074 仮説の裏どり
『周囲敵影なし。戦闘終了です。』
アスカの戦闘終了の宣言とともに、周囲に散らばったドロップアイテムを回収していく。
・火属性の核(低品質)1個
・水属性の核(低品質)1個
・風属性の核(低品質)1個
・土属性の核(低品質)1個
・魔石(小)4個
・ポーション(低品質)2本
これがいいのか悪いのかが判別つかないかな…
それじゃあ、お待ちかねの宝箱開封タイムだ。
「虹花さん、トラップとかって確認できたりしますか?」
「宝箱を鑑定すれば、おそらくは…」
「ではお願いします。」
虹花さんにスキル【物質鑑定】をお願いしたところ、罠らしきものは確認できなかったそうだ。
で、次はだれが開けるかってことになった。
噂では幸運値によって中身が左右されるとのことだ。
ならばと、メンバー内で一番幸運値が高い人間が開けようということになった。
結果俺が一番高かったので開けるのは俺がやることとなった。
「じゃあ、あける。しょぼくても恨まないでくれよ?」
「大丈夫ですって先輩。先輩でだめなら、誰やっても一緒ですから。」
フォローになってるんだかどうなんだか微妙なフォローを受けて、意を決して宝箱を開けた。
バコッ
という音と共に、蓋が上に持ち上がる。
中に入っていたのは一冊の古びた本。
開いた瞬間何かあるといけないので、今一度虹花さんに鑑定を依頼した。
スキルブック(生物鑑定):使用するとスキル【生物鑑定】を取得できる。
当たりも当たり。大当たりだ。
スキルブックはめったに手に入らない本なのだ。
習得できるスキルによっては1000万円以上の高値で取引されている。
今回手に入れた鑑定系はオークションの記録では、スタートが5000万円で、最終落札額は1億3000万円となったそうだ。
皆にこの事実を伝えると、全員固まってしまった。
そりゃそうだ、たった一冊の本で最低でも一人頭800万円以上のお金を手に入れるチャンスなんだから。
だが、話し合いは意外な方向へ進んでいった。
売却の話が出なかったのだ。
むしろ、この本を誰が読んでスキルを習得するかでもめてしまった。
第一候補として挙がったのが虹花さんだ。
虹花さんが【気配探知】でモンスターを探った後にコンボ的にスキル【生物鑑定】を使用できれば、より正確な情報を戦闘前に得られることになるからだ。
ただ、これには問題もある。
虹花さんのSPの負担が高くなるからだ。
SPの枯渇は戦闘ではあってはならない状況だからだ。
次に司令塔役であるアスカだ。
鑑定情報を念話で全員に共有することができるからだ。
最後に一番活躍していない俺。
冗談はさておいて、遊撃役の俺が鑑定して回るのもありじゃないかという話になったのだ。
ただ、俺の場合スキルレベルが上がらないっていう問題を抱えている。
なので、今回はアスカに覚えてもらうことになった。
アスカは最後まで虹花さんに読んでほしいといっていたが、みんなで決めたことなので、最後は意を決して使用してくれた。
ちなみに生物鑑定の内容はこんな感じだそうだ。
生物鑑定:生物の本質を見抜く。レベル差が5までは鑑定可能。
そしてこの内容を聞いて俺は確信に至った。
おそらく虹花さんも確信したんだと思う。
「これで決まりだな…。モンスターもレベルが存在している。それによって、成長・進化している可能性が高い。おそらくこれが自称神の言う【生物の進化】だな。」
「ケントさん、つまりは【生物】のくくりの中のモノたちは、常に成長し続けているってことですか?」
カイリの質問はもっとものものだ。
ただ、これは推測であり確定ではない。
ただ、確信は持てる内容だ。
「カイリ、これはあくまで仮説で、その仮説の裏が取れたって感じだね。おそらく虹花さんも同じ結論に至ったと思うよ?」
「そうですね。生物鑑定の説明に”レベル差が5までは鑑定可能。”とある以上、そう考えるのが妥当でしょう。」
つまり、これからもっと『イレギュラー』の存在が増えることになる。
間引きから漏れたモンスターが成長することだって考えられる。
これでまた、この世界は混迷を極めることのなるのだった。




