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【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

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127 巨人(サイクロプス)

「はははっ、冗談きついよ……」


 ケントは目にした情報を疑いたくなった。

 【サイクロプス】

 ゲームであれば後半に出てくるであろう、一つ目の巨人だった。

 さっきまでの姿はどこから見てもインプの姿で、ケントとしても高速戦になるだろうと考えていた。

 しかし、蓋を開ければパワーファイトに早変わりだった。


『ふむ、この姿になるのは何十年ぶりか……実に快適だ。』

「そりゃよかったことで……」


 ケントは呆れるしか出来なかった。

 目の前のふざけた存在を前に、どうして良いか分からなかったのだ。

 ここは正攻法で力比べしかないのかと、若干の焦りを覚えていた。


 多田野もまた困惑の色を隠せなかった。

 先程までの対話の空気から一変して、いきなりの戦闘状態。

 その状況の変化に全く付いて行けなかった。

 この辺りは若さからくるものなのかは分からない。

 ただ、多田野は自衛官としての誇りは有った。

 民間人のケントを守る立場の自分が、こんなところで怖気づいていていいのかと。

 多田野は自分を奮い立たせ、愛銃に手を伸ばす。

 それと同時に自分の周囲にいつもの魔道具を展開する。

 さらに切り札というべき魔道具【浮遊型自動照準式砲台】煉獄を上空へと打ち上げる。


 その様子をじっと見ていたのはサイクロプスだった。

 邪魔する訳でも無く、ただその動きを注視していた。

 そして何を考えたのか、ニヤリと不敵に笑って見せたのだ。


 多田野は一瞬寒気に襲われた。

 恐らく自分がターゲットになったのを自覚した瞬間だったのだろう。

 多田野の体の毛穴という毛穴から嫌な汗が流れだす。

 手にした魔道具【P257自動式12mm2丁剣銃】オルトロスを強く握り直し、姿勢を低く保ちながら、いつでも戦えるとその存在を示していた。


 ケントもまた、そんな多田野に動きに背中を押されていた。

 自分はそのプレッシャーに押され、飲み込まれるところだったからだ。

 あまりにも考えすぎて動けなくなっていたのだ。

 ターゲットが多田野に分散したことも幸いし、少しだけ冷静さを取り戻してたい。


「全く嫌になるな。なぁ、お前の名前まだ聞いてなかったよな?」

『ん?俺の名か?そうだなこれがお主に会う最後になるだろうからな……。吾の名はタクマ……タクマ・モリサキだ。では参るぞ〝我と異なる生物〟よ!!』


 その名前にケントと多田野は一瞬思考が止まってしまった。

 事前に展開していた【結界】のおかげで致命傷を受ける事は無かったが、前方に複数張っていた【結界】は、サイクロプス……タクマ・モリサキの突進によって次々と破壊されていく。

 タクマにとっては、ただその太い腕を振り回しているだけだが、二人にとってはとてつもない重量物が自分たちの前で動き回っているようにしか見えなかった。

 ほんの一瞬が命取りになるやり取りの中で、思考を止めてしまったことに二人は深く後悔した。

 そして気を引き締めないと殺されると感じていた。

 ようやく動き始めた思考をまとめ、二人は行動を開始する。

 ケントはその瞬発力を生かし、周囲に新たに張り巡らせた【結界】を起点に縦横無尽に走り回る。

 時折、隙を見てタクマを切り伏せる。

 多田野も自分が管理できるフライトサブウェポンを空中に展開し、一気に距離を詰める。

 多田野の戦闘スタイルは二丁拳銃によるガン=カタである。

 そのため、タクマのその剛腕を常に躱し続けるという荒行を強いられることになる。

 そこで多田野は新たな魔道具を展開した。

 手にしていた魔石が一瞬光り、多田野が新たに取り出した台座に収納される。

 その台座からは8枚の板が分離していく。

 一枚一枚に随時【結界】が展開されており、多田野の周りをふわふわと浮いている。

 そう、これがケントから譲り受けたバロンの魔石マナコアで作り上げた魔道具……【自動防衛システム】守護のイージスである。

 その光景を見ていたケントは若干羨ましいと思ってしまったのは仕方がない事だった。

 タクマもまたその光景に二マリと口元を緩める。

 明らかに防御系の装備だと理解したようで、躊躇なくその分離した板を殴りつける。


ガギン!!ガギン!!


