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【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

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125 憤怒は突然に

 地面に突き刺さっている剣は、よく見ると先程バロンが使っていた剣に酷似している。

 前回の件もあるので、念には念を入れて触れる前に【鑑定】をかけてみた。


——————


魔法剣【烈火】もどき:魔法剣【烈火】の贋作。任意に魔法剣を発動させられるが、本物には遠く及ばない。リチャージ12時間。


——————


 どうやらこれは偽物のようで、本物はもっと凄い威力だったんだろうなと思えた。

 もし本物だった場合、ケントは躱せただろうかと焦りを隠せずにいた。


「あとは魔石(大)がありました。」


 多田野は魔石(大)を見て目が輝いていた。

 早くも魔道具を作りたくて仕方がないようだった。


「で、今度は何を作る気なんだ?魔石(大)で作るのだからそれなりに凄い物になるんだろ?」

「それほどでもないですよ。今回の件を終えて感じたのは、自分の周囲に自動で【結界】を展開出来たら便利だなって。ずっとケントさんが【結界】を張り続けてくれたおかげで、俺はこうして生きているんです。なので、自動結界展開装置なんてあれば便利だなと。」


 多田野が若干トリップ仕掛けていたのを見たケントは、苦笑いを浮かべるほかなかった。

 魔石(大)を掲げうっとりとしている多田野。

 きっと面白い物を作ってくれるんだろうと、若干期待してしまったケントだった。


 フロアボスを無事撃破した二人は、周辺の探索を行ったが特にこれといったことは無く、さほど時間をかけずに第22層への階段を発見したのだった。


 第22層から第29層までこれといった変化は無く、エリート系武器種のゴブリンが大量に出現した。

 戦闘についてもあまり大差は無く、多少賢くなったのか連携が上手くなったようには感じていた。

 しかし、それでも今のケントたちに勝てると言えば土台無理な話であった。

 ケントたちは危なげなく襲い来るゴブリンたちを次から次へと処理していったのだ。

 そのおかげか順調にレベルも上がり、ついにあと少しで90レベルも見えてくるところまで来ていた。




 そしてついに目の前には第30層……ボス部屋である。

 重厚感あふれるその大きな扉はいかにもという雰囲気を醸し出す。

 ケントたちが今いる場所は前人未到のフロアだ。

 どんなボスが出るのか……誰も経験のない場所でもあった。

 おそらくゴブリン種で間違いはないだろうが、それでも二人は緊張を隠せずにいた。


「ケントさん……行きましょうか。」

「ここにとどまっていても仕方がないからね。」


 二人は一つ頷くと、二人でその重厚感あふれる両開きの扉を押し開けた。


 二人が部屋に入るなり、ボス部屋の照明が徐々にその明るさを増していく。

 中央には1匹のゴブリン……

 その背には見慣れないものが見えた。

 翼だ……

 鳥の羽とは違い、どちらかというと蝙蝠を思わせる……そんな羽だった。


 台座の上にとまり、羽を体に巻き付けている。

 その眼は閉じられており、休んでいるのかと思わせる雰囲気だった。


 ケントと多田野は一歩……また一歩と警戒をしながら近づいている。

 その手にはすぐに武器が取り出せるように構えをしている。

 すると不意にその羽の生えたゴブリンから声をかけられた。


『なるほどな、バロンが落ちたか……まあ、仕方がなかろう。』


 一瞬声をかけられたと思ったケントだったが、その違和感に気が付いた。

 その声を耳で聞いていなかったからだ。

 多田野が耳を塞いでみても聞こえて来ていたそうなので間違いがない。

 おそらくテレパシーに類するものだろうとケントは推測している。


『なるほど……どうやら貴様らは強者のようだな……。吾にとって不足無き相手よ。』


 尊大な態度で話を続けるモンスターを警戒し続ける多田野をよそに、ケントは考えていた。

 このモンスターは何がしたいのかと。

 戦いたいなら襲ってくればいい。

 殺したいなら襲ってくればいい。

