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【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

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124 可笑しなモンスターハウス

「タケシ君!!そいつはフロアボスのゴブリンバロンだ!!」

「名前長い!!」


 多田野は冷静になろうと試みるも、そのニタニタと笑う顔を見ると怒りが込み上げてきてしまう。

 怒れば怒るほど周りが見えなくなり、回避が遅れるという悪循環が続いている。

 ケントはそんな多田野をフォローすべく、多田野の周辺に【結界】を張りまくる。

 そのおかげか、多田野の被弾率は思いのほか多くは無かった。

 致命傷になる傷も少なく、それがかえって多田野を苛立たせる。


 ケントはこのモンスターハウスの攻撃についてを考えていた。

 最初から小ばかにしたような演出。

 バロンの登場。

 バロンの態度。

 油断したところにおそらくアサシン系の攻撃。


 そして行き着いた答えが〝精神攻撃〟だ。

 ケントは若干だが怒り耐性のスキルを保持していたので、何とか冷静を保っていられた。

 しかし、多田野は耐性が無い為にその罠に飲み込まれていく。


 なおも踊り場付近ではバロンが多田野を煽り続けていた。


「おやおや~?あなた方はお仲間ではなかったのですか?そこのあなたは傷だらけですが……。あちらの方は無傷のようですよ?なぜでしょうね?」


 バロンは身振り手振り大げさに語りだす。

 その一語一句が多田野を苛立たせていく。

 普段の多田野だったら間違いなく切り抜けられるような揺さぶり。

 しかし、冷静さを欠いた多田野にとっては間違いなく有効な対応だ。


 アサシン系からの容赦のない攻撃。

 ひたすら回避し続ける状況。

 多田野は隙あらば、バロンに一撃淹れてやろうと、常に銃口をバロンに向けていた。

 しかしいざ攻撃を仕掛けようとしたとき、必ず邪魔されてしまう。

 それにより更なる苛立ちに陥っていたのだ。


 ケントは一つ息を吐いて、気合を入れなおした。

 これ以上は多田野の成長に繋がらないと判断したのだ。


 ケントの雰囲気が変わったことに気が付いたバロンは、一瞬表情を曇らせる。

 しかし、なかなかの役者であった。

 その表情を悟らせないように、またもオーバーに演技をして見せた。

 どこまでも多田野を標的にするということだろうか。


 そしてバロンがケントに視線を戻した時だった。


 そこには誰もいなかったのだ……


 突如として起こった不可解な状況に、バロンは慌てふためいた。

 周囲を確認するも、ケントの姿を見付ける事は出来なかったのだ。


 その間にも次々と倒される包囲していたゴブリンたち……

 倒されると同時に姿を現し、その手には1対の短刀が握りしめられていた。


 多田野に対する攻撃の数も徐々に減りだし、バロンが慌てた事もあり多田野は冷静さを取り戻していった。




 その数分後、ドサリと倒れ落ちたアサシンの前に、ケントが姿を現したのだった。

 その光景に意味が分からないと言わんばかりの困惑の表情を浮かべるバロンに、ケントはその剣の切っ先を向ける。


 バロンはあまりの出来事に何も出来なかった。

 すでにその表情に余裕など在りはしなかった。


「タケシ君。今回の事は要反省だな。」

「はい……」


 完全に冷静さを取り戻した多田野は、ケントの言葉に項垂れるしかなかった。

 せっかく多田野自身も索敵系・ハイド系のスキルを習得していたのに、最初の出来事に気を取られ過ぎて、敵の罠にまんまと嵌まってしまったからだ。

 そしてその後リカバリーすら出来ずに、相手の術中にどっぷりと嵌まってしまった。


「き、貴様!!よくも私の可愛い部下を!!えぇ~い。こうなれば直々にこの私が引導を渡してやろうではないか!!」


 バロンがスラリと抜いた剣はとても見事なものだった。

 剣自体の装飾に、鞘の作り、そして何よりも見た目重視の低性能なお粗末なに見えた。


 バロンの切っ先がガタガタと揺れる。

 ケントの切っ先はすっとバロンを狙う。

 これだけで両者の力量の違いが分かるというものだ。


 バロンは掛け声一つ駆け出してきた。

 どかどか・バタバタと走る姿は、どこぞの小説内の貴族のようだった。


