第1話「昔々の物語」
昔々、ある所に一人の召喚士の少女が居ました。
少女は召喚士としての実力はからきしで、落ちこぼれのレッテルを貼られ皆から馬鹿にされる日々を送っていました。
少女が生まれた家は代々召喚士として名高い名家であり。
落ちこぼれの彼女は家名を汚す面汚しでしかなく。
両親からは疎まれ、兄達からも鼻摘み者扱いにされる。
それはそれは辛い幼少期を過ごして来た……。
訳では無く、少女は召喚士としてはゴミクズ同然の実力しか有していないと云うのに。こと戦闘においては類い希なる腕力を武器に、彼女を虐げる人間全てをバッタバッタと薙ぎ倒して来ました。
実の両親、兄達ですらもその例外では無く。
彼女の召喚士としての力を馬鹿にすればグーパンが見舞われ。
そんな暴力的な彼女に反抗しようものならカンフーキックが見舞われ。
それはそれは悲惨な仕打ちを受けていました。
そんな彼女も18才となり、通わされていた召喚士学校を史上最低の成績で無事卒業する事が出来ました。
卒業……、と云うか留年されて傍若無人な彼女に学校に居座られてはたまったものでは無く。
本来なら到底卒業出来る筈も無いと云うのに無理矢理卒業させられたのです。
厄介払いと言えば分かりやすいでしょう。
そんな厄介払いされた哀れな彼女が卒業と同時に掲げた目標は一つ。
天下一召喚士舞踏会で優勝する事でした。
無理な話です。
無謀な目標です。
腕力のみに特化した彼女がそんな大それた大会で優勝出来る筈は無いのですが、誰も彼女の行動を止める者は居ませんでした。
嫌、寧ろ止められる者が居ませんでした。
18才を向かえた彼女は、近隣は元より諸外国にすら「魔王バイザスの再来」と呼ばれるまでに実力と、素行の悪さを轟かせてしまっていたのです。
魔王バイザスと言えば悪行の限りを尽くし、見かねた神によって天罰を下され、地獄の最下層に堕とされてしまった最低最悪の魔王なのです。
そんな魔王と比肩されるとは、彼女の恐ろしさが垣間見えるでは無いですか。
とにもかくにも、魔王バイザスの再来は世に放たれ。召喚士としての道を歩み始めました。
それが今から500年以上も昔のお話。
それから500年経った今では魔王バイザスの再来と云う異名は語られる事は無く。
彼女は史上最高の召喚士と呼ばれるに至っています。
そんな召喚士としてゴミクズで、魔王バイザスの再来とまで言われる悪女が何故史上最高の召喚士と呼ばれるようになったのか?
矛盾だらけのお話を語っていきます。