032 殿という名の囮
僕は少し沈んだ気持ちを立て直せていないでいた。
しかしこのままここにとどまるわけにもいかず、周辺を警戒しつつ探索へ移った。
しばらく探索すると、少し大きめの集落を発見した。
さすがにこの大きさは一人では無理だと思う。
この集落はあきらめて別を探そうとした時だった。
集落内部から戦闘音が聞こえてきた。
どうやら先にこの集落を襲撃した探索者がいたようだ。
そういえば、他人が戦ってるところを見たことがあまりないことに気が付き、参考がてら様子見を行った。
6人パーティーで、なかなか連携が取れているようだった。
盾持ちの前衛が、うまいことゴブリン4匹を引き付けていた。
その横をすり抜けるように、剣士が別のゴブリンへ斬りかかっていった。ゴブリン達も応戦するため2匹で当たっていた。
盾持ちの前衛の後ろから、隙を伺いながら槍使いが攻撃を仕掛けていた。
後衛はおそらく魔法使いが二人で、うまいことゴブリン達の連携を切り崩していく。
一番後ろに回復職と思われる人物がいた。全体を見回しながら、うまいこと回復を行っていた。
なるほど、これがパーティーでの戦闘か。訓練以来だけど、それとはまた違う感じがした。
ん?建物の脇に………
ゴブリンが4匹?!
完全に後衛に奇襲をかけるつもりだ。
これは助けるべきか…
しかし、助けた後で因縁を付けられても困るし…
実は気が付いててわざとやってるのかもしれない…
僕が悩んでる間に事態が動いてしまった。
ゴブリン4匹の奇襲が成功してしまったのだ。
僕は慌てて駆けだした。ここで殺されたら寝覚めが悪すぎる!!
くそ!!間に合え!!
奇襲された後衛の魔法使い1名と回復職は、後方に吹き飛ばされてしまった。
おそらくうまく受け身を取れていないのか、ダメージを負ったようだ。うずくまったまま動けないようだ。
それに気が付いた剣士が、慌てて退却の指示を出した。
盾持ちもうまいことさばききり、その場から後退した。
全員がうまく退却できた…わけではなかった。
盾持ちと槍使いが倒れた二人を担ぐと、全力で走り出した。
残る剣士と魔法使いが殿をするのかと思ったが…
剣士が魔法使いをゴブリンの方へ蹴り飛ばしたのだ。
あの腐れ剣士!!
僕は走りながらインベントリから石を取り出す。
間に合え!!
手持ちの石10個を連続で投げつける。
うまいこと7匹にヒットして残りは3匹。
間に合え!!
襲い掛かるゴブリンが、いきなり目の前で爆ぜたことに驚いた魔法使いは、まだ動けずにいた。
僕は全力で駆ける。
これまで感じたことのない感覚だった。
全てが置き去りになる、そんな感じだ。
魔法使いは正気を取り戻し、迫りくるゴブリンに魔法を放った。
放たれた魔法は火属性魔法の爆発系統だろうか。
爆発に巻き込まれる形で2匹のゴブリンが吹き飛ばされていった。
使った魔法使いも爆発が近すぎたせいか後方へ吹き飛ばされてしまった。
逆にそれが功を奏したのか、残り1匹のゴブリンの攻撃を躱すことにつながったのだ。
吹き飛ばされたゴブリン2匹のうち、1匹は動かなくなっていた。もう1匹は残りのゴブリンとともに、魔法使いへ襲い掛かった。
間に合え!!
ガキン!!
間一髪だった。
ぎりぎりで盾をねじ込み、魔法使いへの攻撃を防ぐことに成功した。
急なことに驚いたゴブリンは、一瞬硬直していた。
その隙を見逃さなかった魔法使いは2発魔法を放つ。今回は火属性魔法の貫通系統の魔法でゴブリンの頭を撃ち抜いて見せた。
「間に合ってよかった…」
それにしても、少女を囮にして逃げるとは…
男として風上にも置けない!!
しかし事態はそれで終わってはくれなかった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
こういった冒険ものにあるあるの展開。
ヒーロー登場的な王道ストーリーですよね。
主人公俺TUEEEEEE系じゃないんですけどねぇ~。
結果こうなるの王道ストーリーってやつなのかもしれないですね。
誤字・脱字等ございましたらご報告いただけると幸いです。
感想・評価・ブクマいただけると作者は頑張れます。
では、次回をお楽しみください。
※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。




