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二二話 悪魔

「あんたが最後? 魔力は少ないわね」

「でも、体は弱っているよー」

「つまり雑魚ね!」


 一人のはずなのになぜか二人いるかの様に話していた。


 こいつ。見た目は呪いを使っていた女だ。だが、明らかに力が増している。

 それにウィップソンとレヴィという遠近最強のパーティーに囲まれていたはずなのに二人とも倒している。


 レヴィは少し離れた場所で息を上げて倒れている。


 全部、こいつ一人でやったのか?


「シャーネ。逃げろ」

「そんな体で戦えるの?」

「どうだろうな。だが、やらないといけないのは確かだ」


 ウィップソンとレヴィは俺より強い。そんな二人を倒した相手に今の俺が勝てる訳がない。


 そんな事。考えるまでもなく分かる。

 だが、これは勝てるか勝てないかの問題じゃない。


「お前だけでも生きろ。安心しろ。相打ちには持っていく」


 俺には奥の手がある。よく分からない力だが、利用しない手はない。

 ただ、あれを使うと体の制御が効かなくなる。シャーネに流れ弾がいかないようにしないといけない。


 だから、ある程度。この体で時間稼ぎをしないとな。


「指」

「なんだ?」

「終わったら、治すの手伝って」

「はは。そうか。じゃあ、死ねないな」


 懐かしいな。全然思っていないようなことを言って死なないように忠告してくる女性は。


「ちゃんと。ゼオンとして戻ってきて」

「やれるだけやってみる」


 シャーネはそう言い残してから逃げて行った。


「お別れは終わったかしら?」

「待たせて悪かったな。いつでもいいぜ」

「えー。もうちょっとのんびりしない?」

「行くわよ!」


 初撃は大振りの拳だった。

 盾で防いだが、受けきれず後退あとずさってしまった。


 この調子で攻撃されると長くは持たない。


「使うしかないか……ん? どうした?」


 この後はなぜか右手だけ使っての打撃が繰り返された。

 左半身が一切動いていない。いくら力があるとは言え、初撃みたいにしっかり踏み込んでない拳にはそれほど威力はなかった。


「ちょっと。怠惰! 動きなさいよ!」

「今はちょっと無理」

「なんでよ! それにしても頑丈ねあんた」

「そりゃどうも」


 この戦い勝てるかもしれない。


 なぜかは知らないが、相手の体は右半身と左半身で別々に操作している。

 それに動きが直線的で、魔物に似ている。


 テッコに比べれば、力こそあるが戦いやすい相手だ。


「この体。弱すぎじゃない?」

「そもそも魔力特化だったから仕方ないよー」

「嘘っ! 私が魔法使ったらあっさり器官がズタボロになったわよ!」


 手が止まった。絶好の攻撃タイミングだが、俺に追撃をする余力は残っていない。


「だから、ぼくが魔法使って、きみが肉体使おうって言ったのにー」

「もう! なんなのよ! こんな体に相乗りするんじゃなかったわ」

「でも、共有して正解だったねー。ひとりだとあの二人に勝てなかったもんねー」

「そりゃそうだけど。もっといい体はなかったの?」


 よく分からないが、喧嘩をしているのか? 目隠ししてから聞いたら二人が喧嘩しているみたいに聞こえるが、どうも視界の情報からは一人でぐちぐち言っているようにしか見えない。


「実験は成功ね。でも、不便すぎない?」

「そうだねー。能力は二つあっても自由に行動できないのはちょっとストレスかもー」

「そうよ! いくら仲良しといってもこうもべったりだとむずがゆいわ」


 こいつら、二人で一人の体を操っているのか。

 体の動きがいびつなのはそういう仕組みがあったからか。


「それにしてもあなた頑丈ね」

「きみみたいな強い体だったら、ぼくもいっぱい動けただろうなー」

「……戦う気はあるのか?」


 さっきから会話ばっかりで全然攻撃してこない。


「別に。私は戦いたくて現世に来た訳じゃないわ。ただ、いきなり襲われたから反撃したまでよ!」

「なんなら、ぼくはきみと契約してもいいよー」

「待ちなさいよ! あんたが自分から契約したいって。どれだけ頑丈な体を持っているって言うの?」


 なんだ。こいつら?

