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【完結】スキルクリエイター 〜レベルを犠牲にスキルを創る。でも、レベルが低くて使えないってどう言う事ぉ〜〜⁉〜  作者: 華音 楓
第4章 首都圏解放戦線

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106 多田野キレる

 ケントと多田野は、区画の端のスペースに荷物を降ろし、下草を刈る作業に取り掛かった。

 ケントはめんどくさがって、風魔法で下草を刈り出した。


 それを見た多田野は、ただただ呆れるばかりだった。

 まさかこんなことに魔法を使うとは、思ってもいなかったからだ。

 しかし、器用に熟すなとも感心していた。


 あらかた下草を刈り終わると、テント設営を開始。

 2人とも慣れた物で、あっという間にテントを建ててしまった。

 特に多田野の設営速度は、さすがといえばいいのだろうか。

 ケントでも30分かかったテントを、20分で設営を完了させたのだ。


「さすがタケシ君だね。こんなに差が開くとは思ってもみなかったよ。」

「俺は慣れてますからね。このくらいだったら問題ないですよ。本当はもっと簡易のでもよかったんですが、神宮寺准尉から半強制的に渡されたんですよ。中村さんがテント持って無かった用にって。」


 さすが自衛官といっていいのか?用意周到だな。

 それがケントの感想だった。

 テント設営も終わり、荷物を運び入れていると、数人の集団がケント達の元へやってきた。


「おう!!ここに何勝手にテント建ててんだ?!俺たち【ボルテージ】の縄張りだぞ?!」


 そう言ってやってきた男性は、身長は大体180センチ強で、筋肉隆々の筋肉だるまだった。

 筋肉のせいか、さらに一回りはでかく見えるほどに盛り上がっていた。


「それは知りませんでした。先ほど着いたばかりだったものでね。というより、ここは自衛隊の管理地域のはずでは?」


 ケントは至極当然の質問を投げかけた。

 するとどうだ、男性はすぐに激高してしまった。

 顔は見る間に赤くなり、体から湯気が出てるのでは?と錯覚させてしまいそうだった。


「黙れこのチビが!!ここは俺がルールだ!!わかったらさっさとショバ代寄越しやがれ!!」


 ケントは納得してしまった。

 要するにこいつらはタダのカツアゲ野郎だと。

 それを黙って聞いていられない人物がいた。

 多田野だ。

 さすがに今は自衛官の格好はしていなかったため、相手もわかっていなかったようだ。

 自衛官の敷地内で自衛官にカツアゲを行うとどうなるのか……


「君たちは【ボルテージ】のメンバーで良いですね?」


 多田野は静かに怒っていた。

 怒りを周りに悟らせないように、静かに冷静に怒りを隠して話を聞き出そうとしていた。


「そうだ!!俺様が【ボルテージ】の馬場だ!!良~く覚えとけ!!」

「そうですか。わかりました。上にはその様に報告させていただきます。自衛隊敷地内での犯罪行為は禁止されているはずですよね?それを破るとは……情けない。」


 多田野の対応に違和感を覚えた【ボルテージ】のメンバーだったが、馬場だけはそうは行かなかった。

 自分が舐められていると錯覚していたのだ。

 多田野としては、至極当然のことを言っただけなのにである。

 馬場はさらに怒りのボルテージを上昇させ、口からは泡が吹き出そうな勢いだった。


「おいこらチビ!!さっきから何ごちゃごちゃうるせぇ事言ってやがんだ!!てめぇらは黙って俺に金を差し出してればいいんだよ!!別に物納でもいいぞ?てめぇらが手に入れた素材の半分で許してやるよ!!どうだ安いだろ!?あ?なんか言ったらどうなんだ、この腰抜け野郎!!」


