とある男女の日常風景
俺と愛海は休日の散歩と言う名の、行き当たりばったりの外出を頼んでいる。
特に行き先を決めず、なんとなくで方向を決め、バイクで目に付いた場所に行く散歩だ。
これが面白い。
新しい発見があったり、美味しい食事処見つけたり、新しい思い出になったり。
愛海と二人だから楽しいのもあると思うけど。
今日も適当にバイクを走らせ、俺と愛海の目の前では結婚式が行われていた。
残念ながら自分たちの式じゃないけど。
「綺麗ね~」
「幸せそうだよねぇ」
ちょうど教会から新たな夫婦が出てくるとこだった。
男性も女性も幸せそうだな。
俺も愛海をあんな笑顔にしたい。
「こんなに天気の良い日に結婚できるなんていいなぁ。神様にも祝福されてるんだね」
「友達の結婚式で台風の時があったなぁ」
「なにそれ。私は友達の結婚式で大雪だった時があったかな」
俺もいつかは…。
愛海も俺も笑顔で溢れる式にしたい。
もうちょっと待ってね。
「うう~、寒かった」
「2月上旬で天気が良くてもまだ寒いからねぇ」
愛海と目に留まった喫茶店に入った。
レトロな雰囲気で、老夫婦が経営している小さな喫茶店だ。
「さっきの結婚式見てさ」
「うん」
「いいなぁと思ったのもあるんだけど、私もあんな式上げれるのかなぁって思った」
「愛海と俺だから大丈夫」
「自信家だね」
途中で見た結婚式はみんなが幸せそうに見えた。
自分たちも幸せだと思うが、参加者にも幸せのお裾分け。
良い結婚式とはあのような結婚式なんだろうな。
「20代前半の時は結婚って夢を見てたけど、20代後半になってから諦めてたんだよね」
「俺も同じだなぁ」
「友達の結婚式に参加して、最初はおめでとーって祝福するんだけど、年を取ってくると次は私よ!って思っちゃって。でも最近は私に遠い世界なんだなーって」
愛海がコーヒーを飲みながら寂し気な表情をする。
「私も幸せになっていいのかな?」
「俺が幸せにする」
俺以外が愛海を幸せにするなんて許せない。
愛海を幸せにするのは俺だ。
「どうぞ」
「あれ?頼んでないですよめ?」
「老人からのプレゼントだと思ってくださいな」
マスターであるご主人からケーキが贈られてきた。
頼んでないけど…。
「お二人とも夫婦かと思ったけど、まだ夫婦じゃないのね」
「妻と話していましたが、とても仲の良いお二人でしたのでね」
「ふふ、恐縮です」
お二人からは夫婦に見えるのか。
嬉しい。
他人からそのように見てもらえるなんて。
「失礼だと思いましたが、会話が聞けてしまいましてね。老い先短い爺からのプレゼントです」
「そんな…。わざわざありがとうございます」
「お連れ様は旦那様候補でいいのかしらね?」
「旦那予定です」
「もう…!」
「「あらあら」」
愛海の旦那様は俺ですよ!
まだ予定ですけどね。
「お二人を見ていると、妻との若い頃を思い出しますな」
「そうねぇ。貴方たちなら幸せな夫婦になれるわよ」
「そうなるように努力します」
「ふふ。安心してください。多くのお客様を見てきましたが、お二人はとってもお似合いですよ」
「お二人ならきっと良い夫婦になるわよ」
マスターご夫妻と結婚生活についてのイロハを教わった。
良い店だった。
また来たいな。
今度は結婚して、ちゃんと夫婦になってから。
「良いご夫婦だったね」
「憧れるよね」
散歩から帰ってきて、家で今日の出来事を思い出す。
喫茶店のマスターご夫妻から金言をたくさんいただいた。
「私もあんな年の取り方したいなぁ。幸せって感じがして素敵だったもの」
「わかる。死ぬ時には幸せだったって言って死にたいな」
「結婚前に死ぬとか言わないでよね」
「サーセン」
幸せな人生って何だろう。
答えがあるわけじゃない。
死ぬ時が答え合わせだ。
その時は幸せだったと言って死にたい。
「幸せって成るもの?」
「いや、幸せは作るものだと思う」
「期待していいのかなー?」
「任せろ」
コテン、と俺に寄り掛かる愛海。
あーもー!可愛い。
今も幸せなんだけどさ、もっと幸せにしたい。
「私も紅葉を幸せにしたいな」
「これ以上幸せにされたら爆発するわ」
「もっと幸せになりたくないの?」
「…なりたいから容量増やしてくるわ」
幸せの容量ってどこで増やせるんだろ?
電化製品売ってるところで幸せを保存できハードディスクとかD売ってないかな?
「小さな幸せだけど、こうやって紅葉と一緒にいるだけで幸せ」
「んじゃ、もうちょっとだけ」
愛海に触れるだけのキス。
「ん…」
「どう?」
「幸せ」
「俺も」




