072 やりすぎました
これで2グループ目が終了。
残り4グループ。
やはり皆強くなりすぎたのかもしれない。
いや、慢心はいけない。
いつ『イレギュラー』が現れるか分かったもんじゃないからな。
「皆お疲れ様。アスカ、後ろから見て今回の戦闘はどうだった?」
「そうですねぇ~。やっぱりまだ調整不足ですかねぇ~。もう何段階かに調整できれば、無駄を省けるかと思いましたよぉ~。特に、カレンちゃんとカイリちゃん。オーバーキルじゃないけど、栄次郎さんもケントさんもいるんだから、一撃で倒さなくてもいいと思うよ?」
確かにその通りなんだよな。
あの時俺と谷浦はスライムを抑え込んでいた。
二人には援護射撃してもらえれば、十分対応が可能だったのだ。
むしろ、軽い援護射撃をした後に、周辺警戒をしてもらった方が今後の為になったかもしれない。
「私からも一言。栄次郎…飛び出しがワンテンポ遅い。ケントさんと合わせる場面で出遅れるなんて、何を考えているの?特にあなたは盾役。つまりこのパーティーの要です。そのあなたが遅れてしまっては意味がないでしょう?」
「なな姉ちゃんが容赦ない…」
これについては俺も反省しなくてはいけなかった。
谷浦は重装備なのでどうしても反応が遅れる。
今回の場合は俺が谷浦に合わせる必要があったのだ。
それが、ズレたということは連携力不足が表に出て来たということだろう。
「谷浦、飛び出しについては後でもう一度打ち合わせをしよう。このまま下層まで潜ったらおそらくケガでは済まなくなるかもしれないしな。」
「確かに先輩の言う通りっすね。了解っす。」
各々の反省をしつつ、休憩を挟み、再度探索を開始した。
またしばらくするとスライムの集団を発見。
俺には見えないけど、虹花さんは識別ができたみたいだ。
今回は回復役の白色スライムが2匹。黄土色の土属性スライムが1匹。水 色の水属性スライムが1匹。緑色の風属性スライムが1匹の計5匹だった。
回復役が2匹は厄介だった。
そこで、今回はカイリとカレンからスタートすることにした。
二人ともバレット系の魔法で核を撃ち抜く作戦だ。
その後、俺と谷浦が出てスライムを押さえて、残りを殲滅する流れにした。
カイリ達からの戦闘の入りはあまりパターンとして練習はしてこなかった。
なので、今回はぶっつけ本番に近い形となった。
が、それは杞憂に終わってしまったのだ…
カイリが放った火属性魔法が……
運よく3匹まとめて貫通してしまったのだ。
たまたま、回復1匹と土と風のスライムが縦に並んでしまい、回復を狙った魔法が、たまたま貫通して後ろのスライムまで到達してしまったのだ。
これには全員びっくりしてしまった。
一番驚いたのはカイリ自身だったみたいだけど…
カレンも回復役を狙っていて、きちんと1匹討伐完了していた。
残るは水スライムのみで虹花さんが狙い撃ちをして戦闘終了。
俺たち二人は何もすることなく終わってしまったのだった。
「なぁ、先輩…。俺たちって構えてた意味あったんすか?」
「いうな谷浦…。」
本当に強くなったよなぁ…
『………周辺の敵影ゼロ。戦闘終了です。あと、カイリちゃん…やりすぎですよぉ~。』
『ふ、不可抗力です!!』
周囲を確認して、ドロップアイテムを回収して歩いた。
すると、地面に転がる1本の液体の入った瓶が見つかった…
これは【回復ポーション】だった。
品質については鑑定してみないとわからないけど、意外と珍しいそうだ。
ただ、地上で回復ポーションの生産が始まっているので、これから先は当たり前になるかもしれない。
残りのドロップアイテムは魔石(小)が2個と土属性の核が1つだった。
「さて、今回は…カイリの魔法に驚かされたね。」
「ケントさんまで…。あれは狙ってませんからね?」
「狙ってやってたら、すごい魔法使いだよ。」
「ううぅ~~~~~~。」
カイリは顔を真っ赤にして唸っていた。
よほどびっくりしたのと恥ずかしいので感情がないまぜになってしまっているのだろう。
そんなカイリをかわいいと思ってしまうのはダメなんだろうな。
なんていうか…。
そう、小動物的な?
まあ、そんな感じがした。
「虹花さん、あとモンスターはどのくらい残ってますか?」
「ここからだと…ちょっと待ってください…。今一つのグループの反応が消えました。おそらく近くに同業者がいる可能性が高いですね。戦闘には十二分に気を付けてください。」
時間的にはもう昼近いから、第5層をメインとしているパーティーに鉢合うのは当然かもしれないな。
広い広いといっても、無尽蔵に広いわけではないのだから。
「じゃあ、他のパーティーへの誤射を注意しつつスライム退治をすすめよう。」
それから俺たちはダンジョンを探索し、スライム8匹に遭遇。
これを難なく撃破したのだった。
ドロップアイテム
・魔石(小)3個
・水属性の核(低品質)1個
・スライムゼリー1個




