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【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

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138 目指す先に有るもの

「ケントさん……、それって……」


 困惑気味に佐藤はケントに尋ねた。

 それは当たり前の話で、ついさっきまで命を狙われていたのだ。

 いきなり大丈夫と言われても、はいそうですかと信じられるはずはないのだ、


「取り敢えず馬場については片を付けてきた。これからは馬場から襲われることは無いよ。」


 ケントの言葉の裏側にあるものに気が付いた佐藤は、何とも言えない表情を浮かべていた。

 暴君だったとは言え知人の命が消え去ったのだ。

 思うところはあるはずだとケントは考えていた。


「これで、救われた人間もいたはずです。ありがとうございます。」


 佐藤から発せられた言葉は、ケントに背負わせてしまった事に対する謝罪の言葉であった。

 その言葉を聞いたケントは少しだけこそばゆい物を感じていた。

 ケントとしては降りかかった火の粉を払っただけだった。

 今後の憂いを払う意味合いが強かったのだ。

 それを感謝されてしまっては、何とも言えない感じに思うのも仕方がないのかもしれない。


「お礼を言われることではないよ。」

「それでもです。」


 ニコリと笑顔を作る佐藤のを見て、ケントは少しだけ救われた気がしたのだった。

 人殺しは人殺し。

 それは紛れもない事実だから。

 ケントは自身でもそして、多田野に銘じてかなりの人数をその手にかけていた。

 しかし、何も感じなかった。

 モンスターを倒すのと同じ感覚でしかなかったのだ。


『主よ……、気にするでない。【神の権能】を得た時点で仕方が無い事なのだからな。そして主は吾を取り込んだ。つまりは二つ目の【神の権能】をその身に宿したのだ。人ならざる者になるもの仕方があるまいて。』

「わかってる。」


 タクマから引き継いだ【神の権能】は【不動不屈】。

 何事にも揺るがず、何事にも屈せず、己を貫く精神。

 その奥に秘めるは、己の精神構造への干渉であった。

 ケント自身の【神の権能】は【情報改編】。

 物質に対する情報構造への干渉。

 二つを手にしたことで、ケント自身を作り替える形となってしまったのだ。

 そしてタクマを取り込んだ際にケントは完全に人を……、人種であることに終わりを告げたのだった。


——————


基本情報


 氏名  :中村なかむら 剣斗けんと

 年齢  :36歳

 職業  :探索者B

 称号  :神へと至るもの

 種族  :亜神


——————


「取り敢えず職業が探索者って事は、まだこの世界の住人だって事は間違いないみたいだしね。まあ、これが無くなったら俺は人ではないって事なんだろうな。」

『ケントさん!!自衛隊の一部がそっちに向かってます!!おそらく加賀谷の手の物だと思います!!』


 タクマとの会話の最中に多田野からの情報がもたらされたのだ。

 ケントもさすがにこれには驚きを隠せずにいた。

 

