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【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

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128 モンスターという人類

 ケントとタクマのやり取りを陰で見つめる瞳があった。

 ゆらゆらとした影は見えるものの、その輪郭はぼやけ、人なのかさえ分かりづらい印象を受ける。


 その影は別な影へ、また別な影へと移動していた。


 そして上空からは煉獄が消えていることに誰も気が付いていなかった……




『では続きと参ろうか!!』


 タクマは一気に飛び出し、ケントとの距離を詰める。

 対応が間に合わないと判断したケントは別なスキルを発動させる。


「【隔絶】!!」


 突如現れた半透明な板に一瞬驚いたタクマは、またも【結界】と同様だと思い一思いに殴りつけた。

 しかし今回吹き飛ばされたのはタクマだった。

 目の前に有った透明な板は、さらさらとその姿を崩していく。


 【隔絶】はほんの一瞬だけだが、すべての事象を跳ね除ける性能を有していた。

 しかしその性能のせいもあり、デメリットも存在する。

 それが稼働時間が約1秒ほどしかないのだ。

 スキルレベルが上がると時間は確かに伸びるが、その分SPの消費が跳ね上がってしまう。

 そこでケントはここぞという時以外は【隔絶】を使ってこなかったのだ。

 それが功を奏し、タクマとの間に余裕を作ることになったのだ。


「タクマ……そろそろ決着をつけよう。俺もこっからは遠慮なしで行かせてもらう。」


 ケントは愛用の武器魔剣【レガルド】を解き放つ。

 ドクリと一瞬脈付く魔剣【レガルド】。

 そしてケントはさらにスキルを発動させていく。


「【武器複製】」


 ケントの言葉をキーワードにスキルが機能し始める。

 一本が二本に。

 二本が四本に……八本……そして十六本に……


 ケントの額に汗がにじむ。

 ただでさえSPの消費が激しいスキルだ。

 一本当たりで消費されるSPは16本になると馬鹿にならない量だ。


 ただし、ケントの手はここで止まることは無かった。

 さらにスキルを重ねていく。


「【リビングソード】」


 地面に横たわっていた複製された魔剣【レガルド】がふわりと宙に浮く。

 ケントを囲むように浮かぶ魔剣【レガルド】はまたもドクリと脈付いていた。


 『これはまた奇怪な。武器に命を吹き込むとはな。まさに神の所業ぞ。』


 その一種異様な光景にタクマの顔は歪んでいた。

 怒りや憤りではなく、歓喜にである。

 口元はニヤリと緩み、その手のひらは、握ったり閉じたりと忙しそうにしていた。

 軽く前かがみになっており、合図があればいつでも飛び込むと言わんばかりだ。


「神の所業か……。俺は考えていた。この【スキルクリエイター】の本質について。そしてこの【リビングソード】を創造するに至ったんだ。」

『ほう……』


 何か感心したように声を上げたタクマ。

 やはり何か情報を持っていることがうかがえた。


「その本質は【情報改編】。有機無機問わず、その情報体を書き換える能力。それが【スキルクリエイター】に内包された本来の【神の権能】。そして生まれたのが【リビングソード】だ……」


 タクマはケントが示した答えに静かに肯定した。

 そしてその体を揺らしながら、大いに笑い始めたのだ。


『くはははっは!!至ったか!!神に至ったか!!なるほどなるほど、やはりお主は面白い!!吾らが主神よ!!あなた様がお与えになった試練は格別なものになりもうしたぞ!!』


 天を仰ぎ、その両手を広げながら盛大に吠えるタクマ。

 その叫びは歓喜に震えていた。

 そして笑い終えるとぎろりとその一つ目がケントを睨み付ける。


『さすがは吾らが主神【プロメテウス】様よ……。これほどの試練を用意していただけるとは。感謝申し上げますぞ。そして人の子よ、よくぞ至ってくれた。感謝する。』


 ケントはタクマの言葉をいぶかしんだ。

 いったい何を感謝しているというのかと。

 その表情を読み取ったタクマはさらに言葉を紡いだ。


『吾らが主神【プロメテウス】様はその昔、悪神と蔑まされた。あ、いや違うな。もとはその名では無かったのだからな。お主等が知る【プロメテウス】では無いぞ?だが、その伝承の影響は大いに受けておる。なぜならば、その伝承を受け継いでおるからな。』


