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【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

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112 ゴブリンダンジョン再潜入

「こいつはまた厄介なアイテムが出て来たもんだな。いったいこいつをどうする気なんだ?」


 加賀谷からの問いにケントは正直困っていた。

 オークションにかけるには危険すぎるのだ。

 武器性能的にはおそらく今発見されている武器の中でも上位に食い込むせいのだった。

 しかし、それに付随するバッドステータスが問題だった。


バッドステータス:精神汚染


 殺戮衝動を抑えられなくなるなんて誰が使うんだよって話だ。

 まず間違いなく売れない。

 売れたところで、買い手が発狂したら後味が悪すぎる。


 ケントがどうすればいいかと悩んでいると、加賀谷が助け舟を用意してくれた。


「自衛隊の研究室にこいつを送ってもいいかい?それなりの買い取り額は提示させてもらうから。」


 ケントとしては渡りに船だった。

 自分で持っていてもインベントリに眠る肥やし以外何物でもなかったからだ。

 そして当面の活動資金にもなるので大助かりである。


「わかりました。ではそちらで引き取りをお願いします。くれぐれも厳重に保管してください。先程の様に耐性が低い人は一瞬で魅入られますから。」

「肝に銘じておく……。さっきのは本当に驚いたよ。」


 ケントの忠告にごくりと唾を飲み込んだ加賀谷の脳裏には、言い知れぬ不安がよぎっていた。

 もしこれが誰かの手に渡って暴走したら……

 それこそ大問題だからだ。

 加賀谷はすぐに自分のインベントリに仕舞い、誰にも触れられないようにしたのだった。

 もちろん加賀谷自身も触れるのを最小限度に抑えて作業にあっていた。


「あ、そんなに心配はいりませんよ。手で持っていない限りは精神汚染されないようですから。」


 ケントは加賀谷の不安を少しでも取り除こうとしていた。

 せっかく見つけた引き取り手を逃してなるものかとの思いがあったからだ。


「ではこれで聞き取りは完了となります。」

「わかりました。じゃあ、これから改めてダンジョンに入りますがよろしいですか?」


 ケントは、先程まで大変な目に遭ったダンジョンに、すぐ戻ろうと考えていた。

 制圧部隊が普通に入れるならば問題ないだろうとの考えからだ。

 その発言に驚きを見せたのが多田野だった。

 先程まで大変な目に遭ったのだから、今日はこのまま休みたい気持ちでいっぱいだったのだ。

 しかし、ケントが行く気でいることを知ると、休息を諦めたのか肩を落としていた。


「では、多田野三等陸曹。彼の護衛の任頼んだよ。」

「は!!」


 ビシッと決まった敬礼に、ケントは『あ、こうやってみるとタケシ君も自衛官なんだよな』って思ってしまったのだった。




 テントを後にしたケントは、再度荷物の確認を行った。

 最初のダンジョンアタックで消耗したものはさほどなかったが、飲料などの食料品が少し減っていたので、補給を考えなくてはならなかった。

 ここにも一応そう言った売店らしきものがあったため、二人は立ち寄ることにしたのだった。

 とはいうものの、数はそう多くなく、すぐに補給作業は終了したのだった。


「本当に行くんですね……」

「ん?そうだね。無駄に時間を使ったし、少し急ぎ目で行こうか。」


 更に墓穴を掘った形になった多田野は、更に肩を落とし、深いため息をついていた。

 それを横目に見ていたケントはクスリと笑い、多田野の肩をポンと叩いてダンジョンへと向かった歩き始めた。

 多田野は更に肩を落とし、とぼとぼと付いて行くのであった。



 ダンジョン入り口につくと先程と同じ【トランスゲート】が鎮座していた。

 正直多田野は警戒を強めていた。

 先程と同じように飛ばされるんではないかと。

 さすがにそんなことはないだろうと、ケントは足早に【トランスゲート】へ近づいていく。

