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side 悪意

 ゼオン達がいなくなった後、夜中に一人の女が壊滅したギガテンの町を歩いていた。


「準備苦労したんだけどなー。記憶の魔女にいいように利用されちゃったな」


 その女の名前はルーフ。短い栗色の髪を触っている。

 彼女の手には刃物が握られていた。


「まさか、君ほどの人間があっさりやられるとは予想外だったよ。あっ。聞こえていないか」


 ルーフは倒れている女テッコに対して、刃物を振り上げた。

 その表情は赤く高揚しており、呼吸を乱していた。


「はあ、はあ。んっ。ごめんね。ごめんね。首を。びしゃびしゃするよ!」


 振り下ろした刃物が砕け散った。


「えっ。へ」


 息を荒げたまま、ルーフは声を出した。

 首を刺したはずなのに刃物が負けたことに驚きはしている。


「相変わらず、イかれてるね。強欲の()さん」

「びしゃ。びしゃ。しないのぉ?」

「変なの」


 テッコはゆっくりと起き上がった。


「単刀直入に言うけどさ。君の作戦は失敗だよ」

「ちょくちょく。直入? にゅうじゅう。にゅるにゅる。にゅにゅにゅ」


 正気とは思えないような声と共にルーフは残ったを頭に何度も叩きつけた。

 頭から出た血が、地面に飛び散る。


「ああ、ごめんごめん。話は聞いていた。っで、なんで失敗なの? 計画はまだ途中だよ」

「私と調律師が抜けるから」

「最高戦力の二人がいなくなるのか。それは困ったね。それじゃあ、バイバイ……って訳じゃないんだね」


 テッコが指に力を入れた。


「僕と戦う気かな? せめて、理由だけでも教えてもらえるかな」

「調律師に聞いたよ。記憶の魔女の存在について」

「どうやって、連絡を取ったんだか。まあ、いいや。記憶の魔女だろうと、黒狐だろうと調律師だろうと僕()の邪魔をするなら殺すしかないね」


 ルーフから殺気が放たれた瞬間。テッコの姿が闇に消えた。


黒鉄狐くろてっこ流ね。昔、君の師匠と戦ったことあるけど面倒なんだよね。夜なら更に厄介さが増すから怖いね」


 消えたテッコを警戒するようにルーフは後ろに下がった。


「でも、君は夜に殺しはできないはずだよね。確か、亡霊の嘆きが聞こえるとかでさ」


 余裕そうに会話を持ちかけているルーフだったが、その顔には汗が大量に出ていた。


「こっちもあまり戦いたくないんだよね。こっちもこんな所で強欲を使いたくないんだよ」


 足が震え始めた。


「強欲の王よ……」


 悪魔に頼ろうとした瞬間。


「《闇討ち》」


 ルーフの首に一筋の切り傷が入った。

 気管まで切られたルーフの口から音が出ることはなく、喉から空気が流れるのみだった。


冥途めいど土産みやげとして教えるよ。私は君が舐めていた人から依頼を受けた」

「ヒゥー」


 喉から音が出るだけにも関わらず、ルーフはただ無心に口を動かしていた。

 テッコは口の動きを警戒しており、何を言っているか読唇で分かっている。


「ええ。あなたの言う通りハーモットさん。さて、君には早々に退場してもらうね」


 テッコはルーフの首を切断した。


 そして、首を拾った。


「あなたにも涙を流す感性はあったんだ。……さらば悪意の子よ」


 死体の頭を持って、テッコは去っていった。



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