表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある男女の恋模様  作者: はから
第一章 とある男女の恋模様
6/85

とある男の仕事風景②

 タバコ休憩を終え、自席に戻ると梅田がPCと睨めっこしていた。

 何かと格闘しているようだ。

 恐らく萩田さんからの依頼について調べていると思う。

 

 声をかけようかと思ったが与えるだけでは成長しないな、と思い声をかけるのをやめる。

 自分で調べて悩んでそれでもわからなかったら聞けばいい。

 悩んだら相談に乗るのもチューターの役目だ。

 別に梅田を虐めてるわけではない。



 「竹科さん。今お時間よろしいですか?」


 「何よ?」


 「今週どこかで検査でよろしいですよね?内容や場所などは小西さんからお聞きしたのですが、車の使用登録の方法がわからなくて…」


 数分格闘していた梅田が降参してきた。

 うちでは社有車を使用する場合は事前にシステムでの登録が必要だ、

 その登録方法はいつも持ち歩いている相棒(メモ帳)にも書いてなかったようだ。

 そりゃあそうだ。教えてないしね。


 「教えてなかったっけ?」


 「いえ…また今度教えるから、ということでやり方は聞いてないです…」


 もう一度言おう。

 虐めているわけではない。

 ノットパワハラ。

 梅田が教えたことを覚えているかの復習を兼ねている。

 

 「よく覚えてるよな。ご褒美にこれをあげるよ」


 「わぁ!ありがとうございます!…じゃなくて社有車の登録方法を…」


 「備品ポータル開いてだね」


 「はい」


 覚えの良い梅田に景品のお菓子を渡す。

 喜んだのもつかの間。お菓子を食べたい衝動を抑えて仕事を優先するようだ。

 

 

 「ありがとうございます!リス子しっかりと覚えました!」


 「俺がいない時もあるんだから別の人に聞いてもいいんだぞ。チューターだからって全部俺に聞かなくていいよ。俺が間違ってるかもしれないから、誰かの意見も聞くといい」


 「10分調べていましたらちょうど竹科さんが戻ってきましたので」


 「10分ルール守ってるのか。成長してるやん。褒美をあげよう」


 10分ルールとは梅田に課したルールだ。

 10分自分で調べてそれでもわからない場合は誰かに教えてもらうようにと。

 

 配属当初はうーんうーんと唸っていることが多かった。

 業務時間は有限だ。無駄な残業をさせるわけにはいかない。

 自分で考えずに最初から誰かに聞きにいくことは許さない。

 自分で考えて行動する社員になってほしいとの個人的な願いだ。


 自分が新入社員時のチューターは人に教えるということに慣れていない3年目の先輩社員だった。

 チューターには指導することで学んだことを再確認という意味も込めている。

 指導することでもう一度学ぶ姿勢を忘れないでもらいたいという会社の方針だ。


 内気で口数の少ない先輩だった。

 業務は詳しいかったが自分の言葉を伝えるのが苦手な方だった。

 優しいというか甘い先輩だった。

 すぐに助け船を出してくれたがこれでは自分が育たないという経験から基づく10分ルールだ。


 九州支社で一緒だった萩田さんからは「40秒で支度せえ」と無理難題を言われた。

 強面の萩田さんからまさかアニメ映画の台詞を聞くと思わなかった。

 お子さんの影響で覚えたようだった。

 さすがに40秒で支度は無理ですよ…。



 「ん?」


 正面に座っている二つ下の足立ちゃんがニコニコと手を出してきた。

 

 「兄さん。私にはないんですか?」


 「お納めくださいませ姫」


 「大義であるぞ」


 俺のことを「兄さん」と呼ぶ足立ちゃん。

 異動してきた時に打解けようとお菓子を与えていたら懐かれてしまった。

 仕事ができる足立ちゃんは同僚として助かる。

 お菓子程度でスムーズに業務ができるなら安い出費だ。


 「兄さんは梅ちゃんに甘いですよねー」


 「業務は厳しくしてるから大丈夫」


 「梅ちゃんもお菓子ばっかり食べてると太るよー」


 「大丈夫です!」


 足立ちゃんの隣には事務員の和田さんがいる。

 自席の周囲には女性が3人いる。

 和田さん、足立ちゃん、梅田だ。

 女性が3人いれば姦しいというものだ。

 

 3人で楽しそうに話し始めてしまった。

 梅田には調査の準備をしてもらいたいものだが、今注意しようものなら女性陣を敵に回すことになっていまう。

 それだけは避けたい。

 女性だけは敵に回してはいけない。

 

 敵に回そうものなら裏で繋がっている暮林さんにも何を言われることか…。

 取引先の女性たちと飲み会を開いているらしい。

 迂闊なことをすれば暮林さんとの飲み会もなくなってしまう可能性がある。

 貴重な癒しである暮林さんとの飲み会がなくなってしまうことだけは避けたい。

 だから女性陣は敵に回さない。絶対にだ。



 幸いにもそこまで急ぎでもないから少し時間を空けてから指示することにしよう。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