 だが、このモンスターはそれをしようとはしなかった。

 むしろもう一つの事象について考えていた。

 〝彼らはいったい何者なのか〟と……


 バロンといいこのモンスターといい、明らかにただのモンスターではなかった。

 思考し、言葉を理解し、コミュニケーションをとることが可能だ。

 それは人間と何が違うということなのだろうかと。


「お前はいったい何者だ?」


 ケントは考えても仕方がないと、このモンスターに問うことにした。

 問うても仕方がないとも思えたが、下手な考え休むに似たり……。

 無駄な時間を過ごすよりもましだと考えていた。


『ふむ、何者とな……。貴様らとて何者だと問われ答えられるか?出来なかろうて。吾は吾。貴様らがゴブリンと呼ぶ生物よ。なぁ、人種と呼ばれる生物よ。』


 この答えてケントは確信していた。

 このモンスターも一つの生物である事を。

 あの自称神が言っていた【生物の進化】であるという事を。


 多田野はケントが何を考えているのか分からずにいた。

 外敵は排除する。

 それが自衛官として教えられてきた事だ。

 しかし、今ケントが行っている行動は明らかにそれとは矛盾していた。

 むしろ積極的に対話をしようとしていたのだから。

 困惑の色を隠せずにいた多田野に対し、モンスターはさらに言葉を紡ぐ。


『そこの若造はどうやら分かっておらぬな。己の尺度でしか語れぬものに何が判断できると。』

「何だと!!」

「やめるんだタケシ君!!」

「でも!!」


 モンスターの言葉に激怒し、今にも襲い掛かろうとした多田野に対し、ケントは冷静になるようにと目にかかる。

 ケントの静止に納得のいかない多田野は、いまだモンスターを睨み付けていた。

 その両手には既に魔法銃が握られており、いつでも戦闘を開始出来ると言わんばかりの態度だった。


『ふむ、やはり若いな。この程度の挑発にかかるとは命がいくつあっても足りなかろうて。そこのお主は……、なるほどなるほど。吾らが主神もなかなか粋な事をなさる。よもや人種に【神の権能】をお与えになるとは……。これもまた吾らに対する試練と言えんでもないか。』


 おそらくこのモンスターは何かを知っている。

 ケントたち人間には知らされていない、自称神の秘密とでも言うべき事を。

 ケントはそう確信していた。


「さっきからごちゃごちゃごちゃごちゃ訳の分かんねぇ~事言ってんじゃねぇ~よ!!」


 堪えきれなくなった多田野は、ついに攻撃を開始しようとした。

 一気にスキルを発動させ、多田野の周囲にはガトリング砲が6門空中に浮いている。

 その射線上にはもちろんモンスターを捉えて。


「お前たちモンスターに俺の家族は殺された!!俺はお前たちを許すわけねぇ~だろ!!」


 それは多田野の本気の叫びだった。

 ケントも聞かされていない、多田野の慟哭。

 その眼は憎き相手を前にした復讐者そのものだった。

 そしてその眼にケントは見覚えがあった。

 そう、スキル【憤怒】だ。


 ケントは慌ててモンスターに強硬度な【結界】を張り巡らす。

 その一瞬の判断のおかげで、多田野の放った数千にも及ぶ弾丸がモンスターに届くことは無かった。


「ケントさん!!何してるんですか!!相手はモンスター……俺たちの敵だ!!」


 その眼は血走っており、今にもケントにその銃口を向けるのではないかと思われるほど、怒りに満ちていた。


「【鑑定】!!」


 ケントは冷静さを失った多田野に慌ててスキルを発動させる。

 そしてそこに映し出されたステータスには、見事にスキル【憤怒】が発生していた。

 このままではスキルに飲み込まれるのは時間の問題だと考えたケントは、問答無用で【スキルコンバート】を発動させた。

 時間が無かった為か、選んだスキルは【精神力強化】だった。

 しかも【スキルコンバート】した際に交換レートが違ったために、【精神力強化】のレベルが爆上がりしたのは幸運だった。


「あれ?なんで俺こんなにイラついてたんだ?」

「落ち着いたみたいだな。」


 【スキルコンバート】によって【憤怒】の影響から抜け出した多田野は落ち着きを取り戻していた。

 先程までと打って変わって、冷静に状況判断を出来るまでに回復したのだった。

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