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【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

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110 ケントの機密事項

「すみません、さすがに情報過多すぎて……」

「いえ、俺の方こそいきなりこんな話をしてしまって、申し訳ない。」


 ケントは今だうずくまっている多田野を見下ろし、申し訳なさそうにしている。

 その間にもモンスターが来るかもしれないと、警戒は続けているが、その警戒網には今だヒットはしていない。

 さっきのゴブリンが異常だったのかと思案するも、明確な答えは出てこなかった。


「中村さん……。合流する前に神宮寺准尉からそれなりに情報はもらっていたんですが、この話は聞いていませんでした。モンスターを生命ととらえることすらしてませんでした。それがショックで……」


 多田野の言葉はほとんどの探索者に当てはまることだった。

 政府として明言を避け続けているのだから。

 そのせいか、モンスターはあくまでも怪物であり、【生命】ではないとする風潮すらできつつあったのだ。

 しかも、スタンピートにより家族を奪われた人々はその傾向が顕著だった。

 そして政府もまたそれを正そうとはしなかった。

 むしろそうなる様に誘導した節すらあるのだ。


 ケントはその流れを良しとはしていない。

 あくまでもこれは【生物】同士の生存競争なのだから。

 それを知ることができるのは【神の権能】を有する者だけのようだった。

 正直ケントは悩んでいた。

 多田野とこれから先も組むと考えた場合、秘密をばらさないわけにはいかないからだ。

 しかしそれがバレた場合、おそらく多田野は報告を行わなくてはならなくなるだろう。

 それを考えると、二の足を踏んでしまうのだ。


「まぁ、そこまで深刻にならなくてもいいですよ。あくまで俺が異常なだけですから。それとごめん。タケシ君の分まで経験値を貰ってしまったみたいだね。」


 ケントは申し訳なさげに頭をかいていた。

 そんな姿を見た多田野は、ケントがあまりにも普通なので、なんだか毒気が抜かれた気分だった。


「それについては大丈夫です。気にしないでください。それよりもこの後どうしますか?今みたいな感じのモンスターだと、この先さすがに問題が発生してしまいますよ。確実に限界が来ます。俺も今のでSPが5割近く持っていかれましたから。」


 多田野が現状を分析すると、ケントもそれに肯定の意志を示した。

 おそらく、このまま進むと確実に補給物資が不足してしまう。

 そうなればここで命が潰えることとなるのだ。


「大丈夫、そんなに心配はいらないよ。」

「え?」


 多田野はケントの言っている意味が分からなかった。

 ただ、ケントのリラックスした雰囲気を見て、何かに気が付いたことだけは理解することができた。


「さっきのゴブリン……レッドキャップなんだけど、このフロアのボスだったんだよね。殺す前に鑑定したから間違いないよ。」


 ケントは事も無げに答えるが、多田野は驚きを隠せずにいた。

 まさか二人でフロアボスを倒すとは思っていなかったのだ。


「そうだ、そろそろ……。来たね。ドロップアイテムだ。」


 ケントが指差す方を多田野が見ると、魔石がひとつ転がっていた。

 そしてその後からまた一つアイテムが落ちていた。

 それは一組の短剣。

 そう、先ほどレッドキャップが使っていた武器だった。

 その短剣は赤々と燃え上がるような刀身をしており、熱気のようなモノを感じる。

 鞘は武骨ながらも丁寧に作りこまれた、ある意味芸術品といっても差し支えない出来栄えに見えた。


 ふらりふらりとした足取りで、短剣に近づいていく多田野。

 多田野はその剣に魅入られていた。

 異変に気が付いたケントもすぐに駆け寄ってきた。

 多田野は恍惚とした表情でその短剣に手を伸ばした。


「待つんだ!!」


 多田野はケントの声に一瞬ビクリとして我に返った。

 あと少し遅ければ多田野はその剣を手にしていたはずだ。


「鑑定するからいったん離れて。」


 そう言うとケントは【鑑定】を発動した。


——————


墜堕の短刀【月華げっか日華ひばな】:その美しい見た目とは裏腹に、触れたものを魅了し、徐々に精神汚染を起こしていく。最終的には短刀の意志により殺戮を行うようになる。


