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【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

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121 強くなるための決断

「タケシ君そこで一つ提案があるんだけど良いかな?」

「何です?」


 ケントからの提案と聞き、多田野は佇まいを直した。

 ケントも多田野の行動に少し笑いそうになり、そこまで畏まらなくていいのにと思っていた。


「ココのダンジョンをどう思う?俺的にはレベル上げに最適だと思うんだけど?」


 ケントの質問に多田野はいまいち要領を得なかった。

 その質問の答えは多田野としても肯定だ。

 上層部では比較的弱いゴブリン種が階を進めるごとにその数を増やしていく。

 更に第11層以降はその上位種となり、棲み分けがはっきりしていた。

 自身のレベル帯を考えながら進める事が容易だったからだ。

 その為、多田野はケントに対し静かに頭を縦に振って肯定の意志を示した。

 多田野の返答をケントも理解し、話を進める。


「じゃあ、ここのダンジョンでレベル上げをしていきたいと思う。今俺たちが居るのは20階層。おそらくこの先に進むには少し力不足に思える。パーティーメンバーが他に居るならたぶん進めるだろうけど、俺たちだけでは無理がありそうだ。」


 今回のフロアボスと戦って、多田野はケントの言葉を痛いほどに理解出来ていた。

 ただ、それだとケントの目的に遅れが生じる事になる。

 さすがにそれは避けたいと考えていた。

 しかし、ケントは既に決めているようで、その目が悠然と語っていた。


「正直な話、今のまま進んだとしてもおそらく次の第20層台でストップする可能性が高いかな。俺一人なら【レベルドレイン】で何とでもなるんだけど、2人となるとさすがに厳しい。二人ともハイド系で隠れるって手段で進んだとしても、ボス戦で苦戦が必至だ。」


 ケントは自分自身の実力の無さを痛感していた。

 【レベルドレイン】を使わないと攻略が出来ないと言っているようなものだからだ。

 【レベルドレイン】とて万能ではない。

 いつレジストされるか分からないからだ。

 それに、動く相手には物凄く使いにくい。

 しかもハイド系で隠れたとしても、【レベルドレイン】を発動した段階で見つかる可能性が高い。

 だからこその多田野なのだ。

 多田野ならピンポイントの攻撃から面制圧、果ては極地制圧まで可能だ。

 自身の問題点を一気に解消してくれるパートナーと考えていた。


「そこでだ、今あるスキルを強化していきたいと思う。俺のレベルが現状70代まで来たから、全スキルをそこまで上げたい。タケシ君のスキルレベルも同様だね。」

「あれ?でも問題も有りませんか?確かスキルクリエーターで得たスキルって習得レベル以下になると使用不可になるんですよね?前回俺がそれでかなり迷惑かけてしまいましたから。」


 多田野は前回のレベルアップハイによって、ケントへ迷惑をかけてしまったことを思い出した。

 特にケントに至っては持っているスキルのほとんどがそれの対象になってしまう。

 そう考えるとかなり難しいのではと思ってしまう。


「おそらくレベルダウンペナルティーを気にしてるんだと思うけど、その辺は大丈夫だよ。それ以下にするつもりもないし。それに今持ってるスキルはほとんど40以下の習得レベルだからね。レベルを41以上に保てば問題無いよ。最悪、【レベルドレイン】は対象外だからそれで一気にレベルを上げればいいし。むしろその方が早かったりもする。」


