060 変わりゆく環境と心境
とりあえず、話せる範囲で話をすることにした。
「う~ん。何から話せばいいか…。僕がパーティーに入らないっていうか、入れないっていうか…。一応理由があるんだ。正直かなり致命的な状況なんだ。だから他言無用でおねがいしたい。実は、僕はスキルレベルが経験で上がったりしないんだ。今いる低級ダンジョンだと、何とかやっていけるけど、上位ダンジョンだと足手まといというよりも、メンバーの命を危険にさらす可能性すら出てくる。だから組めないんだ。」
皆の表情が一気に暗くなってしまった。
やっぱり話すべきじゃなかったかな?
最初に声を出したのはカイリだった。
「ケントさん…なんて言っていいかわからないけど…、無理はしないでくださいね?」
「そのつもりはないよ。僕は僕なりにできることをしていくだけだから。」
「先輩…。俺よりもかなりまずい状況なんですね。うん、俺もこの子たちを信用します。」
そういうと谷浦はカイリ達に、自分のスキルについて話始めた。
始めはカイリ達も戸惑ったが、そのスキルの有用性を考えるとアドバンテージの方が大きいと感じたらしい。
「ケントさん、私たちを虹花さんたちに引き合わせてくれてありがとうございます。私たちにとっても願ってもないお誘いです。」
カレンはそう言うと、虹花さんたちの向き直り頭を下げた。
「虹花さん。この申し出を受けさせてください。それで、できれば早めにダンジョンで連携確認をさせてください。」
「こちらこそよろしくお願いします。こんな弟ですが、こき使ってくださいね?」
「なな姉ちゃん、それ酷くない?!まあ、よろしく!!」
どうやら話はまとまったようだった。
ふと、カイリを見ると僕を見つめていた。
「カイリどうしたの?何か他に聞きたいこととかあった?」
「………。ケントさん…。まだ隠していることありませんか?」
一瞬ドキッとしてしまった。
どこか僕の中身を見透かすような、そんな瞳だった。
「どうしてそう思うんだい?特にないとは思うけど。」
「……勘…ですかね?そんなかんじです。で、どうなんですか?」
カイリに表情からどんどんハイライトが消えていっている気がする。
どうしたものか…。
別に隠す必要もないんだけど、なぜだか話すべきではないと考えていた。
「ケントさん。栄次郎さんも自分の秘密を打ち明けてくれました。私たちはそんなに信用がないですか?」
あぁ、こう言われたら言わないって選択肢は取れないよなぁ。
言わないってことは、彼女たちを…彼女を信じていないってことになるから。
「本当にカイリにはかなわないな。わかった、話すよ。でも、ここで聞いた話は他言無用でお願いするね。」
結局カイリに押し負けるようにスキル【スキルクリエイター】について話をした。
このスキルは谷浦と似たような仕様であること。
ボーナスポイントは消滅しないこと。
すでに何度も繰り返してステータス強化してきたこと。
少し話すと、気持ちが楽になった。
別に無理に隠す必要なんてなかったんだ。
あれ?でもどうして隠しておこうと思ったんだ?
なんだか心に靄みたいなのがかかっている気がする。
「ケントさん。私たちは気にしません!!ケントさんには何度も助けてもらいました。今度は私たちが…私が助けます!!」
「いやいや。だからね、デメリットも説明したでしょ?レベル低下のせいでランクが下がる危険性もあるんだって。だから、メンバーを巻き込めないから一緒には行けないんだって。」
カイリは真剣な目で僕を見つめてきた。
それも、僕の中を見据えるように。
「先輩…それって俺と同じじゃないですか?だったら問題ないですって。俺も結果そうなるんですから。ピンチだったら、仲間を助けるためだったら躊躇せずに使いますよ。だから一緒に行きましょう。」
谷浦まで…
ほんと、なんでこんなことになるかな…
どうして「僕」を見つめてくるんだよ。
ピコン
『一定条件を達成しました。スキル【スキルクリエイター】の権限を一部解除します。』
ここでなんか、いきなり来たんですけど!?
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ついに打ち明けたケント。
そして進化するスキル。
この後待ち構える事件にどう立ち向かうのか。
それと、いろいろ伏線が散らかり始めました(;^ω^)
回収できるんだろうか…
では、次回をお楽しみください。
※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。