「これが避けられるか!!必殺ボルケーノスラッシュ!!」


 ケントはその良く分からない言葉を発しながら走りくるバロンに目を向ける。

 振りかぶった剣を、技名と共に振り下ろす。

 何と言う事の無い、特筆すべき事すら見当たらないただの振り下ろしだ。

 しかし、ケントは警戒を怠らなかった。

 バロンの一瞬ニヤリとした顔を見逃さなかったからだ。


 振り下ろされた剣は地面につくや否や、ゴオッ!!っという音と共にいきなり地面から炎が噴き出したのだ。

 自身の目の前に【結界】を構築していたケントにとって特に問題となる攻撃ではなかった。

 逆にバロンからすれば、千載一遇のチャンスを逃したことに他ならない。

 ケントは無防備になったバロンの首を、そのまま斬り飛ばしたのだった。


 斬撃の勢いそのまま何度もバウンドし、ゴロゴロと床を転がるバロンの首はいまだに信じられないという表情を浮かべて、絶命していた。


 ケントは周辺の索敵で問題無いことを把握し残身を解いた。

 ケントに纏わり付く殺気と呼ぶのもおこがましい気配が、一瞬にして霧散したのだった。




「ケントさん、すみません。おれ……」

「今回は俺にも問題があったから反省は簡単にしようか。まずは第21層がしょっぱなからモンスターハウスとは聞いていなかったな。」


 多田野もそれについて疑問に思っていた。

 多田野が目を通した資料は、国が厳重に管理しているものだ。

 民間に出回っている情報とは精度が違う。

 その資料にすら載っていないということは、またもや【イレギュラー】ダンジョンなのかと疑ってしまう。


「まさかと思いますが、ダンジョンの変更とかですかね?」

「それもあるけど……」


 多田野の質問はもっともだ。

 ダンジョンが資料通りでは無い時は決まって再編がなされるのだ。

 ただ、ケントは明確には答えることはしなかった。

 何か別の事を考えているようだ。


 これ以上話し合っても仕方がないので第22層へ降りる階段を探し出そうと動いた時だった。


 どこかでパリンっと何かがひび割れる音が聞こえてきた。

 その音の出処は一か所かと思ったが、徐々に範囲を広げていった。


 パリンパリンとなおも響く何かが割れる音。

 ケントはその音の正体に気が付いていた。


「タケシ君。これから起こるであろう事象に気をしっかり持って。」


 多田野は「え?」っという表情を浮かべたが、それがすぐ別な顔に変わっていた。


「うわぁ~~~~~~!!」


 唐突に多田野の足元がひび割れたのだ。

 そしてパリンと割れはじけるような音が聞こえた。

 先が見えないほど真っ暗闇になっており、多田野は慌てて近場のものを掴んだのだった。


「おち、おち、おち~~~~~~~~~~~ない?」


 いきなり足元がひび割れ、崩れ落ちたように見えた事から地面が無くなったと錯覚していた多田野は慌てふためくが、普通に真っ黒な地面がそこにあったのだ。

 しゃがみこんでぺたぺたと触ってみても、普通の岩盤の地面だった。

 

「これは一体……」


 多田野が疑問に思い呟くと、ケントはくすくすと笑いを堪えていた。

 それを見た多田野は、ケントの言った言葉を思い出し、顔を真っ赤にしていた。

 つまり、先ほどまで見ていた光景はすべて幻影だったのだ。

 バロンによる大規模な幻影空間に、最初の一瞬で飲み込まれていたのが事の真相だった。

 ケントは最初のパリンと割れる音と共に、空気の流れが変わったことを感じ取っていた。

 そしてパリンパリンと割れる音が、自身がいつも使う【結界】の砕ける音にそっくりだったのだ。

 その二つを鑑みて、ここは【結界】領域の中にある幻影空間であることを推測していたのだ。

 そして辺り一面が真っ黒な理由は、その幻影に他のものが映り込まないようにする一種の暗幕の役割をはたしていた様だ。


「今回はいい勉強になったね。特にタケシ君の怒り耐性の無さがかなり尾を引いてしまった感じだね。」


 ケントの総括に返す言葉の無い多田野。

 これは間違いなく最初の一手を間違えたことが原因であった。

 そして、このバロンは対策さえ分かっていれば問題無く倒せるくらいの強さしか持ち合わせていなかった。


「あ、ケントさんあれ……」


 多田野の指し示す方に一本の剣が地面に突き刺さっていた。

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