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十五話 奇襲

 ダンジョンマスターが現れた。


 獣系の魔物が多い南のダンジョンらしく肉の塊であるダンジョンマスターも四足歩行で獣っぽい動きをしている。


 あの肉の塊は今日だけで三回目の接敵だ。既にめちゃくちゃな身体能力を持っていることは分かっている。


 俺は剣を持ち替えて雷神の剣を構えた。

 そして、魔力と体力を消費して雷をまとう。


 ダンジョンマスターの足が膨らんだ。


 来る!


 魔法使いのレビィに狙いを定めている。予想よりも早いが、無理をすれば追いつける。魔力を一気に剣に注ぎ、高速移動をした。

 レビィに近づいていた化け物の手を盾で弾き、腹部を切り裂いた。


 倒れた化け物は痛みを感じているのかもだえている。


 ワーウルフ相手に代償を伴う魔法を使ったせいで魔法が使えなくなっていたレヴィは腰を抜かして倒れたが、見た限り怪我はない。


「大丈夫か」

「……うん。ありがと」


 雷神の剣から与えられる雷は俺に素早さとダメージを与えてくる。なんとか頑丈さだけで制御しているが、そろそろ魔力も体力も限界に近いかもしれない。


 さっさと倒さないとな。


 幸い。こいつもレヴィを警戒して魔法耐性を上げているのか剣は通用する。既にかなり魔力を消費している俺でも倒せないことはない。


 気を付けないといけないのは北のダンジョンマスターの時みたいに自爆をすることだ。確か、爆発する前にシャーネがトラップとして見抜いていたな。


「シャーネ! トラップ警戒を頼む」

「分かった」


 起き上がった四足歩行の獣に剣を向けた。あっちも俺を警戒している。これで周りを気にせず戦える。


 ダンジョンマスターの身体能力は俺より遥かに上だったが、魔物らしく動きが非常に単調で雷神の剣の力を使いながら徐々に削っていけている。


「チッ。こいつ。戦いの中で成長するのか」


 優勢のまま戦っていると、敵の攻撃が頬を掠った。


 当たってはいないはずだが、出血をしている。こいつの攻撃力はもちろんだが、それ以上にさっきの攻撃は読み切れなかったのが問題だ。

 つまり、こいつは戦いながら成長して俺に攻撃を当てたという訳だ。かなり厄介なことになるかもしれないな。


 成長速度は脅威的ではないが、あんな身体能力をした奴が躱すのに少し読みを必要とする攻撃をしてきた時点で敗北の可能性が大きく上がっている。

 おそらく俺が唯一勝っている技術の差が縮まるほど戦いは厳しいものになるだろう。


 だが、俺にダメージが入ったことで魔物も油断したのか隙だらけの読みやすい体全体を使った突きをしてきた。


 敵の突進を利用して首に剣を立て、切り落とした。


 頭と体の切断した部分から触手みたいなものが伸び始めた。


「再生する可能性が高いから近寄るな!」


 追撃をしたいが、この状況で攻撃しても不意打ちを喰らう可能性もある。だから、再生が終わってからまた剣を交えればいい。

 まだ、体力には余裕がある。


「よし、ボクの出番だね。もう魔法は使えるから安心して」


 ダンジョンマスターの頭がどこかに消えた。

 空間魔法か。


「単純な空間魔法だよ。君は使えるかな?」

「いや、空間魔法はどうも難しい。それを無詠唱とは流石最強と言われるだけはある」


 ほかの魔法は他の奴が使っているのを見てなんとなくで使えるが、空間魔法や雷属性などの世界でも使い手が少数である魔法属性はいくら使おうとしても使えなかった。


 レビィの空間魔法は魔法を使うための補助になる詠唱すら使わずに行使されている。これは純粋に俺より魔法の才能があるという事でもある。


「空間魔法はね。等価交換なんだ。移動させたい対象と自分の魔力の存在価値が釣り合うことで初めて成立する。君の魔力なら使うことはできるはずだよ。後でボクが直々に教えてあげよう」

「そうなのか。初めてそんな理論を聞いた」

「そうでしょ?」


 この魔氾濫が終わったら少し練習してみるか。空間魔法が使えるようになれば、S級になるのに役立つだろうな。


 そう考えつつ、頭を失ったダンジョンマスターは体の全体から無数の触手を出して頭を探していたが、見つかることもなく次第に朽ち果て消えていった。


「トラップは?」

「ない」

「町全体に《探知サーチ》を使ったけど、魔物の気配は完全になくなったよ」


 かなり広い街を《探知サーチ》で調べたのか。どれだけの魔力があればそんな芸当が可能なのか。多分、俺がいくら努力しても届かない次元に彼女は到達しているんだろう。


 ひとまずこれで魔氾濫が終わった。


「冒険者ギルドにいくか――」


 突然、威圧に近い気配を感じた。


 横を見ると俺の倍はありそうな大男が隣に立っていた。

 こんな巨体なのにこれだけ近寄られて初めて気づいた。


「なんだ?」

「レヴィ・セリーンが無傷じゃねえかよ! クソが!」


 怒号と共に拳が振り下ろされた。


 盾で受け止めたが足が地面にめり込んだ。


「なに。しやがる!」

「なんで受け止めれんだよ! あ!? ウィップソン以外に止められるのは心外だぞ! おい! 聞いてんのか!」


 何度も拳を振り下ろしてきている。徐々に威力が上がっていて受け止めきれなくなるのも時間の問題だ。

 反撃をしないとな。


 盾を放し、両手で大きな腕を掴み相手の威力を利用して腕を折った。


「あ!? 折れたのか。お前。強いな! 死ねよ! クソ!」

「痛みを感じてないのか」


 折れた腕をしならせて殴りかかってきたが、その前にレヴィが威力を落とした《ファイヤーボール》を男の頭に当てた。


「君はボクを狙ってきたんでしょ? その魔法耐性。装備か《スキル》かはどうでもいいけど、並みじゃないね。まあ、ボクの前だと無意味だけどね」

「クソが! 万全なお前にはこんなクソみたいな装備はただのおもちゃだ! 予定じゃあお前は今頃――」

「君。いや、君たちのやりたかったことはよく分かったよ。そうだなぁ。また暇になったら潰しに行くよ」


 一瞬だった。


 男の手足が消え去った。空間魔法はあんなこともできるのか。


「手足返せや!」

「自分で探しなよ。一応、この世には存在するんだからさ」

「だから、いやだったんだ! 消耗してない化け物に勝てる訳ねぇだろ! クソが! ()()()。騙しやがったな!」


 この男は痛みを感じていないのか怒鳴り声は震えたりなどせず何一つ変わっていない。


 これで終わったかと思ったら、急に静かになった。


「すべてを破壊する憤怒の王よ。理性を解き放ち、我に力を与え給え。代償は肉体の譲渡。さあ――」

「トラップ!」

「解き放て」


 シャーネの声と同時に地面に落としていた盾を蹴り上げ、手に持ち防御した。


 ――は?


 一瞬、気を失ったのか。

 いつのまにか俺は上空から落ちていた。




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