 それを聞いた多田野は、ケントの異常性を再認識してしまった。

 むしろ今二人の間で交わされている話は常軌を逸している話なのだから。

 レベルとは人の経験……

 経験とはその人の命そのものなのだから。

 それを問題無いと生贄に捧げていく。

 二人の思考は既に普通とはかけ離れたものになっていた。




 それからの二人の行動は迅速だった。

 第20層のボス部屋のキャンプ地を撤収し、一度地上へと戻った。

 これから長期間潜る事を考えて、装備品のメンテナンスや食料等の準備を行っていく。

 その辺は慣れた物で、集められるだけの物資を根こそぎ集めていった。

 ついでにと、第29駐留部隊駐屯地へ戻った際に探索者証をギルドへ渡した。

 どこで手に入れたか聞かれたので【ゴブリンダンジョン】の第20層のボス部屋のキャンプ地で拾ったと伝えた。

 ただ、自分たちが襲われた事は面倒になるのが分かり切っていたので伏せたが。


 それから二日かけて装備品のメンテナンスを行う。

 多田野の伝手で自衛隊拠点の作業室の一室を借りる事が出来た。

 二人はそれぞれの作業台に向かって黙々と作業をしていた。

 多田野の前には自身のメインウェポンである【P220自動式9mm拳銃】が2丁並んでいる。

 普通の銃ではなくなり魔道具と化したその武器は、通常の拳銃とは異なる部品が多数使用されている。

 それを一つ一つ慎重に確認し、くたびれている部品については新しく新造したりしていた。

 ケントは自身では簡単なメンテナンスしか出来無いが、それでも愛着のある装備達であるために念入りに磨き上げていた。

 静かな作業室にカチャカチャと響く作業音。

 二人がどれだけ真剣に作業しているかが分かるというものだ。


 そして全ての準備が完了してところで、スキルについて話し合った。

 多田野はやはりこのままハイド系と戦闘制圧力の強化を進めていきたいらしい。

 先日の冒険者との一戦で、自身の戦闘系技能とハイド系の相性の良さを実感したらしく、もともとの制圧力よりも優先していきたいとケントに語った。

 ケントはもともとソロで戦うことを前提としてスキルを構成してきたが、多田野との戦闘を考えると、若干の無駄が産まれてくる。

 制圧力については多田野に任せた方が絶対に有用だった。

 なのでケントは面的制圧力を切り捨てて、一点突破を目指したスキル構成にすることにした。

 ただし、多田野は魔法系が苦手としているので、その辺はケントが補うと言う事で話が付いた。




 それから二人は【ゴブリンダンジョン】をメイン拠点にして潜り続けた。

 たまに自衛隊員が二人の安否確認に訪れるものの、結果として問題無しと戻っていった。

 それだけ二人の戦闘力は隔絶していたのだ。

 第10層のボス部屋もほとんど苦労することなく戦うことが出来ていた。

 あれほど苦労した第20層のボスも同様だ。

 二人からすればどちらも自分の部屋と変わらない感覚で過ごしていた。


 そして、この二つの階層のボス部屋を行き来する理由も存在していた。

 多田野の装備だ。

 可能性ではあるが、ハイド系の装備品が他に手に入るかもと淡い期待を持っていたのだ。

 それは見事に的中し、結果として多田野は全力で中二病と化してしまった。

 多田野としては不本意では有ったが、その装備の有用性に文句も言えなかった。

 ただし、最近は慣れてきたのか言動にも若干の香ばしさが見え隠れする時が有るが、ケントは全て華麗にスルーしていたのだった。


 そして新たに手に入れた装備がこれだ。


——————


必滅の眼帯:左目を覆う様に装着する眼帯。装着すると左目が隠れるが、見えていない訳では無い。スキル【ホークアイ】【夜目】【遠視】が自動付与される。


黒衣:見た目通り真っ黒な上下セットの衣服。見た目に反して【打撃耐性】【斬撃耐性】【魔法耐性】が付与されている。


死神の皮鎧:赤黒く色づいた皮鎧。スキル【透明化】が付与されている。


——————


「ケントさん……。俺はどこへ行くんでしょうね……。」


 遠い目をした多田野はボソリとケントへ向けて呟いていた。

 ケントはその言葉に明確に答えるすべはなかった。

 いや、答える事が出来なかった。


 多田野が身に着けた新たな戦闘スタイルは文字通り〝死神〟である。




 後に、多田野の戦闘を見た自衛隊員が多田野に付けた二つ名は〝黒衣の死神〟であったが、多田野は断固として拒否したのは別の話。

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