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【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

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136 用心棒

 一人のやせ細った男が石畳の仄暗い路地を、全力で駆け抜ける。

 何かに追われるように、恐怖で顔をこわばらせながら。


「くそ!!聞いてねぇ~ぞ!!あんな化け物にかかわってられっか!!」


 男はさらに加速していく。

 男はおそらく探索者崩れであろうか、スキルを発動させていた。

 常人では出せない速度で裏路地を駆け抜けていく。


 薄暗く、闇夜に紛れる事で自分の姿をくらませることに成功したと思った男は、隠れ家へと戻ってきていた。


「お頭!!あいつに関わったらだめだ!!ありゃ人間じゃねぇ~ぞ!!」


 息を切らせ肩を上下させながら、男は目の前の男に苦言を呈した。

 お頭と呼ばれた男は、逃げてきた男に向かって顎をしゃくっていた。


 するとどこからともなく現れた刀身が、その男の首をポンと言う音でも出るかのように簡単に跳ね飛ばしてしまった。


「何ビビってやがる!!俺は馬場様だぞ!!あんなくそ野郎にビビってんじゃねぇ~ぞ!!」


 未だ自分の首が跳ね飛ばされたと気づいていないように立ち尽くしている胴体を、馬場は思いっきり蹴り飛ばした。

 切り口からはいまだに血があふれ出しており、蹴られた反動でそこかしこにその血をぶちまけていた。


 何処からか聞こえてきた「ひっ!!」っという怯えた声に、さらに苛立ちを募らせていく馬場。

 陰から出てきた血塗られた剣を持った男に声をかけていた。


「念のため塒を変える。今から5分後にはここを出るぞ。」

「へいへい。俺はなんでもいいんだがな。取り敢えず、〝いらないもの〟は斬り捨てて良いか?」


 馬場はその男に「勝手にしろ」というと、自室に戻っていった。

 馬場の去った部屋には手錠に繋がれたままの男女数名が横たわっていた。

 かろうじて息は有るものの、元気があるとはいいがたい状況だった。

 見るも無残なその光景に、その男はニヤリと笑っていた。






「見つけた。」


 ケントは煉獄から送られてくる情報をもとに、アジトを見つける事に成功した。

 監視者が潜り込んだのはとある建物だった。

 それは多田野が教えてくれた飯屋の隣のあばら家だ。

 恐らく地下でも作っているのか、大きさはそれほど大きな建物には見えなかった。


『おっちゃんには悪いことしそうだなぁ……』


 そのあたり一帯がどうなるか不安を覚えた多田野は、ポツリと漏らしていた。

 ケントもさすがにそこまではと思ったが、万が一相手がアジトを爆破させればそうなるだろうと思っていた。


 ケントは見つけた場所に向かって走りだした。

 キャンプ地からはさほど遠い場所ではないので上空に待機させている煉獄4機を周辺警戒に当たらせていた。


『ケントさん、俺も出ますよ。周辺警戒は俺の方でしますから。』

「しかし……、いや、意地を張っても仕方がないか。タケシ君頼んだよ。」


 ケントはそう言うとスキル【召喚】を発動させ多田野を呼び出した。

 ケントのそばに現れた多田野は、すぐに煉獄の権限を受け取り、警戒を引き継いだ。

 警戒行動から解放されたケントは、直ぐに次の行動に移った。

 全力で走る事3分。

 目の前には件の建物がある。

 入り口で警戒に当たっていた闇ギルドの人間を瞬時にのした後、入り口をそっと開いた。

 そこにはただの食堂に見えるテーブル等が備え付けられており、開店準備をすれば過ぎに店が開けるように思えた。


「この先か……」


 しかしケントにはその偽装も通用しなかった。

 カウンター裏にある偽装された床を剥がすと、階段が姿を現したのだ。

 しかし、床を放した瞬間から嫌なにおいが立ち込めてきた。

 鮮血がまき散らされたかのような鉄さび臭いにおいが充満していたのだ。

 一瞬その匂いに顔をしかめるも、ケントは奥へと進んでいった。


 気配を探ると、慌ただしく動き回る姿が見て取れた。

 その気配は焦りを覚えているようで、何かをかき集めているように見えた。


「あれだな……」


 ケントにはそれが分かっていた。

 馬場の気配がする奥の部屋に向かう途中で、ケントにいきなり刃が振り下ろされたのだ。

 慌てたケントはとっさに後ろに飛びのき、その刃に攻撃される事はなかった。


「よく気が付いたな。俺の刀を躱した奴はそんなにいないぞ?俺の師匠と兄弟子くらいか?まあ、最後は俺が斬ったが……。で、お前何もんよ?」


 通路の脇の部屋から姿を現したのは、細身の男性だった。