 タクマの言葉はケントにとって馴染み無い事だった。

 むしろ何を話したいのか全く分からない。


『分からぬか……。まあ仕方あるまい。さらにその先に至り、デスゲームと呼ばれる戦いが終わればすべてが分かるだろう。一つだけヒントを与えるとすれば……【神々の書庫】。それが全ての始まりで全ての終わりだ。』


 ますますケントは混乱していく。

 これから殺し合いをするはずの二人の間に、何か可笑しな空気が流れていく。


『では続きと行こうか……なぁ!!』


 叫びと共に一足飛びで迫りくるタクマ。

 先程までと違い、全身が赤黒く変色していた。

 それは己が血を固めた防具にも見える。

 そしてケントに向けて振るわれた腕を見てケントはギョッとした。

 先程まで無かった武器が握られていたからだ。

 むしろ生えていると言った方が正しいかもしれない。


「【隔絶】!!」


 一瞬の反応の遅れであわや人たち貰うところだったが、何とか間に入り込ませることに成功した。


 ガギリ!!と爆音とともに衝撃がケントを襲う。

 いくら斬撃を防いだところで衝撃波までは防ぎきれなかったのだ。

 その衝撃波による真空の刃がケントを襲う。

 レッサー種とはいえ竜族……

 ケントの装備品である白群劣竜シリーズはその役目を全うする。

 吹き飛ばされはしたのもののダメージとしては大したことは無かった。


「さすがにやってくれたな。それなりに効いたぞ。」


 吹き飛ばされた際に口の中を切ったのか、口内にあふれ出る血の塊を吐き出すケント。

 べちゃりと地面を赤く染めていく。


「それじゃあ、今度はこっちの番だ!!」


 ケントは周囲にまたも【結界】をまき散らす。

 今度は防具のセット効果【飛翼】も上乗せしていた。

 先程までと違い、一歩一歩の動きの速度が加速されていく。

 しかも【飛翼】の効果も相まって、空中でその姿勢を急激に変え、【リビングソード】の切っ先の動きにも変化が起こる。


『なんと面倒な!!』


 負けじとタクマもその両手に作り出した血の剣をもって対応していく。

 しかし手数で勝るケントの攻撃をしのぎ切れるはずもなく、徐々にその体に切り傷を増やしていく。

 しかも先程の多田野との銃撃戦とは違い、深く長い裂創となっていく。

 タクマが動くたびにその血が周囲にまき散らされていく。


 幾たび切り結んだ時だ。

 タクマの動きがかなり緩慢になっていた。

 ケントもその様子を見逃しておらず、ここぞとばかりに猛攻を仕掛ける。

 終幕はもうすぐそこまで来ていたのだ。




 その戦いを岩陰で見つめる瞳が二つ。

 じっと身をひそめた戦いを見守る。

 その手には一つの金属の物体が握られていた。

 その金属は黒く塗りつぶされており、光が当たろうとも暗闇に溶け込んでいた。


 より激しさを増していく戦闘を見て、その者は深く息を吸い込みそして吐き出した。


 周囲の音は消えてなくなり、その眼には二人の戦闘だけが見えていた。


「弾込め確認……」


 ガチャリと音を立てて何かが動作する。


「よし。安全装置解除……」


 カチリ静かに音が鳴る


「よし。射撃よーい。」


 静かに呟かれた言葉を最後に、周囲は静けさに包まれた。


ドパンッ!!


 その静寂を打ち破るかのように、激しい爆発音が鳴り響いた……


『なんと……。これはしてやられたものだな……』


 そして体に大きな穴をあけ、どさりと前のめりに倒れこんだ。

 地面には赤い血だまりが出来ていったのだった……

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