表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/161

123 第21層

「ケントさん時間ですよ?ケントさん?」


 ケントのテントへ野営交代の為やってきた多田野は、ケントの返事が無い事を不思議に思った。

 いつもなら直ぐに反応が有るはずだった。

 しかし今回は全く反応は無い。

 不安に駆られた多田野は、慌ててケントのテントを開いた。


 そこで多田野が目にしたものは……

 ケントが座禅を組んでいたのだ。


「ケントさん……寝てないんですか?」

「ん?あぁ、時間か……。ごめん深く入り過ぎてたみたいだね。」


 寝てないはずのケントだったが、眠さは全くと言って良い程なかった。

 むしろ清々しいとさえ思えた。

 外ではパチリパチリと、多田野の起こした火が爆ぜている。


「ごめん、すぐ行くから少し待って。」

「コーヒー淹れておきますね。」


 そう言うと多田野はテントの外に移動して、お湯を沸かし始めた。

 ケントも自身の装備品を装着し、テントの外に出る。

 ダンジョン内、しかもボス部屋だというのに、とてものんびりとした空気が辺りに充満していた。


「どうぞ。」


 多田野は淹れたてのコーヒーをケントへと手渡す。

 多田野から受け取ったカップからは、コーヒーの爽やかで香ばしい香りが感じられる。

 その暖かな湯気を感じながら一啜り。

 口に広がる薄っすらと苦みがかった味わいに一息つくケントだった。


「では俺も一回休みます。何かあったら起こしてくださいね。」

「あぁ、わかった。タケシ君、コーヒーありがとう。」


 多田野は自身のテントへともぐりこんだ。

 ものの数分で寝息が聞こえてきたところを見ると、ボス戦での戦闘でそれなりに疲れはしていたようだ。

 それからも何事もなく、ボス部屋での一泊は終了したのだった。




「じゃあ、これから第21層に入るわけだけど、何か情報は仕入れてある?」

「第21層はゴブリン系の上位種が出てくるようですね。おそらくエリート系かと思います。」


 多田野の示した名前に、ケントは良く分かっていなかった。

 ゴブリン、ホブゴブリン、ハイゴブリンときてエリートゴブリン。

 いったい誰が名前を付けているか不思議に思っていた。

 むしろ、絶対に適当につけただろ?と思わざるを得ない。


「エリートかぁ。さぞや強いんだろうな……」

「すみません、俺も資料のみで実物は初めてですから。」


 ケントはそりゃそうかと感じ、朝食の準備を続けていく。

 実際には資料通りにはいかない場合が多い為、参考程度にしているに過ぎないからだ。

 多田野もケントと一緒に探索を進める事で、その事を痛いほど理解していた。

 情報に惑わされて、手痛いミスを犯してしまっているからだ。


「じゃあ、早速ご対面と行きましょうかな。」


 ケントは済ませた朝食の後片付けを手早く終わらせて、出発の準備に取り掛かった。

 多田野も同じく片付けていく。


 そして二人は第21層へと足を踏み入れたのだ。

 