 馬場の罵声は留まることを知らなかった。

 ただ、【ボルテージ】の面々は徐々に距離を開けだしていた。

 多田野の先ほどのセリフが気になっていた。


『上司に報告する』


 おそらく多田野が自衛官であることに感づいたようだった。

 さすがにこれ以上はまずいと判断したのか、【ボルテージ】のメンバーの一人が、馬場を止めに入った。

 しかし馬場は止まることが無い暴走機関車の様に、意味の分からないことを叫び続けている。

 多田野は聞くに堪えないと、スキルを発動した。


「スキル【魔銃作成】」


 多田野の一言でその場の空気が一変した。

 馬場の周囲に、金属の筒が20本ほど出現したのだ。

 その先端はすべて馬場に向かっており、その景色は一種異様なものになった。

 馬場は一瞬何があったか分からなかったようで、周囲を確認し、金属棒が取り囲んでいるのを理解した。


「なんだこの金属棒は?こんなんで俺を倒せるとでも思ってんのか?俺はこの地区の最強の戦士!!馬場だぞ⁉」

「うるさい黙れ。」


 多田野は静かにそう言うと、1つの金属の筒から弾丸を射出した。

 その弾丸は馬場の頬を掠め、地面にめり込み小さな爆発を起こした。

 射出した弾丸は爆発系無属性弾丸の【バーストブレッド】と呼称されている弾丸だ。


 その爆発を見た馬場は困惑していた。

 自分を取り囲む金属の筒はすべて、【砲身】であることを理解したためである。

 その砲身から先ほど射出された弾丸は、小規模爆発を起こしている。

 もし自分の体に当たり、爆発したら。

 しかも20門すべてから射出されたらと考えると、体が竦んでしまった。

 手足も震え、声にならない声で怯えていた。


 その様子を見ていた【ボルテージ】のメンバーも大慌てで、多田野に向かって謝罪をしてきた。

 しかし、多田野は一向に許そうとする気配は無かった。

 ケントはそれを疑問に思っていると、多田野はようやく口を開いた。


「あなた方がやった行為は犯罪行為です。探索者法に基づく場合、ライセンスはく奪すらあり得ることです。これに懲りたら二度と道を踏み外さないでください。良いですね!!」


 多田野はあくまでも、力づくの警告を与えるつもりだったようだ。

 別に殺してしまおうと思えるほどの事は、今回はなかった。

 多田野が放っておいても、ケントだったら何とかするだろうな?という気持ちもあった。

 しかし、態度があまりにもひどかったために、多田野が介入することにしたのだった。


 多田野は、馬場の周囲に浮かぶ砲身をすべてキャンセルすると、一気に解放されたように馬場は地面にへたり込んだ。

 肩で息をするように呼吸が乱れていた。

 顔は青ざめ、生きていることに安堵している。

 そんな雰囲気を漂わせていたのだった。


 馬場はどうやら腰が抜けてしまったようで、うまく立つことができずにいた。

 ずるずると這いずりながら、多田野から距離を取ろうと藻掻いているが、うまく進まない。

 恐怖から逃れたい一心で、無我夢中で地面を這いずっていた。

 その様子を見ていた【ボルテージ】のメンバーは、どこか冷めた表情を見せていた。

 おそらくだが、馬場の強力なまでの独裁制で成り立っていたパーティーだったのだろうと、ケントは分析をしていた。

 その馬場が情けない姿を晒したのだから、メンバーから距離を置かれるのは至極当然の結果だったのだろう。


 【ボルテージ】のメンバーは多田野に一礼すると、馬場をそのままにして自陣へと戻っていった。

 その様子を見た馬場は、半泣きになりながらも仲間の後を追う様にずるずると這いずって、自陣へ戻っていくのだった。


「なんだったんだろうな?」

「なんだったんでしょうね?」


 二人は何事もなかったかのように、野営準備を再開したのだった。




「では明日からはダンジョン攻略に向けて、活動開始ですね。」

「そうだね。まずはここのダンジョンの特性を確認して、新装備の実践テストしてから本格始動かな?でもここはある程度ダンジョン攻略進んでるんだろ?」


 多田野は夕食の片づけをしならが、明日の予定の確認をしていた。

 ケントとしてもはやる気持ちはあるが、命を落としては元も子もないので、慎重に慎重を重ねるつもりでいた。


「では、朝一で探索者ギルドの第29駐留部隊出張所に顔を出して、情報収集。その後に探索開始でいいですね?」

「あぁ、それで行こう。」


 ケント達は食事を片付けると、各々のテントへともぐりこんだ。

 明日からの本格始動を前に、最後の自由な休息となるのだった。

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