063 谷浦のスキルはチートでした
「そうですか…。ですが、これからはこの6人でひとつずつ階段を上っていきましょう。まずはケントさんのレベルを10以上にしてランクを上げるか、それとも全員でステータス強化を図るか。どちらかを選択する必要がありますね。」
そう、虹花さんの指摘が一番の問題だったりする。
つまり、みんなの生活に直結してくるのだ。
俺一人なら問題ないと思う。
正直あまり声を大にして言えないけど、ヒモ生活をしているから生活には困らない。
でも、他のみんなは違う。
探索者として生計をたてようとしているのだ。
だから、せめて第5層以下での活動が必要となってくる。
そうなるとレベル10は確保した方がいいことになる。
どうしたものか…
「なら、こうはどうですか?確かケントさんはレベル1ですよね?だから全員レベル1にしてレベルを上げ直すんです。そうすればあと100ポイントのボーナス…、ではないですね。おおよそそれくらいは底上げができると思います。」
カイリが折衷案を出してくれた。確かにそれなら問題ないと思う。それに俺のレベルを上げるにはその方がいいと思う。
「そうっすね。先輩、ってことでよろしくお願いします!!」
谷浦の切り替えの早さには驚きしかなかった。
「いや、谷浦はレベル1まで落とすのに、自分のスキルでできるだろ?それにその方が2枚目の盾ができる分、効率がいいんじゃないか?」
「あ、確かにそうっすね。じゃあ、どんなのにしよっかな。なんかいい案ないっすか?」
良い案ね…。
谷浦の今の盾は「リビングシールド」っていう全自動の防御システムだ。
なら、その真逆の絶対防御があればかなり安定するかもしれないな。
「谷浦、質問だけどいいか?」
「なんですか?」
「谷浦のスキルだけど、メリットだけを上乗せするのと、デメリットも上乗せするのだと違いはあるか?」
谷浦は何やら空中を操作していた。おそらくステータスボードを確認してたんだろう。
そうか、俺もこんな感じなんだな…
はたから見たら怪しい人にしか見えない。
「あった。えぇっと、そうっすね。デメリットを加えると、消費レベルが下がって強力になります。そっか、だから「リビングシールド」は強制的に『脆い』ってデメリットが付いたのか。」
つまりそういうことらしい。
メリットとデメリットの天秤で自由に盾を作れる。それがこの『シールドクリエイト』の真骨頂なんだと思う。
「じゃあ、メリットは『強固』。デメリットは『移動阻害』で作ってみてくれるか?おそらくかなり丈夫な盾になると思う。」
「お、良いすね。それならおもしろそうっす。あとは今のレベルが10なんで9を突っ込んでみます。」
またもステータスボードを操作した谷浦だった。
しばらくすると、意を決したように操作を終えた谷浦から強い光があふれ出した。
と、同時にスマホから黒い靄が立ち上り消えていった。
俺がスキルを創った時と似た状況だ。
「できたっす。えぇっと名前は…「ウォールシールド」。効果は装備中に移動速度が減少する代わりに、パーティーメンバーのダメージをすべて肩代わりするってあるっす。それと、強度はとんでもなくすごいっすよ。なんと…俺のHP依存でその5倍のダメージまで対応可能だそうです。」
これまたトンデモナイ盾が完成したもんだ。今の状況だとさほど強くはないけど、ボーナスをHP全振りしたらかなりエグイ盾になりそうだ。
「栄次郎…。あなたにピッタリな盾になったわね。それにしても栄次郎の育成方向が完全にHP中心に上げる必要が出て来たわね。」
「たしかに。今のHPが150だから、750までのダメージを肩代わりできるってことか…。ただ、壊れた時に体力とかが低いと一発アウトになるから、そこのバランスもとらないといけないかな…。」
うん、ちゃんとデメリットも存在していたみたいだ。
谷浦の指摘通り、壊れた際の問題が大きい。
特に全体攻撃を受けたときに一気に蓄積してダメージオーバーだって有り得る。
それに、今回の盾は9レベル消費で作成されているから、リキャストタイムは9時間。1回の探索で1度使えるってことだな。あとはスキルレベルが上がれば、リキャストタイムも短縮できる…
あれ?もしかして…
俺のスキルでレベルを上げられる?
いや、たぶん無理だろう。俺のスキルもレベル上げ出来なかったんだ。
おそらく対象外になる可能性が高い。
とりあえず、レベルが上がったら試してみるのも一つだな。
「それじゃ~、ケントさん。私たちのスキルもお願いしていいですか~?」
それから順にみんなのスキルをレベル上げして、全員レベル1にした。
早いとこレベルを上げて第5層を目指そう…
ここまでお読みいただきありがとうございます。
皆で歩む新たな一歩
主人公もまた、新たな一歩を踏み出せたようです。
では、次回をお楽しみください。
※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。




