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【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第5章 富士攻略編

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140 ラーとケント

 ラー君と呼ばれたスライムがケントと出会ったのは、ケントが最前線基地【富士急ハイランド跡地】に向かう時の事だった。


 ケントは向かうついでに、野良ダンジョンと呼ばれる今は放棄されたダンジョンを攻略していた。

 あくまでも野良であって、正規に管理されたダンジョンではない。

 未管理であるがために、もぐりの探索者が日銭稼ぎにやってきたりしている場所だ。


 そんな中、一つのダンジョンを攻略中に最終階のボス部屋にボスとしてラーは存在した。





「ここは?僕は確かムー君たちと一緒に冒険者と戦って……そうだ、倒されたんだ。つまりここはリスポーン部屋か……。あれ?ムー君?ムー君!?」


 ラーは自分が今いる場所が良く分かっていなかった。

 本来であれば戻ってくるはずのリスポーン部屋でない事は良く分かった。

 ラーがいる場所。

 恐らくダンジョンである事は確信が持てた……

 ラー自身に流れ込む魔力がそれを証明していた。

 しかし分からない事も多い。

 今まで見た事の無いリスポーン部屋だった。


 辺りを見回しても何もない。

 あるのは自分の目の前の扉と、後ろの扉。

 ダンジョンのボス部屋にそっくりだったのだ。


「ここってボス部屋っぽいけど……。うん、間違いない。何度か僕たちがが担当したボス部屋の感じにそっくりだ。でもなんで?」


 ラーは自分がなぜここにいるのか見当がつかなかった。




 ラーはここに来る前、5代目【勇者】と名乗る人間族と戦闘をしていた。

 いつものメンバーのムー君とスーちゃん、イーさんにラー自身だ。

 その戦闘は激しいものだった。

 最初はタダのスライムだったが、彼らは全員異常進化を遂げていた。

 人間族からは【イレギュラー】種としておそれられるほどに。

 しかし年々力を付けた人間族はついに魔王城へとたどり着いたのだ。

 いつものメンバーはそれぞれ隊を任されるほどに成長を遂げていた。

 それをもってしても人間族の進撃を止める事が敵わなかった。

 魔王軍は徐々に後退し、ついには魔王城へと追い詰められてしまった。

 彼ら4匹は意を決し、【魔王】の御前を辞すると現在侵攻中の人間族の部隊に突撃をかけたのだ。


 その戦いは熾烈を極めた。

 4匹がいくら【イレギュラー】種だとしても、迫りくる相手は30万を超える軍勢。

 一人でも多く倒し、この先にいる【魔王】を守る事だけが、自分たちの存在意義だと震える心を押さえつけ戦い続けた。


 しかしその戦いは長くは続かなかった。

 物量差には勝てるはずもなく、4万ほど打倒したのちに4匹はそろって【勇者】の手で討伐されたのだ。


———閑話休題———


 ラーは体を動かすと、その形を変えていく。

 準備運動でもするかのように体全体を変形させたり、一部を武器や防具に変化させていた。

 一通り確認し終えると、満足したのか元の球体に戻っていた。


「うん、【フィジカルチェンジ】と【アタックチェンジ】に【ディフェンスチェンジ】は問題無いね。あとはここがどこで、ここからどうやったら出られるかっにて事かな?それから、みんなを探さないと。」