 ケントの行動に慌てた多田野は、その足を早めて追いすがった。

 ケントが【トランスゲート】に触れると、ボワンっという音と共に周辺が一瞬歪む。

 多田野は先程の転送先を警戒し、周辺警戒を怠らないよう周囲を見回していた。

 周囲の歪みが落ち着いたとこ、二人はよく見る洞窟型ダンジョンが目についた。

 側には【トランスゲート】もあり、ようやく多田野は普通のダンジョンであることに安堵したようだった。


「タケシ君。【イレギュラーダンジョン】じゃないからって気を抜くなよ?場合によっては【イレギュラー】だって存在するんだからさ。」


 ケントは気を抜きかけた多田野を心配し、声をかける。

 多田野もその言葉に我に返り、再度周辺の警戒を開始したようだ。

 多田野の変わりようにケントはクスリと笑みをこぼしていた。

 なんだか手のかかる弟を相手している気分にでもなったようだった。


「さあ行こうか。」


 ケントはそう言うと、勢いよく地面を蹴り走り出した。

 【イレギュラーダンジョン】のせいで半日ほど計画が遅れてしまった。

 その遅れを取り戻すかの様に出会うモンスターを路傍の石を蹴飛ばすかの如く蹴散らして行く。

 多田野はその背中をただただ追いかけていくことしかできなかった。

 多田野がスキル【魔銃作成】で砲身を作り出すよりも、ケントが屠る方が圧倒的に早かったのだ。

 多田野は多田野で自身のスキルの展開速度に自信を持っていた。

 しかし、それを上回る速度の殲滅力にたが唖然とするばかりであった。




 第1層2層3層と事も無げに進むケントに、「これ護衛っているの?」と疑念を持ち始めた多田野だった。

 まさか初攻略で2時間もかからずに第10層に来るとは思ってもいなかったのである。

 おそらく半日で第10層に到達。

 ボス戦をこなし、キャンプ地にすると予測していたのだからだ。

 蓋を開けてみれば、予定よりもかなり早い段階で第10層のボス部屋の前に二人は立っていたのだった。


「け、ケントさん……。は、早すぎますよ……」


 ついてくるのがやっとで息も絶え絶えな多田野は、ようやく足を止めたケントに追いつくことができた。

 ケントとしては面倒だと思ったのか、倒したモンスターはそのまま放置してきたのだ。

 そのためこの速度での移動となっていたのだった。


「タケシ君は少し鍛え方が足りないかな?探索者になってステータスに縛られると、疎かになるよ。それが必ず自分の足を引っ張ることになる。ステータスだけが全てじゃないんだ。」


 ケントは多田野に対し、少しだけ注意を促した。

 ケントもまた自分のスキルによるステータス上昇に酔っていた時期があった。

 レベルを上げスキルを増やし、またレベルを上げる。

 次第に増えていくスキルボーナスポイントを振り分けていく。

 強くなる自分に万能感さえ感じていたのだ。

 しかし、それだけではどうしても解決できないことがたくさんあった。

 使いこなせないスキル・ステータスは意味など無かったからだ。

 ここへ来る前のダンジョン制覇の際にいろいろ考えたケントは、ステータスに頼り過ぎない戦闘を模索し始めていた。

 今はまだ確立できていないが、その断片は見え始めていた。

 それが己を鍛えることだ。

 自身の身体で出来ることを正確に把握する。

 自身の身体で出来ない事はどう頑張ったってできないのだからと。


 自分の過去を思い出し、苦笑いを浮かべたケントは、多田野の息が整うのを待って第10層のボス部屋の扉をゆっくりと開けた。


ゴギギギギ


 重く渋い音が鳴り響く。

 ボス部屋は薄暗く、広さもさほど広いとは言えないサイズ感だった。

 イメージ的にはバスケットコート2面分くらいしかないように感じられた。

 その部屋の中央に、徐々に黒い靄が集まり出してきた。

 ぐるぐると渦を巻き圧縮され、一つの塊となった。

 そう、羽化でもするかのようにそれは現れた。


 一匹の羽の生えたゴブリンが……

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