034 裏切りと偽り
僕たちは第1層を目指して移動を開始した。
あらかた打ち合わせた通りに戦闘をすると、とても戦いやすかった。
カイリが魔法で牽制してくれるおかげで、倒す順番を明確にしやすかったからだ。
数度の戦闘でその実力を理解した。
正直僕よりも戦闘がうまい。
僕の動きに合わせて的確に牽制をしてくれるからだ。
帰り道は
フォレストウルフ3匹
ゴブリン2匹
スライム7匹
を討伐した。
後衛がいるだけで、これほど戦闘が変わるのかと驚いた。
ほんと、パーティーが組みたい…
そんなこんなで無事トランスゲートへ到着できた。
二人で顔をみあわせると、どちらからともなく笑顔がこぼれた。
彼女の笑顔がとても印象的だった。きっとこの笑顔が彼女の本当の顔なんだと思う。
その分だけあの剣士が許せないと感じてしまう。
トランスゲートを抜けると、すでに夕方過ぎだった。
受付で今回の件について説明を行った。
彼女は時折涙を浮かべ、説明をしていた。
自衛官もその話を真剣に聞き、メモを残していた。
他の自衛官に確認を取ったところ、どうやらパーティーメンバーも無事ダンジョンを脱出していた。
彼女の少しほっとしたような表情が印象的だった。囮にされたとはいえ心配だったのだと思う。
そして、彼らは今回の件について自衛官にこう説明をしていたのだ。
”海里が、自ら殿を買って出てくれた。そのおかげでメンバー全員が無事に帰還できた”と。
それを聞いたカイリは…
その場にうずくまって涙を流していた…
裏切りが決定的になったからだ。
どこかで間違いであってほしいと願っていたのだと思う。
僕はそっとその背中をさすって、彼女が泣き止むまで待った。
どのくらいたっただろうか、彼女も少し落ち着いたようで立ち上がることができた。
話を聞いていた自衛官は彼女から聞いた話と、先に聞いていた話の確認作業を行うということだ。
場合によっては、後日事情聴取を行うかもしれないとのことだった。
それとパーティーメンバーは治療の為、現在医務室にいるとのことだった。
カイリに行くのか尋ねると、今は会う気はないそうだ。
ドロップアイテムの清算を終えて取り分を分けようとしたら、カイリから辞退の申し出があった。
今回助けてもらわなければ自分はここにいなかっただろうからと。
さすがに僕も受け取れなかった。しかし、助けてくれたお礼だといわれてしまえば、これ以上押し付けることができなくなってしまった。
帰り際に改めてお礼を言われてしまった。
僕としてはもうお礼を受け取った以上、頭を下げられると困ってしまう。
カイリにそれを伝えると、やっと頭を上げてくれた。
周囲の目がとても痛かった。
改めてこれからどうするのか尋ねてみた。
彼女は現在のパーティーを抜けようと思っているそうだ。
それはそうか。信用できない人とこんな世界で生きていけるはずがないから。
二人で出口に向かうと、若い探索者パーティーが医務室から出てきた。
それを見たカイリの表情が固まっていた。
カイリを見つけた少女二人が駆け寄ってきた。
カイリのことを本気で心配していたようで、抱き合って涙を流していた。
うん、この子たちは悪い子ではないのかもしれない。
カイリも二人を抱きしめて涙を流していた。
その後ろから男の子3人がやってきて、カイリに向かって頭を下げた。
少ししたらまた一緒に探索に戻ろうと話が出てきた。
カイリはパーティーに戻る気がないと告げると、リーダーらしき剣士が無理やりカイリの腕をつかみ連れ去ろうとした。
嫌がる彼女を見た女の子二人も怒りをあらわにする。
見かねた僕は嫌がるカイリを助けた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
いるよね~こういう俺様系男子。
ちなみに作者は一番嫌いなタイプです。
なので今回のお話を書くのが楽しくて楽しくて仕方がなかったです。
やばい、黒いオーラが出始めた(;^ω^)
というわけで、怨念こもるおはなしはもう少し続きます。
誤字・脱字等ございましたらご報告いただけると幸いです。
感想・評価・ブクマいただけると作者は頑張れます。
では、次回をお楽しみください。
※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。




