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とある男女の恋模様  作者: はから
第三章 とある男女の恋納め
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とある女と新入社員①


 「おはようござます!」


 「帰ってきたかー。どれだけ成長したかねぇ」


 「ですよねー。みんな真っ黒ですね」


 フロアに響く、大声での挨拶。

 

 橋本組では、新入社員を研修が終わった直後に現場に放り込む。

 10月までの半年で現場の過酷な状況を身をもって理解してもらうための制度みたい。

 夏に外で動いていたから、真っ黒だ。

 焼けてるねぇ。


 「藤林、ちょっと」


 「はい」


 話していた藤林さんが、加藤さんに呼ばれていってしまった。

 うちの部署にも新入社員の子がいたはずだから、どうなふうに変わってるかな。

 おばさんだから、若い子は眩しいよ。

 











 「お疲れ様です」

 「ッス」


 喫煙室でタバコ休憩をしていると、真っ黒に焼けた男の子がはいってきた。

 新入社員の子かな。

 最近まで喫煙室にこなかった人だから、すぐにわかるんだよねー。

 顔も真っ黒だしね。


 「やっぱり社内は天国だわ」


 「それな~」


 新入社員の二人が大きな声で話始める。

 もうちょっと静かに話そうか。

 みんなが使う喫煙室なんだから。

 む…?おばちゃんみたいかな。


 「久坂どーよ?」


 「最悪だよ。俺は現場出るためにやってきたんじゃねーんだよ」


 おいおい。

 こんなところで会社批判をするんじゃないの。

 若いなぁ…。

 紅葉も若い頃は荒れてたって聞くし、こんな感じだったのかな。


 「大学で建築工学学んできたのにマジムダ」


 「言い過ぎだろ」


 「設計やらせろよな。マジで意味わかんねー」


 おお、もう一人の子偉いぞ。

 もう一人の子がヒートアップする前に止めるんだ。

 上司が入ってきても知らないよ。


 「数年やれば部署異動できると思うけどな」


 「それじゃ遅ーんだよ。俺は現場管理なんてやりたくねーの!」


 「落ち着けって…」


 あらら。これはマズイかな。

 議論することはいいと思うけど、場所を考えなきゃねー。

 私以外の利用者で止めれそうな人は…小林さんがいる。

 

 小林さんも気になってるようだ。

 私がアレって指を差すと、小林さんが任せろ、と力こぶを作って二人に向かっていった。


 「現場管理なんてなんも意味ねーんだよ!」


 「落ち着けよ」


 「俺は設計をやりてーの!」


 「こらこら。ここは喫煙室だからな、落ち着けよ」


 「…あ、すみません」


 「………」


 お見事小林さん!

 私が言っても聞かないだろうから、小林さんが居てくれてよかった。

 一人はマズイと思ったのか、すぐに謝ってるけど、もう一人は不満げな顔してるね。

 自分の過ちを認めたくないのかな?若いねぇ。


 「自分のやりたいことができないのもツラいだろうが、きっと勉強になるから頑張れ」


 「はい、すみませんでした」


 「………」


 おっと、小林さんが諭してくれているうちに、私はとっとと退散しましょうかねー。

 

 「お疲れ様でーすっ!?」


 私が挨拶をして、通り過ぎようとしたら手を掴まれた。

 何事!?


 「おねーさん、綺麗ッスね」


 「え?」












 

 「はぁ………」


 なにあれ?

 指導中にナンパするとかありえない。

 しかも社内だっつーの…。


 「暮林さんどうかした?」


 「あのですね…」


 横にいる藤林さんに今の出来事を相談する。

 同じ林同士なから、藤林さんとはよくお喋りをする仲だ。



 「それって久坂じゃない?」


 「名前知らないんですよねー」


 藤林さんに今の出来事を説明し、その上で久坂という人物の名前が出てきた。

 久坂って誰よ。


 「多分間違いなく久坂だな」


 「そんなに有名なんです?」


 「やばいやばい」


 藤林さんが話してくれた、久坂という新入社員の評判は悲惨だった。

 入社式にも遅刻した上に、謝りもせずに不貞腐れた態度だったり。

 現場に行ってる間も、現場の方たちからクレームが入る程だったらしい。

 今日も午前中に、自部署で色々やらかしているらしい。 

 問題児じゃん。


 「現場研修中も三浦さんが現場に説教に行くほどの問題児」


 「うわ…」


 三浦さんは現場を統括するとーっても怖い部長さん。

 (中身はいいおじさん)

 鬼の三浦と言われる三浦さんに怒られても反省しないとか…。


 ホントに社会人?

 少し前まで、学生だったのはわかるけどさ。

 ここまで酷いのは初めて見た。


 「その久坂にナンパされたと」


 「そうですよ!最悪ですよ…。ここ社内ですよ…」


 「ありえんわな」


 ホンットありえない!

 今日は最悪かも…。


 こーよーちゃーん。

 癒してよー。


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