002 ステータス(改稿版)
自称神の演説の後、パニックに陥るかと思ったけど、意外とみんな冷静だった。
死者が出るまでは…
SNSで上がってた通り、ダンジョンが発生した。
政府や警察はむやみに中に入るなって声明を出したけど、従わないやつはどこにでもいるものだ。
企画していたキャンプどころではなくなったので、僕たちは一旦自宅へ帰ることになった。
子供たちも揺れが怖かったようで、佐奈から離れようとはしなかった。
自宅につくとこの件について家族で話し合った。
父さんと茂君も酔いがさめてしまったようで、話し合いに参加できそうだった。
それと、テレビではずっとこの話題で持ちきりだった。
———次のニュースです。本日「神」と名のる人物より複数の端末が一斉にハッキングを受けた模様です。政府は全世界規模で発生したハッキング事件として、対策本部を設置。緊急対策会議を開いている模様です。この後何か声明が発表される見通しです。———
スマホやPCでもこの話題でもちきりだった。
家族との話し合いの結果、とりあえず静観しようということになった。
わざわざ自分たちが無理をすることは無いのだから。
警察や自衛隊が何とかしてくれると思っていたのだから。
佐奈達は明日、急いで自宅に戻るそうだ。
向こうには茂君のご両親もいるので心配なんだろう。
一応電話で無事は確認取れており、一安心はしていた。
数日すると、ニュースでは警察・自衛隊によるダンジョンの封鎖。および調査が始まったとの報道があった。
家族で夕食をとっていると1つのニュースが飛び込んできた
———たった今、速報が届きました。どうやら、ダンジョンで民間人の死者が出た模様です。繰り返します、ダンジョンで民間人の死者が出た模様です。詳しい内容につきましてはわかり次第お伝えいたします。———
恐れていた事態が発生した。
ついにダンジョンで民間人の死者が出たのだ。
追加情報で詳細が分かってきた。
封鎖しきれていなかった未確認のダンジョンに、勝手に入った若者が数名死亡。数名重傷を負ったらしい。
これについても報道で賛否が分かれていた。
政府・警察・自衛隊の対応の遅さが原因だと騒ぎ立てる者たちもいた。
言葉が悪いですがと断ってから、自業自得ではないかと言った意見も出ていた。
僕としては対岸の火事くらいにしか思っていなかった。
正直、政府はむやみに近づくなと声明を発表していたのにもかかわらず、自らそこへ足を踏み入れたのだ。
自業自得と思われても仕方がないと思う。
食事も終わりふと、スマホを見ると例の文字が画面上に浮かんでいる。
個人情報▼
インベントリ▼
気になってはいたが、怖くて触っていなかった。
夕方、美鈴は触ったらしく、ステータスにいろいろ書かれているとのことだった。
驚かないでね?って念押しされたが、どういうことなんだろうか…
夕食後自室で意を決して触ってみた。
ーーーーーーーーーー
基本情報
氏名 :中村 剣斗
年齢 :35歳
職業 :無職
称号 :無職
ステータス
レベル :1
HP :100/100
SP : 10/ 10
体力 :30
力 :20
知力 :15
精神力 :10
魅力 : 5
幸運 :20
スキル
スキル名:世界共通言語 レベル無し
インベントリ レベル1
スキルクリエイター レベル1
装備
頭 :なし
胴体 :トレーナー
腕 :なし
腰 :トレーナー
下半身 :なし
足 :なし
装飾品 :なし
ーーーーーーーーーー
「うわっ?!」
いきなり目の前に現れた透明な板状のディスプレイに、僕はびっくりしすぎて声を出してしまった。
ドタドダドタ!!
「お兄ちゃんどうしたの?!」
美鈴も何事かと部屋に飛び込んできたが、僕のスマホを見て自分もそうなったと笑っていた。
「あ~笑った。通称ステータスボードっていうやつらしいよ。そこには自分の情報が全部載るってことらしいけど、まだわからないことだらけだって。」
「そっか、ありがとう。それより美鈴、ステータスの値ってどのくらいが平均値なんだ?」
「それ気になって調べたんだけど、SNS上には上がってきてなかったね。きっと皆隠してる節があるかな?」
冷静にステータスを見てみたが、これが高いのか低いのかわからなかった。
とりあえず、中身を確認していこう。
スキルの【世界共通言語】と【インベントリ】は、自称神がよこしたものだとわかる。
【世界共通言語】は言葉がすべて共通に聞こえるってところかな?
【インベントリ】はどうなんだ?
ん?触れる?
触れてみると、ゲームのような枠がたくさん並んでいる。
どうやって使うんだ?
「なあ、美鈴。この【インベントリ】ってどうやって使うんだ?」
「入れたいものを触って『収納』って念じれば入るよ。出したい時は出したい物をイメージして、『解放』。簡単でしょ?」
なるほど。とりあえずその辺にあった雑誌で試してみよう。
『収納』
あ、【インベントリ】の枠の中に雑誌が入っている。
あとは、取り出すときはその者をイメージして…
『解放』
おお、いきなり出てきてびっくりしてしまった。
美鈴はすでに試していたらしく、ある程度の物は入れることができたらしい。
さすがにベッドは収納できなかったそうだ。
これである程度【インベントリ】の効果は確認できた。
じゃあ、スキルクリエイターっていうのは何だろうか?
スキルを触ってみると詳細が分かった。
スキルクリエイター:自身のレベルを生贄に新たなスキルを創造できる。ただし、作成するにはその分の代価が必要。自身のレベルが0になる場合は作成できない。
え?
ということはレベルを上げないと使えないの?
しかも使うとレベルが下がるって…
どうやって使えばいいんだ?
はずれなんじゃないだろうか…
「美鈴、自分が上げたレベルを消費して新しいスキルもらえるのってどう思う?」
「え?意味わかんないんだけど?」
「え?スキルの説明にそう書いてあったから。」
「じゃあ、お兄ちゃんスキルはいっぱいあるのに強くないキャラになりたい?」
「それは嫌だな…」
このスキルについてはまだまだ確認しなくてはいけないことがたくさんあるようだ。
場合によってはほぼ封印状態で使わないようにしないといけない。
困ったな…
でもその前に気になることがある…
ステータスの職業欄…
無職なんですけど⁉
え?だって、仕事明日から再開のはずでは?
ぷるるる ぷるるる
『おかけになった電話は、お客様の都合によりお繋ぎできません。おかけになった電話は、お客様の都合によりお繋ぎできません。』
慌てて、会社に電話するとつながらなかった…
同僚に電話で確認したら理由がわかった。
『もしもし、田島?今時間良いか?』
『いいけどどうした?もしかして会社の件か?』
『何か知ってるのか。教えてくれないか?電話しても繋がんないんだよ。』
『俺もたまたま社長の番号知ってて電話して確認したんだけど…。会社の建物…ダンジョンになったって。』
『え?まじでか?』
『あぁ、間違いない。俺もさっき会社に行って来たら、自衛隊に止められたから。』
会社の建物が昨日ダンジョンになったそうだ…
敷地一切含めて国の管理下に置かれたので、倒産するしかないそうだ…
それから後日会社から正式な書類が届き、僕は晴れて無職になった…