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十八話 新しい魔法

 再生持ちのゴブリンたちは俺たちに向かって来ている。


 量のせいで地面が揺れているかの様に響いている。

 今から、この数の相手にしなきゃいけないと考えると大変だな。


 だが、今の俺は最強の魔法使いの魔法を見た後だ。新しく使える魔法も増えている。


 魔法の練習台としてこの数は丁度いい。

 そう考えると気分は少し楽になった気がする。


「光魔法。《光線》」


 まず初めにゴブリンたちの足を切り裂く、高熱の光を放った。


 魔法耐性のない肉は抵抗なく、数十列のゴブリンの足を切断した。

 もちろん、再生の能力があるあいつらはこの程度じゃ倒れない。


 だが、俺はこの肉みたいなダンジョンマスターとは四度目の接敵になる。流石の俺でも多少の特性は分かった。


「空間魔法。《位置変換トレード》」


 空間魔法は難しい理論を知らないとできないと思っていたが、レヴィの助言で使い方がなんとなく分かった。


 切断した複数の足と俺に一番近いゴブリンの体を交換させる。

 なんとなくでやってみたが、上手くできた。同じことを足を失ったゴブリンすべてにやった。


 再生するための部位を失ったゴブリンたちは再生するために伸ばした触手を暴れさせ、そのまま倒れて消失した。


 レヴィがやったみたいに頭を切断してから位置を変えるよりも小さい足の方が効率がいい。


 もう一度同じことをやると、ゴブリンも気づいたのか俺の方に一気に向かうことはなくなった。

 大体、半数ほど倒すことができた。


 ただ、光魔法はともかく空間魔法は消費魔力が多い。あと一回やったら魔力が底をつくかもしれない。

 残量魔力は感覚でしか分からないが、空間魔法は見た目以上に魔力がなくなっている気がする。


 相手が動かなくなったお陰で魔力の回復ができる。


「すごい」

「これからが本番だろうな」


 ゴブリンたちは数の優位を捨てて、合体を始めた。

 二体が合体するだけでも見違える様に強くなっているが、合体を止めさせはしない。


 一番されると嫌なのは俺へ狙いを定めず、数を利用して周りの負傷者を殺しまわすことだったが、数が少なくなればその心配はあまりしなくても良くなる。


 もし仮に合体したゴブリンが強くなりすぎて、倒せなくなっても後ろには世界最強と呼ばれる剣士と魔法使いがいる。安心感が桁違いだ。


 俺の狙いも知らずにゴブリンたちが一体になるまで合体した。

 そこにはゴブリンよりも大きく筋肉質な魔物が立っていた。


 頭に角が生えているし、あの見た目には見覚えがある。

 オーガ。ゴブリンの上位種みたいな感じの奴だ。


 ダンジョンで何度か見たことがあるが、基本的に前線を何とか維持して魔法を浴びせるという攻略方法が基本だ。

 冒険者でも相当の腕がない限りは剣で挑むことはない魔物だ。


 一つ試したい魔法がある。あの傭兵たちが使っていた空間魔法。あれを使いたい。


 オーガが走ってきた。俺も相手に向かって走った。


 オーガが巨大な腕を振り下ろした。

 対して、こっちは盾を構えた。


 拳を受け止める。


 やはり、見た目通りすごい力が強い。だが……


羅衝らしょう!」


 盾と足に回転をを加えて、押し返した。


 体勢を崩したオーガに魔法を使う。


「《断裂だんれつ》」


 空間魔法の《クロスライン》を似せた空間を切り分ける防御無視の魔法を使った。


「そう上手くは行かないか」


 だが、初めて使うこともあり、オーガの体を切断するには至らずに薄い切り傷を残すだけだった。


 さっき、空間魔法の使い方を説明されてからあまり練習もできていないし、今はこの程度が限界だな。

 というか。魔力がごっそり持っていかれた。


 だが、このオーガは力押しで技を使ってくることはない。

 一撃受けて、腕がしびれているが回復魔法を使えば、耐えることぐらいはできる。


 盾を構えた瞬間。


 巨大なオーガが十字に線が引かれ、四つに分かれた。


「魔法も使えて。頑丈。すごいね」


 オーガの後ろに立っていたウィップソンは片手で敵の魔法使いの女の首を掴み、もう片方の手で剣を持っていた。

 あんな状態でよくあの大きな魔物を切れるなと感心した。


 切断されたオーガの体のうち右上半身と左下半身が消えた。レヴィか。


「でしょ? しかも、さっきちょっと教えたばかりの魔法を使う才能。すごいでしょ?」

「なんであなたが嬉しそうなの?」

「別に他意はありませんよー」


 二人が会話している間にオーガは触手を大量に出してから崩壊しているし、首を掴まれている女は手足を使って抵抗しているがウィップソンは微動だにしていない。


 この二人を敵に回したくないなとつくづく思う。


「とにかく、ここの魔氾濫はおしまいみたいだね! ひまだから、ザリガローにも行く?」

「その前にこの女」

「あっ。あんまり強くなかったから忘れてたよ」

「相変わらずひどい」

「そんな言わなくてもよくないかなー」


 新たに魔物が現れることはなくなった。

 あとは、首を掴まれている女になんで襲ってきたのか聞くだけだ。


 複数のダンジョンで魔氾濫が同時に起こったことに何か関係しているだろうと予想はできる。

 それにエクトールで俺たちを襲った男とも関係はあるだろうな。


 気になることはあるが、バカな俺が聞くよりも頭のいいレヴィに任せた方が情報を引き出せるはずだ。ここはだた黙っておくか。


「さて、この場はボクが仕切るとして。ウィップソン。手を放してもらえるかな?」

「分かった」


 首から手を放された女が地面に崩れ落ちた。


「ゴホッゴホッ。レヴィ・セリーン! なんでお前は無傷なんだ!」

「はいはい。少し黙ろうね」


 空間魔法で瞬間移動したレヴィが女の顔を蹴った。


「いったーい。ボク。温室育ちのお嬢様だから足も弱いんだよねー」


 なぜかは知らないが、レヴィは内心(いら)ついている。



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