011 続 一ノ瀬ダンジョン探索隊
パーティー編成からしばらくして、僕たちがダンジョンに入る番となった。
といっても僕たちが一番最後なんですけどね。
一ノ瀬さんは水晶玉の前に立つと、みんなに一旦停止の指示を出した。どうやら説明があるらしい。
「それではみなさん。これからダンジョンに入ります。中央の水晶玉に全員で触ればパーティー登録となって転送されます。私は先に向こうへ行って安全確保しますので、私の1分後に転送してきてください。」
「わかりました。」
代表で遠藤君が返事をした。
今回のパーティーリーダーは後衛の遠藤君にやってもらうことになった。全体が見渡せる位置にいるので、指揮が取りやすいだろうってことで決まった。
一ノ瀬さんとしても問題はないとの見解だったので、この編成で今回は入ることになった。
全員で水晶玉に触れると、ふわっとした感覚に襲われた後、周囲がぐにゃぐにゃして気が付いたら洞窟の中にいた。
それにしても、めっちゃ気持ち悪い…
なんていうか、乗り物酔いをした時の感じに近いかもしれない…
みんなを見回すと、全員ぐったりしていた。どうやら僕だけではなかったようだ。ちょっとだけ安心してしまった。
気を取り直して、立ち上がると一ノ瀬さんはニヤニヤしていた。どうやら、探索初心者の登竜門らしい。
「それでは落ち着いたようですので、ダンジョンアタックを開始しましょう。まずは第1層ですが、基本モンスターは1匹ないし2匹で行動しています。皆さんにはまず一人1匹ずつ倒してもらいます。その後、数回繰り返します。ある程度慣れたら、パーティーの連帯確認を行った後、本番の第2層へと向かいます。今回は第3層へは行きませんので安心してください。ではフォーメーションを組んで出発しましょう。」
やはり詳しい一ノ瀬さんお説明を聞いて、若干ぐったりしつつも僕たちは歩き始めた。
数分すると目の前にプヨプヨというか、グニグニというかよくわからない形の青透明な物体が動いていた。
「皆さん見えましたか?あれが不定形怪異、通称「スライム」です。あれですね、ゲームで言えば最初の敵って感じです。誰から行きましょうか?」
一ノ瀬さんと目が合ってしまった…
「それでは中村さん行ってみましょう。一番オーソドックスな装備ですし、皆さんの参考になると思います。」
「…はい。」
うん、めっちゃ緊張してきた。手には汗が染み出てきていて、気を付けないと剣がすっぽ抜けそうだ。
スライムを見ると、のんきに草を食べて?いた。
僕はスライムにそっと近づいて、一思いに剣を振り下ろした。
ぐにょん
切った手ごたえがあまりなかった。むしろ跳ね返された感さえあった。
僕は少し驚いてしまい、なぜ切れなかったのかよくわからなかった。
「中村さ~ん。いくらスライムが弱いからといって、腰が引けてたら切れませんよ~?がんばってくださ~い。」
遠くから気の抜けた一ノ瀬さんの指摘があった。確かに僕はビビって腰が引けていたらしい。
今度こそ倒して見せる!!
ズバン!!ガチン!!
勢いよく切りすぎたせいかスライムを切った剣がそのまま地面にぶつかってしまったらしい。手がめちゃくちゃしびれた。
倒されたスライムは徐々に黒い靄の霧状になってダンジョンに吸い込まれていった。その一部が僕の胸に吸い込まれていく。驚いた僕はそのまま後ろへ転んでしまいしりもちをついた。
一ノ瀬さんはあはははっと笑いながら僕に近づいてきた。
「おめでとう中村さん。探索者の世界へようこそ。」
この瞬間僕は探索者の仲間入りを果たした。手にはいまだ、生物を切った感触がある。確かにゼリーを切った感じだが、確かに生物だった。
少しして、ピコーンとスマホが鳴った。
中村さんに促されてスマホを見るとそこには
『経験値が規定に達しました。レベルが1上がりました。』
そう、僕はついにレベル2になったのだ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
どんなゲームやっても最初のレベルアップって何となくワクワクしますよね?
この物語上、レベルアップについてはかなりめんどくさくなる予感しかしません。
ステータス管理がものすごく複雑化するので、エクセルを作ったくらいです…
まじ、後悔してます。
発作はやばいですねwww
誤字・脱字等ございましたらご報告いただけると幸いです。
感想・評価・ブクマいただけると作者は頑張れます。
では、次回をお楽しみください。
※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。




