075 探索者型イレギュラー
「ケントさん、質問いいですかぁ~?」
アスカが何やら気になることがあったらしい。
おそらくはモンスターのレベルについてだと思うが…
「どうしたんだ?何か気になることがあったの?」
「えっとですね、ここに来る前にみんなで資料室で調べたじゃないですか?その時そんな話一つも見付けられなかったなぁ~って。」
?!
確かにそうだ。
スキル【生物鑑定】を覚えた人間なら、誰しもがたどり着ける結論だ。
自衛隊や警察。ましてや国が把握していないはずがない。
なのにどうして資料室にその情報が上がってないんだ?
むしろ、積極的に開示して危険を減らすべきことじゃないのか?
「確かにおかしいですね。政府は隠そうとしている……ということでしょうか?」
虹花さんも俺と同じ結論に行き着いた。
これは確実に情報を隠匿していると考えるのが筋だ。
「でも、どうして隠すんでしょうねぇ~?」
アスカの質問が一番的を射ていた。
隠す理由がわからない。
隠す意味も分からない。
隠すということは誰かにメリットがあるはず…
もしくは誰かにデメリットがある…
誰に?
「先輩。難しい話は分からないっすけど、俺たちが考えても答えは出ないんじゃないっすか?」
「確かに谷浦の言う通りだな。よし、これの件については俺の方で調べてみるよ。とりあえず、政府も発表していないようだしこの件はオフレコで行こう。」
この件についてはこれで話を終わらせた。
戻ったら、一ノ瀬さんを捕まえて確認すれば済む話だ。
誤魔化されたら、何かあるし。
何もなければ素直に答えてくれるはずだ。
「それじゃあ、時間も時間だから戻るとしよう。今日一日で分かったことは、俺たちが予想よりも強くなりすぎたってことだな。」
「そうですね。ケントさんは頑張りましたから!!」
何やら持ち上げてくるカイリがフンスと鼻を鳴らしていた。
よくわからないが本人がそれでいいならいいか?
俺としてはみんなに迷惑をかけている気しかないんだけどな。
出口に向かう道のりは、一方的すぎた。
全員で出力コントロールの訓練だと言って、出会ったモンスターを殲滅して帰ってきた。
第1層の【トランスゲート】付近が、何やら物々しい雰囲気で包まれていた。
そこには見知った顔が居た。
一ノ瀬さんだ。
「一ノ瀬さんお疲れ様です。どうしたんですか?なんか物々しいですが。」
「中村さんお疲れ様です。本日『探索者型イレギュラー』の出現報告があったんです。念の為出口でその『探索者型イレギュラー』が外に出ないように検問をしているところです。モンスターなら探索者証を持っていないでしょうから。水際対策というやつです。」
「わかりました。俺たちも後ろに並んでますね。」
「ご協力感謝します。」
うん、びしっとした敬礼が本当にかっこいい。
俺たちは列の最後尾に並び、順番待ちをすることにした。
「ケントさん…怖いですね。」
カイリは酷く怯えた様子だった。。
確かに恐ろしいと思う。
なんせ見た目が探索者なのだから、いつ後ろから襲われるか分かった物じゃない。
ダンジョン内で偶然出会って、意気投合したら後ろからバッサリだって考えられる。
警戒してもおかしくない事態だ。
しかし、どういった経緯でその『探索者型イレギュラー』に進化したのだろうか。
人型で考えるとゴブリンだけど…
ゴブリンから進化したときってホブゴブリンとかジェネラルとかって話だし。
もしかすると、特殊進化なんてこともあるのかもしれないな…。
俺たちは待ち時間中にいろいろ話をしていたが、結論までは至らなかった。
これについても俺たちではどうにもできないことだからだ。
しばらく待っていると、後方がやけに騒がしい。
何か殺気を放つとかそういうのではなくて、どちらかと言うと黄色い声援に近いのかもしれない。
ザワザワとした騒がしさがどんどん近づいてきた。
「中村さんお久しぶりです。」
声をかけてきたのは、数日前に記者会見に出ていた「難攻不落の城壁」のリーダー、由貴乃さんだった。
そりゃざわつくよな。
「久しぶり。この前の記者会見見ましたよ。すごいですね。」
「そんなことは…。それと、この列は?」
由貴乃さんは、この列について知らなかったようだった。
列に俺の姿が見えたので、確認の為に近づいてきたらしい。
俺は小声になって説明を始めた。
「ダンジョン内に『探索者型イレギュラー』が出現しました。おそらく前に教えてくれた『イレギュラー』だと思います。その後何か変わったことはありましたか?」
「えぇ、そのことについても一度話がしたいと思っていました。すみません、少し時間を貰えますか?」
「急ぎでしょうか?」
「そうですね。できればお仲間さんも一緒に…」
そう言われると断ることもできなかったため、みんなに事情を説明し、列を離れた。
列から離れた場所で、「難攻不落の城壁」のメンバーと話し合いを始めた。
ただし、約一名が不満そうな空気を垂れ流していた。
ここに来てもやっぱり「梁井 明日香」は「梁井 明日香」だ。