「今回は草原じゃないんだな。」

「そうみたいですね。」


 二人の目の前に広がっていたのは、室内だった。

 むしろ、屋敷……いや、城といっても過言ではないような、内装が見受けられた。

 立派な絵画や花瓶。

 天井には豪華なシャンデリアが見える。

 床は磨かれた石材で覆われており、中央の大階段に向かって赤い毛足の長い絨毯が敷かれている。

 二人が後ろを振り向くと、そこには大きな扉が見えた。


 なぜ二人が戸惑っているかというと、第21層の階段を降り切った時のことだ。

 突然目の前が真っ白になり、気が付いたらここにいたからだ。

 おそらくワープでもさせられてしまったのかと思ったが、後ろの大きな扉を開けると上に伸びるいつもの階段が見えた。

 つまり目の前が真っ白になったのはダンジョンの演出に他ならなかったのだ。

 しかも無意味な……

 お陰で二人は戸惑う羽目になってしまった。


「何だったんでしょう?」

「わからん……」


 多田野はあまりの無意味さに、戦気を失ってしまった。

 それがこのダンジョンが仕掛けた罠だったとしても。


 二人がゆっくりと一歩歩み出ると、突然周囲から明かりが照らされる。

 目の前には大階段があり、その中腹に一人の人物が立っていた。

 その姿は中世の貴族を思わせるいでたちだ。


「グーギョギャ、ガギャギャギギギャ!!」


 どうやらその人物はモンスターのようだった。

 どこか芝居がかりながらも何かを言っているが、二人には全く解らなかった。

 なおも続く芝居。

 大階段をゆっくりと下りながら身振り手振りをしている。

 しばらく話続けていると、ケントたちに通じていない事に気が付き何やら今一度登場した場所へ戻っていった。


「ギャ~、gya~、あ~、あ~、あ~。うんっ。これで通じるか?」


 突如人間の言葉を使い始めた事に面食らった二人は、警戒度を上げる。

 しかし一度下がった戦気をMAXまで上げるにはいたらなかった。


 モンスターは仕切り直しとばかりに改めて話し始めた。


「ようこそ、我が屋敷へ!!」


 そういうと大きく手を振り上げ、一礼をするモンスター。

 やはりどこか芝居がかっていて、不愉快極まりなかった。


「お前は何だ!!」


 あまりの不快感に声を荒げ問いただす多田野。

 モンスターは余裕であるように優雅に答える。

 その表情はどこか見下したように、ニヤついていた。

 見た目はまさにゴブリンだった。

 しかし、今までのゴブリンに比べ人に近づいている。

 身長も体格もまさにそれだ。

 一点完全に違うのは、肌の色が緑色だということだ。


「何者と?何者と問うたか?なるほどなるほど。これだから学の無い無法者は嫌いなのです。いいですか?我々はエリート!!そう!!選ばれしエリート階級なのです!!」


 ケントも多田野も、モンスターの言っている意味が解らなかった。

 そしてエリートゴブリンの名前の由来が分かった。

 完全にこれから来ているということを。

 そしてそれは侮蔑を含む名前であることを。


カチャリ


 突如モンスターの後頭部に当てられた砲身。

 それは多田野が作り出した魔砲だ。


「で?お前たちは何だ?」


 多田野は冷静さを欠いている様にも見えた。

 本来であれば、そのモンスター1匹とは限らないために周囲の警戒をしなくてはいけない。

 しかし、多田野はそのモンスター1匹に注意を奪われていた。


 すると次の瞬間……


ガキン!!


 突如として響き渡る金属音。

 多田野の左首に迫ろうとする短刀が、その姿を姿を現した。

 すんでのところで気が付いたケントは、多田野の左側に【結界】を配置。

 上手い事機能してくれたようだ。


「おやおや?どうかされましたかな?」


 多田野はわざとらしく問いかけてくるモンスターを睨み付ける。

 それでもニタニタとした笑いをやめないモンスターにキレた多田野は、その引き金を引こうとした。


ガキン!!


 またしても襲い来る短刀。

 いつどこから襲ってきているのかが分からなかった。

 分かるのは踊り場のモンスターに攻撃を仕掛けようとしたときに、何かが襲ってきているという事だ。

 ケントはここでやっと自分のミスに気が付いた。

 ここに至るまで全く索敵行為をしていなかった事に。

 この空間に入ってから怪しさは有った。

 むしろ怪しすぎた。

 だからこそ目の前の事象に捕らわれ過ぎて、すっかり忘れさっていたのだ。


 ケントは慌てて周囲の気配や魔力を探る。

 すると至る所にモンスターの気配がしてきたのだ。

 そう、第20層からの階段を降りて直ぐにこのモンスターハウスが設置されていたのだ。


「タケシ君落ち着くんだ!!今ここは罠の真っただ中だ!!」


 ケントの声に一瞬訳が分からなかった多田野は、すぐに理解した。

 だが既に行動が遅れており、多田野の周囲にはいくつもの短刀が迫りくる。

 多田野はギリギリで回避を試みるも、いくつもの切り傷を負うことになってしまった。


「おやおや?どうされたのです?服がボロボロではないですか。」


 目の前のモンスターはニタニタと笑い出す。

 ケントは怒りをどうにか押さえつけ、モンスターを改めて鑑定して気が付いた。

 まさかのフロアボスだったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=791510211&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