 だが、いい情報を得た。この二人には敵意はないらしい。こっちから刺激しなければ戦いになることはないだろう。


「ふん。いくら頑丈だとしても、その魔力じゃ私の力には耐えられないわね」

「嫉妬は本質を見れてないよねー」

「何よ! 私は真実を言ったまでよ」

「彼の魔力量はこの肉体よりも多いし、器官自体も頑丈。練習すれば全力で動くこともできるかも」


 一応、褒められていることは分かるのだが、何が目的の会話なのかよく分からない。


「じゃあ、今のうちに契約した方がいいって訳ね」

「だから、ほんっと本質が見えてないなぁー」

「どうゆうことよ!」

「どういうね。この子。もう契約しているよ」

「えっ。……どこのどいつよ! 今すぐ交換してもらうわ」

「暴食だよー」


 暴食? 俺は契約なんかした記憶はないが。


「同格じゃない! これじゃあ、奪えないわ」

「じゃあ、ぼくは友達の少ない嫉妬とは違ってー。暴食とも友達だから先に帰って彼を共有したいって交渉してくるよー。じゃあねー」

「待ちなさいよ! 今、あんたがいなくなったら……」


 瞬間。女の後方に剣を振りかぶったウィップソンが立っていた。


 俺は女を庇うようにして盾でウィップソンの攻撃を流した。


「ひぃー」


 女は頭を抱えて縮こまった。


「なんで止める?」

「こいつに敵意はない」


 会話を聞く限り、攻撃されたから反撃しただけで悪い奴の様には見えなかった。

 それに、人格が変わっていて魔氾濫の時に襲ってきた奴と同一人物と思えない。


「なるほど」

「そう言いながら。攻撃するなよ」

「いや、反応されたのは初めてだから。つい」


 殺意は感じないが、こっちとしてはいい迷惑だ。

 こんな奴に襲われたのなら反撃するのはいたって普通の事だ。


「レヴィが信用している人間は悪い人間じゃないことは分かっている。だから、ここまでにしとく」

「っだ。そうだ」

「この女。野蛮なのよ!」

「挑発するなよ。おいおい。止まってくれよ」


 また剣を振り上げたウィップソンをなだめる。


「冗談は置いといて、君は誰?」

「私は嫉妬の悪魔よ! ふふん。驚いたかしら?」


 悪魔と聞いて驚いたと言われれば、驚いたがあの悲鳴を聞いた後だとなんか威力が半減している気がする。


「驚き過ぎて、声も出ないかしら」

「大層な身分の割には可愛い悲鳴だった」

「わ、忘れなさい! そんな一瞬のことは!」

「とても人類を滅ぼそうとした悪魔には見えない」


 悪魔の事はよく分からないが、俺でも知っている有名な神話がある。


 大罪の名を冠した七体の悪魔が人類を滅ぼそうとした話。確か、神が遣わした異界の勇者と賢者が討伐したと言われていたが。

 その悪魔の一体が、この女の中にいるのか。


「あれは傲慢の奴が仕組んだ事よ。私はただ人間に襲われただけよ」

「神話も穴があるんだ」

「黙っているけど、あんたなら分かるはずよ。私がそんな非道な悪魔じゃないって」


 俺に話を振られてもな。と思うが。


「そうだな。そこまで悪い奴じゃないっていうのは分かる」

「でしょ! ほら、私は悪い悪魔じゃないのよ」

「それは悪魔と言えるの?」

「じゃあ、悪ってなんなのよ。あくまで正義の反対は別の正義なのよ」


 なんか、嫌な空気が流れている。もう、戦う訳じゃないし少し流れを変えるか。


「あくまだけにってか」


 もっと、変な空気になった。

 可笑しいな。傑作だと思ったのに。


 もしかして、分かっていないのか?


「さっきのは悪魔があくまって言ったことに……」

「いや、分かってる」

「そ、そうか」


 なんだろうな。精神的にすごい辛い。

 腹部に刃物でも突き刺されたみたいだ……


 ちょっと待て。お腹が痛い。


 ゆっくり見てみると血が滲み出ていた。


 そういえばさっきから魔法が使いにくい。

 これは結構。まずいかもしれない。


 少し、座って休みたい。


「ちょっと。辛いから、休んでくる」

「何もそこまで傷つくことはないんじゃないの?」

「いや、そういうことじゃないんだ。心配はしなくていい」


 ゆっくりと歩き、苦しそうにしているレヴィの隣に座った。



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