069 広がる狂気と新たな歩み
ダンジョン内に漂う、どろどろとした感情…
その者は黒く染まり、そしてなおも黒く…漆黒に染まっていく。
出合って生き残った者は言う…
「やつらは化け物だ」と。
『イレギュラー』
ダンジョンに生息するモンスターの異常個体とされる種。
ずるり…ずるり…
何かの金属を引き摺りながらその者達は歩き続ける。
「●×△□…。◇▼×◎〇□◇…」
声にならない声が聞こえる…
聞くものに不快を与えるには十分な声…
「見つけた…。俺の獲物…」
「ラッシュ!!」
ーーーーーーーーーー
俺たちはようやくこの日を迎えた。
えらく長くかかってしまった。
まあ、倒したモンスターの数が数だけに仕方ないとしか言えないかな。
「先輩、ようこそ第5層へ。」
明るく茶化しながら、でも真剣に声をかけてくれた谷浦。
きっと俺の体が強張っているのを気遣ってくれたんだろう。
おかげで少し楽になった。
そう、ついに念願の第5層に足を踏み入れたのだ。
「いよいよですねケントさん。ついに第5層です。私、頑張ります!!」
「カイリちゃん、すごい張り切りだねぇ~。でも、前みたいに前に出過ぎないでねぇ~?」
「もうアスカ!!からかわないでよ~~~!!」
いつも通りの二人を見て、なんだかホッとしてしまった。
そのやり取りの中でも、しっかり仕事をしている虹花さんとカレンには頭が下がる思いだ。
虹花さんが【気配察知】と【魔力察知】で周辺警戒を開始していた。
カレンも【マジックソナー】という魔法で周辺の通路状況を確認していた。
虹花さんが【生物】の確認。カレンが【通路】の確認を行っているのだ。
「皆お待たせしました。虹花さん、モンスターの状況はどうですか?」
「今のところは問題ないわね。ここから少し先…おそらく200mくらいの位置に動かない5匹くらいの集団がいるけど、近づかなければ問題なさそうよ。」
「そうですか、おそらくそこは小部屋だと思います。入り口の扉は確認できましたが、中まではわかりませんでしたので。」
うん、二人とも優秀すぎやしませんか?
二人そろえばダンジョンが丸裸だ。
「それにしても、なな姉ちゃんとカレンちゃんがそろうとダンジョンも形無しだね。」
「それおもいますよねぇ~。」
「たしかにそうだね。虹花さんもカレンもありがとう。」
皆も同じ思いを抱いていたようだった。
何故か一人ふくれっ面のカイリがいるが、良く分からない。
「カイリちゃんったらやきもちですか~?ケントさんに褒めてもらえなくて?」
「ち、ち、違うから!!」
なにやら奥でカイリとアスカがじゃれているけど、少し遠くて何言ってるか聞こえないな。
まぁ、仲良しはいいことだよな。
「まずは、戦闘を慣れるために単独また2匹か3匹のスライムを相手にしたいね。」
「そうですね、それがいいと思います。カレンさん簡易の周辺地図はありますか?」
「虹花さんどうぞ。手書きなんできれいではありませんが。」
いつ書いたの?!
カレンが手書きで書かれた一枚の紙の地図を、虹花さんに手渡した。
「ありがとうございます。ケントさん、今現在私たちがいるのが階段近くの広場です。それがここ。私の探知に引っ掛かったのはこの小部屋と思われる場所と、通路に6か所です。まずは6か所の通路のモンスターを標的にしましょう。あとは都度探知をかけて、探して倒していく流れで行きたいと思います。いかがですか?」
虹花さんが手書きの地図を指差しながら、今後の行動計画を説明してくれた。
地図があるおかげでイメージしやすく、説明がすぐに理解できた。
ほんと、二人とも優秀すぎです。
「うん、それで行こう。みんなもいいかな?」
「「「「はい!!」」」」
うん、これ俺がリーダーである必要性はあるのだろうか…
まぁ、神輿は軽いほうがいいっていうし…
そう思わないと精神衛生上よくないな…
虹花さんの案内でダンジョンを進んでいく。
すると通路の奥に見慣れたモンスターが姿を現した。
「スライム発見。視認4。色から無属性スライム1、火属性2、風属性1と予想。」
虹花さんの声で一気に戦闘モードへと切り替えたのだった。