 腰に鞘をぶら下げ、右手には真っ黒な刀身の刀。

 そのいで立ちは〝ザ・用心棒〟的な袴姿だった。

 手にしている刀からは血の匂いが立ち込めていた。


「ん?この刀か?こいつが気になるとはお前さんもなかなか目利きが出来るみたいだな?」


 その男性は刀をふらりと揺らすと、すっと切っ先をケントに向けて構えた。

 あまりの綺麗な所作に、ケントは少しだけ見とれてしまった。

 ここで人きりなんてやっているような人物には見えなかったのだ。

 ただ、ケントはその刀を鑑定して納得してしまった。


——————


魔刀【黒天牙】……漆黒の刀身は折れず曲がらずあらゆるものを切り裂く。徐々に精神汚染を起こしていく。最終的には短刀の意志により殺戮を行うようになる。


——————


 ここにもまた精神汚染系の武器が存在していた。

 あまりの都合のよさに何か人為的な物を感じてしまった。

 ケントは恐らく加賀谷に渡した一対の短刀も原因なのかもしれないと感じていた。


「良い刀だろ?見るからに危険な色合い。そして醸し出す危険な香り。俺を魅了するには十分すぎる刀だ。」


 男性はそう言うと、刀をうっとりとした目で見つめていた。

 その眼は既に常軌を逸しているのが分かるほど、陶酔しているようにケントの目には映っていた。


「何も答えなんだな……。つまらないなぁ~。まぁいいか。刻めば何か発してくれるだろうから……ね!!」


 男性が最後の一言を発すると同時に一歩踏み出してきた。

  踏み込みと同時に突き出された刀の切っ先は、正確にケントの喉笛をとらえていた。

 さほど広い通路ではなく、人二人が通るのがやっとの道だ。

 左右に躱すほど余裕はなかった。

 ケントはすぐさま魔道具を発動させる。

 魔道具【自動防衛システム】守護のイージス


 ケントの周囲を飛び回るイージスは、的確に付いてくる男性の突きをギリギリのところで防ぐことに成功した。


 ギリギリと音を鳴らしながら、受け止められた自身の刀を見て、男性は驚きとも喜びとも取れない表情を浮かべていた。


「これはすごいや!!今までこんなことなかったのに。まさか突きを止められるなんて……。じゃあ、もっともっと突いてもいいよね?」


 男性はそう言うとさらに連撃で突きを放ってくる。


 スキル【結界】が随時更新されながらも男性の突きを受け止め続けるイージス。

 それでもなお男性は突きをやめなかった。

 次第にイージスから悲鳴が上がり始める。

 あまりにスキル【結界】の更新頻度に追いつけなくなってきたのだ。


 男性は最後の一突きに全身全霊をかける。

 今までよりも強いプレッシャーが放たれた。

 一気に迫りくる黒刃。


ガゴン!!


「んのわ!?」


 男性は顔面からつんのめる様にケントのわきを通り過ぎ、ゴロゴロと通路を転げていった。

 ケントはニヤリと笑いながら、男性に向き直る。


「足元がお留守になるのはいけないね。」


 カチャリと言う金属音と共に男性の額には砲身が出現していた。

 ケントのスキル【魔銃作成】で作り出した砲身だ。


 あまりにも冷たい金属の感触に、男性は心底冷える気がしていた。


「見逃してはくれないのかい?」


 男性はケントに命乞いともとれる言葉を投げかける。

 あわよくば再度攻撃に移ろうと、いまだ手にした黒刃に力が入る。


「君は今までそうやって命乞いをした人を助けたのかい?」

「……。」


パシュン!!


 気の抜けたような音と共に、どさりと男性は崩れ落ちた。

 ケントはすぐさま【レベルドレイン】を発動させた。

 ドクリと自信に流れ込んでくる【生命】に一瞬意識を持っていかれそうになった。


 そしてすぐさま【スキルコンバート】を発動させた。

 今回の生贄は……スキル【色欲】。

 恐らくこの男性は、スキル【色欲】からくる性欲を殺人欲に置き換えていたのだろうと推測できた。

 そして新たにスキルを取得したのは、父親と同じ【鍛冶】。

 しかも、スキルとの交換レートとしては対等では無かった為、【鍛冶】のレベルが大幅に上がることになった。

 ケントとしてはこれはうれしい誤算だった。

 後は男性を吸収したことでユニークスキルを得る事が出来た。


——————


隠密:息を潜めた場合に限り感知系のスキルをすべて無効化する。


——————


 最初にケントが出し抜かれた理由はここにあった。

 自分が動かなければ感知されないという呆れた性能だった。

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[一言] 親父のスキルは『木工』
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