036 弾む心と保護者気分
3人が去った後、改めてカイリからお礼を言われた。
「ケントさん。また助けてくれてありがとう。」
「ケントさんっていうんだ。そっか。私はカレン。赤羽根 花怜って言います。それと、カイリを助けてくれてありがとうございます。ケントさんが助けてくれなかったら、私は一生後悔していたと思います。」
黒髪の女の子…カレンは目に涙を浮かべていた。今時珍しいくらいに、しっかりした芯の通った子のようだ。言葉の端々にカイリを心配していることが伝わってくる。
「私は、アスカですう。海莉ちゃんを助けてくれてありがとうなのですぅ。」
「ちょっとあーちゃん!!語尾を治すように何度言ったらわかるんですか?今はしっかりとお礼を言う場面でしょ?!」
うん、アスカちゃんはどうやらおっとりとした子らしい。しかもカレンは完全にオカンと化している。ほんと、いいチームだ。
「ところで君たちは今後どうするんだい?前衛なしだと探索は厳しいでしょ?」
いらぬお世話とは思うけど、何となく心配になってしまった。特にカイリは今回の件で相当ショックを受けているだろうし。男性とパーティーを組むのは無理だと思う。あとで一ノ瀬さんに相談してみようかな?
「それについてはカイリの状態を見て考えます。3人なら第3層までなら何とかなると思いますから。地道にレベルを上げていこうと思います。」
代表してカレンが答えてくれた。きちんとカイリの事を考えての発言だろう。彼女なら問題ないかな。
「そっか。本当に無理だけはしないようにね?それと、あのシンって男の子には気を付けてね。なんだか嫌な予感がしてならないから。あの目はあきらめていない感じがしたし。」
「シンは…別として、ダイスケとリョウを信じたいと思います。あの二人がシンを押さえてくれるって。」
「わかった。でも、油断だけはしないようにね?今回はたまたま助けられたからいいけど、誰も助けに来れない場合だってあるから。」
「はい。ご心配いただきありがとうございます。」
カイリ達と別れ際にアドレス交換をした。
今後何かあれば相談させてほしいとのことだったが、僕に何かアドバイスできるのだろうか…
自宅に戻ると家族全員揃っていた。
妹は朝に検証した結果について、ネットでも確認を取っていたらしい。
どうやら、虫を殺しても経験値が入るのは眉唾のうわさ話的に出回っていて、検証をしたらそうだったって載っていたらしい。
さすがに【生物】全般だろうとは仮説が飛躍していなかったらしく、少しだけ安心したようだった。
一ノ瀬さんから聞いたことも家族で共有した。ただし、あまり広めないでほしいと話が有ったことを伝えた。
そして、今日あった出来事の話になった。
父さんと母さんからはとても心配されてしまい、いい年したおっさんに本気の説教をしてくる始末だった。
妹はというと、ニヤニヤとしていた。
もう少しきちんと話をしていたらパーティーを組むチャンスだったのにと。「せっかくのハーレムを不意にしたね」といわれたときは、さすがに引いた。年齢的にさすがにまずいだろうと話を打ち切ったのだった。
ピロリン、ピロリン
夕食を終えて自室でくつろいでいると、不意にスマホから着信のお知らせが鳴った。
どうやらメールが届いたらしい。
カイリからのメールだ。
”今日は本当にありがとうございました。お礼を言っても言い切れません。カレンとアスナと話し合いをしました。そしてお願いがあります。私たちとパーティーを組んでもらえないでしょうか。突然の申し出で困惑をしているとは思いますが、私たちなりにきちんと話し合った結果です。ではお返事をお待ちしています。”
どうやらパーティーメンバーのお誘いメールだった。
どうしたものか…
僕のスキルを教えることになる…
とりあえず一回組んでみて、無理そうだってことで諦めてもらおう。
”お誘いありがとうございます。こんなおじさんで申し訳ないですが、一度仮に組んで探索してみましょう。正式な回答はそれからということでいいでしょうか?”
”わかりました。では次の土曜日朝9時に訓練施設前で待ち合わせでお願いします。楽しみにしています。”
うん、これはダメだ…
年甲斐もなく心が弾んでしまった。
一回り以上違う少女たちとのパーティーか…
ある意味、保護者みたいなものかな。
少し心臓の鼓動がうるさいが、夜も遅いので頑張って寝よう。
おやすみなさい。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
迷いに迷ってハーレムルート…
ってなるかは、まだわかりません。
年齢的に保護者ですからね。
これからどうなるか楽しみにしてください。
誤字・脱字等ございましたらご報告いただけると幸いです。
感想・評価・ブクマいただけると作者は頑張れます。
では、次回をお楽しみください。
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