 生身で殴りつけたはずなのに、金属同士が激しくぶつかる音が聞こえる。

 イージスの【結界】が次々に破られるが、内臓されている魔道具【魔力ジェネレーター】によって次々に新しい【結界】が展開されていた。

 しかも、魔道具【魔力ジェネレーター】のエネルギーが切れかけると、本体であるイージスに戻り補充を始める。

 もうすでにオーバーテクノロジーと言ってもいいくらいの出来栄えである。

 完全に多田野はワンマンアーミーになりつつあった。

 これもすべてはケントに対する反抗心の表れでもあった。

 以前に一人で頑張り過ぎる事を注意を受けていたので、だったらそう出来るようになってやるという思いが心の隅に燻っていたのだ。

 そのせいもあり、スキル【魔道具師】のレベルが上がり、さらにはスキル【魔銃作成】スキル【魔弾作成】の相乗効果でどんどんとエスカレートしていったのだ。

 ただしこれにも欠点がある。

 多田野の消耗ペースが半端ないのだ。

 もちろん魔道具ではあるので、ある程度は魔道具からのエネルギー供給で動いている。

 しかし、全自動と言いつつも多田野がコントロールしている部分も大いにあるのだ。

 お陰でこのフル装備で戦闘が出来るのはもって10分。

 それが長いのか短いのかは何とも言えなかったりする。


 多田野とタクマの戦闘が、徐々に激しさを増していく。

 多田野としては残り時間を考えて、早々に決着をつけたいと考えていた。

 隙を作る為、定期的に上空の煉獄から爆撃を仕掛けたり、サブフライトウェポンで中・長距離戦に持ち込んだりと、タクマに揺さぶりをかけていた。


 タクマとしては1分1秒長くこの興奮を味わいたかった。

 自身が全力で戦っても壊れない〝おもちゃ〟が目の前に現れた。

 これを喜ばずしてどうするのか。

 タクマはその一撃一撃に魂を込め、感情をぶつける。

 荒々しささへ感じさせる一撃に、多田野は顔をしかめる。

 多田野は考えている以上に魔道具【魔力ジェネレーター】の消耗が激しいのだ。

 それだけタクマの攻撃が凄まじい事を示唆していた。


 多田野がばらまく銃弾があたり一面に小さな窪みを形成している。

 ファンタジーな空間に似つかわしくないその弾痕は、ここが現実世界だと深く感じさせていた。

 タクマとて無事とは言い切れない。

 体中に無数の傷跡を作り、赤い血を垂れ流す。

 今までのゴブリンのように青や緑の体液とは違い、人間の血に酷似した真っ赤な血が流れ落ちる。


「くハハハハハ!!久方ぶりに見たぞ!!吾の肉体をここまで傷つけた者を!!誇ってよいぞ!!小さき人の子よ!!」


 全身傷らだらけになりながらも、いまだ尊大な態度を取り続けるタクマに、多田野は苛立ちを隠せないでいた。

 多田野が現在猛攻を仕掛けているのにはもう一つ訳があった。

 ケントから完全にターゲットを外したかったのだ。

 しかしタクマも戦いなれており、周囲に常に気配を探るしぐさを見せる。

 ケントが動こうとした瞬間にその眼がケントへと向けられるのだ。


 さすがにこれ以上は無理だと判断したケントは再度戦闘へ参加する。

 タクマの真上に現れたケントはとある剣を握りしめていた。

 そう、バロンが使用していた剣、魔法剣【烈火】もどきだ。


 タクマは自分の目を守る様に左腕を掲げ魔法剣【烈火】もどきを受け止める。


「はぜろ!!」


 ケントの声に反応して大爆発を起こす魔法剣【烈火】もどき。

 その爆発は指向性を持たしており、前に前にとその熱量は押し出されていった。

 たまらず左手を振り払い、タクマは後退した。

 そしてズシリという音と共に、ついに片膝をついたのだ。

 ケントはその振り払われた衝撃で壁まで吹き飛ばされており、ノーダメージとはいかなかった。

 お互い痛み分けに終わった一撃のやり取りだった。


「やっぱりすんなり終わらせてはくれないんだな。」

『これほど楽しいひと時は無かったぞ。』


 ケントとタクマは、互いに顔を見合わせニヤリと笑みを浮かべていた。

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