 ラーはそう言うと目の前の扉に向かって移動を始めた。

 ぴょんぴょんと跳ねる姿は見るものが見たら一撃で萌えること請け合いだった。

 ただ、ここには誰もいないのだが……


「いた!!」


 しかし、ラーの行動もここまでだった。

 3mも移動しないうちに、何か透明な壁の様な物にぶつかってしまった。


「何だよこれ……。【結界】的な何かかな?」


 ラーはその透明な壁沿いに移動を始めた。

 その壁は最初の場所から円を描くように設置しており、そこから出る事はでいなかった。


「これって……。完全に閉じ込められたね。みんなダイジョブかな……」


 ラーはそれが心配だった。

 自分の後輩?に当たるムーが一番気がかりだった。

 あまり口数は多くないけど、それでもなんだかほおっておけない弟みたいな存在。

 それがムーだった。


「無事でいてね。」


 誰もいない部屋で、ラーはそうつぶやいたのだった。






「やっとボス部屋だな。」

『長かったですね。ここ放置され過ぎじゃないですか?』

『そう申しても始まらんだろうに。その分魔石が大量に集まったのだから良しとしておこうでは無いか。これだけあれば魔道具が作り放題であろう?』


 ケントたちは野良ダンジョンと呼ばれているダンジョンを攻略中であった。

 既に第50層目に到達し、Cランクダンジョンと言っても差し支えないものだった。

 ただそれを2日で最下層まで降りてきたのはケントたちの規格外さがうかがい知れる。

 多田野は愚痴りながらも、ストックしてある魔石にニヤツキが止まらない様子だった。

 それをからかいながらも締めるタクマは、多田野の良いかじ取り役なのかもしれない。


『ふむ。どうやらここが最終地点のようだの。』

「タクマがそう言うんだったら間違いないね。よし、この【スライムダンジョン】のボスとのご対面と行こうじゃないか。」


 ケントが大きな扉を押し開けると、ギシギシと音を立てながら扉が開かれている。

 中はバスケットコート2面分くらいの広さで、さほど大きいとは言えないものだった。

 中央にはこれまた青く透明な体をしたスライムが鎮座していた。

 プルプルと震えたかと思うと、時折ジャンプしてこちらを威嚇している様にも見えていた。


「やっぱりボスはスライムだよね。個人的にキングスライム的なの期待したんだけど、そうはいかなかったね。」

『ケントさん……ゲームのやり過ぎじゃ無ですか?』

『二人とも無駄話は後にせんか。ほれ向こうはやる気満々だぞ?』


 タクマはそう言うと、魔法剣【烈火】もどきを右手に持って戦闘態勢に入った。

 だらりとぶら下げられた武器はいかにも隙がありそうだった。

 しかし、そんな隙を見せるほどタクマは優しくはない。


 多田野も魔道具を発動させていつもの戦闘態勢に入る。

 空中には煉獄が4基待機している。

 4基とも目の前のボスと思しきスライムを既に照準にとらえていた。

 そのほかにもイージスを浮かべ、防御にも隙が無い。

 手にしたオルトロスが今日も怪しく光っていた。


 ケントはどこか違和感を感じていた。

 一応武器を構えるも、その違和感をぬぐえなかった。

 ここまで問題無く余裕で進んできたので、自分自身が強くなったからかと思っていたが、それも何か違うと思えた。


「二人とも少し待って……」

『どうしたんです?』

『何かあったという事か?』


 ケントの静止命令に二人は困惑の色を浮かべている。

 早く倒して先に進もうと思っていたからだ。


 ケントは何を思ったのか、ゆっくりとボス部屋の中に入っていく。

 その表情に警戒の色は無く、むしろ何か確信がある様にスライムに近づいていった。


 目の前のスライムは、ケントが近づくにつれてその形を変化させていく。

 それは徐々に人型に近づき、最後は150cm前後の少年の姿に変わっていたのだ。


「初めましてかな?」





 ラーがどうしたものかと思っていると、いきなり目の前の扉が軋みを立てながら開かれていく。

 そこから入って来たのは冒険者と思しき人族たち……では無かった。

 一人は間違いなく人族だった。

 しかしその横に控える者たちが偉業だった。

 青い体の一つ目の巨人と、人族にしては肉体としての存在感が薄い者。

 ラーは混乱してしまった。

 今まで見てきた冒険者とは違ったからだ。

 確かにラーと同じモンスターを引き連れてきた人族はいた。

 しかしそれはテイムされており、自由などありはしないからだ。

 だが、目の前の一つ目の巨人は違った。

 何やら主人らしき人族に親し気に話しかけていた。

 テイムされていてはあり得ない状況だったからだ。

 普通テイムされていれば、その眼には活力など無かった。

 ただ命令に忠実に従う、生きた人形に成り下がってしまうからだ。


 ラーはだからこそ警戒を一層強めた。

 目の前の壁はいつの間にか無くなっており、自由に移動できるようになっていた。

 しかし、あの人族たちがいつ襲い掛かってくるか分からない以上、下手に動くのは難しいと判断してたのだ。


 ラーは訝しがりながらも、その人族の動向に注視した。

 するとその人族は武器を構えるでもなく、悠然とした態度でラーに向かって歩いてきた。

 ラーは最大戦闘力を発揮できるように、人型にその姿を変えていく。

 その姿は約150cmくらいの少年のようだった。


「初めましてかな?」


 これがケントとラーの初めての出会いだった。

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