とある女の一人ぼっち
紅葉と同棲を始めて1週間。
お泊りと同じで、特に変化はない。
以前からのお泊り延長。
家事の分担はあるけど、紅葉も手伝ってくれるし、全く苦にならない。
これで長く付き合うと嫌いになってきたりするのかな?
そうならないようにしないと紅葉に捨てられちゃう。
朝から一緒にいることができて、同じ家に帰ってくるっていいよね。
小さな幸せだと思うけど、私にとって大きな幸せより、小さな幸せの積み重ねに幸せを感じる。
寝起きを毎日一緒に過ごせたり。
お昼に同じお弁当を食べることだったり。
帰りに買い物をお願いしたり。
ホントに小さな幸せだと思う。
そうそう。
あのエロ魔人紅葉にも変化があった。
同棲したら毎日襲われるんじゃないか…と思ってたけど、私の体調を考えてくれてる。
だって、毎日襲われないし…。
襲われたいわけじゃないのよ!
しなくても寝る前はイチャイチャできるから満足できるし…。
ねぇ、紅葉。
なんで私を置いていなくなっちゃったの?
なんで?
同棲始めたばっかりなんだよ…。
なんで…。
寂しいよ…。
しんみりしてみたけど、紅葉は出張で不在なだけです。
はい、ちょっと盛りました…。
紅葉は3泊4日の東京出張中です。
出張に行く前は、血涙流す勢いで落ち込んでたけど…。
同棲直後に出張ってツイてないよね。
サラリーマンなんだから仕方ないじゃん。
事務派遣の私は出張なんてないから気楽なものだよー。
絶賛一人ぼっちの私は、ソファーに寝転がってゲームをしている。
紅葉は研修後の飲み会で、連絡が取れない状態。
めんどくさいって言ってたけど、付き合いも大事だからね。
そんなこんなで絶賛暇人。
いつもだったら紅葉がいるからいいけど、いないと寂しいんだよね。
付き合う前まで干物だったから、帰宅してからの家でごろごろは至福の時間だったのに。
家族もいないから寂しいなぁ…。
実家に帰ってもいいけど、もう帰ってきたの?って茶化されそうだし…。
明日は仕事終わったら、美味しいって評判のパン屋でも行ってこよ。
明日は夕飯サボっちゃお。
お弁当は作るけどね。
「どれにしよっかなぁ…。どれも美味しそうだけど、何個も食べれないんだよねぇ」
帰宅方向とは逆方向にあるパン屋。
わざわざ名駅まで来るのはめんどうだったけど、たまにはね。
「愛海ちゃん?」
「?」
パンを選んでいると、背後から声を掛けられた。
この声…。
「お義母様。ご無沙汰しております」
「そんなに畏まらなくていいのに。今日は一人?」
「はい」
まさかのお義母さんとお会いするなんて…。
どうしよう…。
私変な恰好してないかな?
髪の毛ボサボサじゃない?
「買わないの?」
「どれも美味しそうで迷ってまして…」
「どれ?」
私がこれとあれです、と指を差す。
お義母さんはヒョイとトレーに乗せてレジまで行ってしまった。
え…、お義母さん!私払います!
「愛海ちゃん行くわよー」
お義母さんに拉致られました。
どこ行くの!?
「到着」
お義母さんに連行された場所は、現在の私の住処。
紅葉のマンション。
「愛海ちゃんとお話したくてね」
なんだろう。
この前の紅葉のが倒れた時のことかな。
貴女は息子の彼女に相応しくありません、って言われるの!?
そうなったら紅葉はどうするのかな?
家族を取る?私を選んでくれる?
「愛海ちゃん…。取って食べたりしないわよ。愛海ちゃんはバカ息子の彼女やってくれてるんだから」
「え…、顔に出てましたか?」
「伊達に50年も生きてないわよ」
えっ!?お義母さん50だったんですか!?
美熟女ですね。
私のお母さんといい…。
「食べる準備しましょ。冷たいパンより温かい方がいいでしょ」
「そうですけど…。これ全部ですか?」
「大丈夫。そのうち援軍が来るわ」
援軍?
「おじゃましまーす」
「千尋。リビングで待ってて」
「はーい。愛海さんお邪魔します」
え?お義母さんに続いて千尋ちゃんも!?
二人で私に小言を言うのね!
負けないわよ…!
そんなことはないと思うけど…。
「「「いただきます」」」
千尋ちゃんは帰宅中にお義母さんに捕まったみたい。
帰ってもご飯ないから紅葉の家に来なさいって…。
お義父さんは?飲みに行ってる?それなら大丈夫ですね。
「同棲はどう?」
「私もそれ聞きたいです!」
「ええーと」
姑さんと小姑さんが私を虐める!は嘘だけど。
お義母さんと千尋ちゃんに色々聞かれました…。
私の知らない紅葉も知れたし、お義母さんと千尋ちゃんとも仲良くなれた。
結婚するとこんな日常になるのかなぁ…。
紅葉のご家族とも仲良くやっていけたらいいな。




