表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/161

133 第29駐留部隊駐屯地に向かって

 【ゴブリンダンジョン】から徒歩で戻ることになったケントは、少しばかり後悔していた。

 上手い事話をつけて車を出してもらうんだったと。

 しかしそれは今言っても仕方がない事だとも考えていた。


『仕方ないですよ。相手が【魔王】側の人間だったんですから。』


 そう励ます多田野は、今はケントの精神の中に入っていた。

 ケントは憮然とした表情を浮かべながらもその足取りはよどみなく、ここが悪路であることを忘れさせるようだった。


「吾はあ奴が好かん。どうも胡散臭さが漂って負ったからの。」


 タクマは加賀谷がお気に召さなかったようだ。

 言葉の端々から棘が見え隠れしていた。


「しょうがないよ。あの人【魔王】軍だし。それにさ、最後まで明かさなかったでしょ?【慈悲】のスキルホルダーだって。」

『そうでしたね。』

『たしかにの。そこはお主の読み通りと言う訳か。』


 ケントたちは念話である程度情報共有を行っていた。

 ケントが加賀谷を【鑑定】した結果も、二人とも知っていたのだ。

 そしてそこに書かれていた、スキルについての話は最後までしてもらえなかった。

 もし最初からそれを明かしていたら、ケントの態度も違っていたのかもしれない。


「まぁ、相手は【魔王】軍の情報部の人間だし、隠したい事が山積みだったんじゃないかな?俺だってレベル上げてなければ分からなかった訳だしね。」

『それにしても、ケントさんも人が悪いですよ。自衛官の時のつもりで接しろって。危うく逃げるの遅れたらばれるところだったじゃないですか。』

『何を言う。なかなかの演技であったではないか。いいヘタレっぷりだったぞ?』


 多田野が言う通り、ケントは多田野に対して一つ注文を入れていた。

 加賀谷が必ず多田野から情報を引き出そうとすると。

 それに対して自衛官として対応してほしいと。

 恐らくそれで必要最低限の報告だけで終わらせられるからと。


 案の定予定通りの報告で話が終わり、多田野はそのままケントの中に逃げる事に成功したのだ。

 お陰でぼろが出る事が無く、恙無く話し合いが終わったのだ。


『あれ?でもタクマには何も注文を付けませんでしたよね?』


 多田野は自分だけ注文を付けられてことに納得がいっていない様子でケントに問いただしていた。

 ケントもそれにどう答えていいか迷っていると、タクマは笑いながら多田野をからかいだした。


『それは決まっておる。信用度の差ではないか?』

『おい筋肉だるま!!もう一回俺と勝負しろ!!』


 タクマの挑発に綺麗に乗っかった多田野は、タクマに襲い掛かろうとしていた。

 ただし、ケントの精神の中ではあるが。


 ケントは深いため息をつくと、二人を表に出したのだった。


「タケシ君。君に注文を付けたのはその方が話が早いから。タクマに何も言わなかったのは、タクマは話す気がさらさらなかったから。ただそれだけだからね。ほら、あっちからはぐれモンスターがやって来たよ。」