「ちっ!!手回しが早すぎるな!!ごめん、俺はこれで失礼するよ。あそこのテント使っていいから回収しておいて!!じゃ!!」


 ケントは佐藤にそう話をすると、周囲の視線も気にすることなくその場から宙に飛び上がった。

 すぐさま向かう方向に【結界】による足場が形成され、全力で空を駆けていったのだった。


「ケントさん!!」


 後方で聞こえる佐藤の声に気が付くも、ケントはその足を止める事は無かった。

 さらにその速度を上げると、誰もその眼にケントの姿をとらえる事は出来なくなっていた。

 残されたのは、パリンパリンと崩れ行く【結界】の残滓の美しい煌めきだけであった。


 ケントが去ったあと、佐藤は自衛官からいろいろと事情聴取を受けたが、ケントについては一切語ろうとはしなかった。

 【ボルテージ】のメンバー含め周囲の探索者たちの自衛隊に対する視線が疑わしい物を見るものに変わっていく。

 そのことに気が伝い自衛官は取り調べを終えると、そそくさと逃げ帰る様に去っていったのだった。


 佐藤はケントの去っていった方角を見上げ、そして改めて頭を下げたのだった。






『で、ケントさん。これからどうしますか?』


 ケントが多田野の【送還 】を行い合流してから、3日が経過していた。

 第29駐留部隊駐屯地からは大分離れており、おそらく追手を巻く事には成功していたようだった。

 そして今は身を隠すため、モンスターの襲撃で廃墟と化しているビル群の屋上に陣取っている。

 廃墟と言ってもその頑強さは相変わらずで、こうして拠点として利用可能な状況であった。

 この周辺もダンジョン攻略に合わせて解放された地域であるために、モンスターの襲撃に気をはる必要は全くなかった。


「どうするもこうするも、この第29駐留部隊駐屯地がどれだけ加賀谷……【魔王】軍の指揮下にあるか分からない以上、迂闊にダンジョンにも近づけないよな。」

『何とも面倒なことよな。神もまた面倒な試練をお与えになったものだ。まあ、だからこそ乗越え甲斐があるというものだかの。』


 タクマは豪快に笑っていたが、ケントは少し頭を抱えていた。

 どう動こうにもダンジョンは自衛隊に抑えられており、これ以上の探索が難しいからだ。


『だったら神宮寺准尉を頼りませんか?そこから一ノ瀬三等陸尉へ渡りを付けるのが無難だと思います。』


 多田野の提案がおそらく無難だろうと、ケントも考えていた。

 しかしそこの加賀谷の手が伸びていないとも考えられない。

 ゴロゴロと固いコンクリートの床の上を寝転がりながら迷うケント。

 なかなかいい案が出ず、その日も暮れていったのだった。





「うん、もうめんどくさいな。樹海に向かおう。」


 ケントは思い立ったが吉日とばかりに、立ち上がると体についた埃をぱっぱと叩き落としていた。

 加賀谷の部隊の襲撃を受けてから1週間が経過していた。


『樹海ですか?もしかして……』

「あぁ、もう考えるのがめんどくさくなってきた。どうせ俺は人間じゃないんだ。だったら思うようにやらせてもらおうかなって。」

『くははははっ!!ようやく決心がついたようだの。ようこそというべきかの?』

「いらん!!」


 周辺警戒に当たっていた多田野は、飛ばしていた煉獄を戻すとすぐに収納し出発の準備を始める。

 ケントも片付け……と言ってもテントも何もないんだが、散らかしたままにするのも気が引けたようで、軽く掃除をしていた。

 『律儀だのぉ。』とタクマが呟いていたが、ケントは無視するように作業を進めていた。


「まあ、移動中にコミュニティー見つけたら食料調達したりすればいいでしょ。それに野良ダンジョン見つけたらそのまま攻略してもいいだろうし。なんとなくだけど、縛られないだけ気が楽かもしれないな。」


 そういうケントの表情は昨日までとは違い、すっきりしている様にも見えた。




 周囲の片付けも終わると、ケントは荷物をすべてインベントリに収納する。

 そしてスマホの地図アプリを起動させ、行き先を再度確認してた。


「目指すは富士の珠海ダンジョン。その手前の日本最大拠点の最前線基地【富士急ハイランド跡地】だ。」


 ケントの指さす方は西南西。

 東京都心を抜けた先にある日本における最前線基地と言って過言ではない場所だ。

 ただし、いまだ東京都の中心部はダンジョンが多数存在し、突っ切っていくことは不可能であった。

 今回のルートは埼玉県を経由して山梨県に入る事になる。

 恐らく移動に1か月近くかかることになるが、ケントはどこ吹く風。

 良好にでも行くかの雰囲気を醸し出していた。


「カイリ……、カレン、アスカ、谷浦、虹花さん。待っててくださいね……」


 その視線の先にある最難関ダンジョンを目指し、ケントの最後の旅が始まろうとしていた。

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