにここに来て……
本当に馬鹿だ。
ただ心から謝れば友達として元に戻れたかもしれないのに……
「シン、お前は間違えた。だから俺がそれを正してやる。」