——————


 ケントが鑑定内容を多田野に告げると、多田野は顔を青くしていた。

 ケントが止めなければ、多田野はただでは済まなかったはずであった。


「でもなんで分かったんですか?鑑定する前に俺を止めましたよね?」

「それはタケシ君が異常な空気を纏っていたからだよ。あからさまに誘惑されているって感じだったからね。」


 だが困ったことが発生した。

 こんな呪われた装備など受け取るわけにはいかなかったのだ。

 インベントリにしまうにしても一度手に触れる必要がある。

 どうしたものかと多田野が困っていると、ケントはそのまま手に持って振り回していた。


「ん~。あまり俺の好みの重さと長さじゃないな。」

「なんでもっちゃってるんですか?!」


 多田野は慌ててケントに詰め寄った。

 ケントもそこまで驚かれるとは思わず、あまりの多田野の圧に根負けし、

種明かしをしたのだ。


「簡単な話、俺は大して効果が無いってだけの話だよ。」


 ケントの態度に納得がいかない多田野は、その秘密を暴こうと必死になっていた。

 ケントもさすがに困り果ててしまい、多田野の追及をどうにかこうにか躱していったのだった。




 しばらく押し問答が続き、多田野は我に返った。

 さすがにやり過ぎたと反省し、しきりに頭を下げていた。

 ケントもそれほど怒っていたわけではないので、多田野の謝罪を受け入れていた。


「さすがにこれっきりにしてくださいね。」

「すみません。」


 多田野は借りて来た猫の子の様にシュンとしてしまった。

 さすがにこのままでは戦闘に支障が出ると判断したケントは、多田野の頭を一度ぽかりと叩いたのだ。

 その行動の意味が分からなかった多田野は目に?を浮かべキョトンとしてしまった。


「じゃあこれでチャラです。いいですね?」


 ケントの言葉を理解した多田野は、もう一度頭を下げると少しすっきりした表情になっていた。

 本当に反省をしていたのだろうと、ケントは判断したのだった。


 ボスが消えてしばらくすると、奥の方からずるずると何かが動く音が聞こえて来た。

 その音の方へ二人は向かって歩き始めた。

 近づくにつれて、正面から漏れ出る光に気が付いた。

 さらに近づくにつれ、その光の正体がわかったのである。

 どうやら先程の音は、壁の隠し扉が開く音だったようだ。


 【移動用ゲートポイント】

 正直、ダンジョン内でゲートポイントが設置されている場所なんて限られていた。

 出入り口への一方通行。

 またはさらなる転移。


 こればかりは試してみない事には判別できなかった。


「とりあえず休憩を挟んでこの先へ行ってみましょう。」


 ケントは多田野の消費を考えて、休息を提案した。

 多田野もさすがに疲れていたのか、ドカリと地面に腰を下ろした。

 さすがにケントもその行動に笑ってしまい、先ほどまでの微妙な空気感はどこかへ行ってしまった。


「そうだケントさん。ケントさんのステータス値ってどのくらいなんですか?先ほどの戦闘といい、訓練の時といい、移動速度が尋常じゃなかったですよ?俺もある程度高速移動には目が慣れてるはずでしたけど、途中から追えなくなるんですから。意味が分からないです。」


 多田野は先程の戦闘を振り返り、今まで疑問に思っていたことを口にした。

 何となく聞きそびれていたが、さすがに今回は聞くしかなかったようだ。

 ケントは少し考えると、答えづらそうに苦笑いを浮かべていた。


「それなんだけどね……。ん~ん。どうしたものかな。うん、このダンジョンを攻略したときにわかると思うよ。」


 なんだかんだで話をはぐらかしていくケントに、多田野も少し困ってしまった。

 どうやらこれ以上は聞いてはいけない気がしてきたのだ。


 ちなみに、多田野のこの勘は当たっていた。

 自衛隊内でも一ノ瀬と他数名しか知らない極秘事項であったのだから。

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