 ケントが二人を表に出した理由は、ケントの索敵範囲内にはぐれモンスターが引っ掛かったからだ。

 ケントはさらに注意深く確認すると、少しだけ焦った表情を浮かべていた。


『どうしたんですケントさん?』

『お主は……ケントよ、こいつは大丈夫なのか?』


 何があったのか分からなかった多田野をよそに、タクマは多田野に呆れかえっていたのだった。

 ケントは北西の空を見上げていた。

 距離にして約1000m……飛竜種だった。

 タクマは既に気が付いていたようだが、多田野は二人の視線の先を凝視してようやく気が付いたのだった。


『主よどうする?』

「う~ん。倒せない事は無いけど、無理する必要あるかなって。あの方角だと恐らく第29駐留部隊駐屯地でしょ?何とかなるでしょ。」


 ケントは警戒度を一気に下げて、普段の状態に戻っていた。

 タクマもケントの様子を確認し警戒度を完全に下げてしまった。

 ただ一人、多田野は焦りを浮かべていた。


『いいんですか!?俺たちが帰る場所ですよ?壊滅したらやばくないですか?!』


 多田野の焦りも納得できるものではあった。

 しかしそれでもケントは焦る様子はなかった。

 むしろ多田野を落ち着かせようとしているくらいだ。


「第29駐留部隊駐屯地だから大丈夫だよ。あそこには猛者がたくさんいるから。はぐれの飛竜種くらい何とでもなるからね。」


 ケントがどうどうと手で焦っていた多田野を落ち着かせる。

 ケントとて呑気にしている訳では無かった。

 しかし、第29駐留部隊が弱いと言われればそうではなかった。

 何度も防衛戦を行ってきた百戦錬磨の兵どもが集まった集団だから、問題と踏んでいたのだ。


「取り敢えず俺たちは無事に駐屯地に帰る事だけを考えよう。場合によっては〝人間〟が敵になるかもしれないんだから……」


 ケントの懸念はモンスターに向いてはいなかった。

 正直な話、ケントと多田野とタクマ。

 この三人に勝てるモンスターはおそらくAランク以上のモンスターでも難しいかもしれないレベルに達していた。

 特にケントの成長は著しく、多田野のスキルを併合したことによりさらに強さを増しているのだ。


 ケントはこの先【魔王】側の〝人間〟が敵になるのではと考えていた。

 場合によっては〝探索者同士〟の争いに発展する可能性だって否定がでいないからだ。


『おそらくその懸念は当たるであろうな。【魔王】とてそれが狙いで囲い込みを行っておるのだからな。』

「それが自称神……【プロメテウス】の狙いだとしても……か。」


 ケントは呟くように言葉を漏らした。

 それを聞いていたタクマは驚いた表情を浮かべていた。


『お主は気が付いているようだな。』

「あぁ、進化の基準だろ?おそらくはって感じだけど……。俺がそうだったからそうだろう的な感じだな。」


 二人の会話に全く付いて行けない多田野。

 疎外感でいっぱいだった。


 それからしばらくすると、目の前に第29駐留部隊駐屯地が見えてきた。

 移動開始からわずか20分もかかっていない。


 行きが10分程度だったので、その倍はかかった計算だ。

 それでもかなり早い移動速度である事は間違いなかった。


「うん、問題無かったみたいだね。外壁もほとんど損傷ないし。」

『ですね、俺の心配し過ぎだったみたいです。』

『であろう?では主よ、吾らはまた元に戻るとするぞ?』


 そう言い残すとタクマと多田野はまたもケントの中に消えていった。

 本当に自由人だなとケントは思ってしまっていた。




 ケントは門の通過も問題無く行われたという事で、ほっと胸をなでおろしていた。

 もし何かアクションを起こすならこのタイミングが一番無難だろうと思っていたからだ。

 しかし蓋を開けると問題が無いというか、拍子抜けをする感覚がしてしまった。


 ケントはその足で探索者ギルドに向かった。

 次の目標尾を定めるつもりだった。


 ギルドの建物はいつもに増して騒がしかった。

 恐らく先程の飛竜種討伐についてだろとケントは思っていた。


「こんばんわ。何かあったんですか?」


 白々しくもケントはカウンターで処理にあたっていた隻腕の男性に声をかけた。


「見ての通りだ……って兄ちゃんかよ。どうだった?」

「ちゃんと【ゴブリンダンジョン】は踏破してきましたよ。」

「マジかよ!?」


 それを聞いた男性は驚きを顕わにしていた。

 そしてすぐさま無線で確認作業を行っていたが、少しすると地図を広げてゴブリンダンジョンにバツ印をつけていた。


「助かった。あそこは不人気ダンジョンでな、なかなか潜る奴がいなかったんだ。これであの一帯が解放されたという事だな。わりいな、少し席を外す。いったん自衛隊と協議をしないとならなさそうだ。」


 そう言うとすぐに席を立った男性は、駐留部隊がいる方へ向かっていってしまった。

 カウンターに一人残されたケントはどうしたものかと悩んでしまっていた。

 ただ、ここにいても仕方がないのでケントははずれにあるキャンプ地へと移動を開始したのだった。




 キャンプ地ではいまだ元気な探索者が大勢おり、がやがやと騒がしいのはいつも通りだった。


 しかし、姿を現したケントを見て驚きの表情を浮かべている人物がいた。

 そしてまたケントは厄介毎に巻き込まれていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=791510211&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