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とある男女の恋模様  作者: はから
第一章 とある男女の恋模様
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とある男の半干物生活


 暮林さんとの飲み会から一夜明けて土曜日。

 平日よりも少し遅く起きた。

 窓から見える空模様は快晴だ。

 ならばやることは一つだけだ。


 「よっこいしょ」


 爺臭いと言われるかもしれないが布団は重い。

 せっかくの快晴なのだから布団を干して染みついた男臭という名の加齢臭を消さなければ。

 平日は仕事があるために布団を干すことはできない。

 家に奥さんでもいれば…と思ってしまうのは悲しい独身男性の性なのかもしれない。


 しゅっしゅっしゅ。


 干した布団に除菌スプレーを噴きかける。

 27にもなると干しただけでは男臭は消えない。

 元テニスプレイヤーの俳優が出ているCMの除菌スプレーだ。

 いつ彼女ができて家にくるかわからない。

 日々のケアはしっかりとしておかなければならない。


 そういえば。


 以前暮林さんから「竹ちゃんいい匂いするね」と言われたことがあったな…。

 自分の臭いは自分ではわからないというが…。

 いい匂いと言われても朝は起床したらシャワーを浴びて出勤し、夜は湯に湯かっているいるだけだ。

 香水はつけているがそこまで臭いのキツイものではない。

 そうすると柔軟剤かな?

 

 暮林さんから褒められると素直に嬉しい。

 もしかして臭いからちゃんとケアしなよ、という遠回しの注意だったかもしれないが…。

 こっちとしては暮林さんから漂う匂いのがヤバいんだけどなぁ…。










 「おけーい」


 土曜日のルーチンワークである掃除、洗濯などの家事を一通りこなし、昼食作りに取り掛かる。

 20代前半はストレスからかとんでもなく太った…。

 入社時より+20キロも増えた。

 自分はストレスを感じるとストレス解消で食べることに走るようだ。 


 右も左もわからない土地で業務を覚える日々はツラかった。

 生まれてこの方、出身地である愛知を出て生活したことがなかった。

 初めての土地福岡で軽いホームシックにもなった。


 そこから得た教訓で食生活には気をつけている。

 +20キロから元に戻すことに成功したが、もう若くないのか体重が落ちるスピードが遅かった。

 学生時代に培った筋肉は簡単に自分を裏切ってくれた。

 

 配属当時は「イケメン」といじられたが異動時には「デブ!」とけなされた。

 二枚目から三枚目になったの?とよくいじられた。

 良い思い出だが自分はイケメンはじゃない…。

 よく弄ってきた人は今の上司なわけだが…。



 ぴこん。


 スマホから着信を知らせる音が聞こえる。

 彼女もいないし企業からの通知かな?

 暮林さんからだったら嬉しいな。

 そういえば昨日のお礼してなかったな…。



 『昨日はありがとうございました。またいきましょうねー』


 可愛いスタンプとともに送られてきたのは暮林さんからだった。

 

 暮林さんからの連絡に思わず顔がにやける。

 彼女もやり取りしている特定の女性もいないからなぁ…。


 『こちらこそありがとうございました。ちゃんと帰宅できましたか?』

 緩いウサギのスタンプとともに返信した。

 

 ぴこん。


 『ちゃんと帰宅しましたよ!彼氏は欲しくても途中で寝て襲われる趣味はないです』


 暮林さんのような美人が道端で寝ていたら…。

 ダメだ!そこは人間として正しい行いを…。


 『暮林さんが帰り道に落ちていたら喜んで持ち帰りさせていただきますね』


 『しないくせに』


 『男は狼ですよ』


 『女も狼の時代だよ?』


 暮林さんとアプリでやり取りをしていると鍋の水が沸騰してきた。

 今日はパスタだ。

 一人暮らしの男飯なんてこんなものだ。

 

 料理は好きだが材料がない。

 母から幼い頃に「今は男も料理できなきゃダメ!」と叩き込まれた。

 長男の俺に叩き込んでなぜ妹には教えなかったんだ…。

 

 買い物にも行ってないから必然と家にあるもので昼食となる。

 昔に比べて胃も小さくなったからパスタくらいがちょうどいい。

 暮林さんには申し訳ないが食事後に返信させてもらおう。

 










 「ふぅー」


 食後の一服は最高だ。

 電子タバコでは味わえない吸ってる感。

 電子タバコの人からは慣れだ、と言われるが慣れなかった。

 自分が癌になる頃には特効薬が完成していることを願って食後の一服を味わう。



 『パスタ食べてました』


 謝っているスタンプを添えて暮林さんに返信した。

 

 『私は焼きそばだったよ。余り物の在庫処分焼きそば!』


 実家に住んでいる暮林さんはもっぱらお母さんが料理を作るらしい。

 一度暮林さんの料理の腕を聞いたがそれは料理じゃなく調理だ…とツッコんだ。

 

 『余り物に暮林さんは含まれてなかったんですね』


 『許さん』


 怒ったスタンプが本気で怒ってないことを示している。

 いつものボケとツッコミだけどもやりすぎたかな?

 でも軽口たたけるくらいには仲良くなったと思うし…。


 『許してくだせぇ姉御』


 『コンビニお菓子で手を打つよ』


 『安い女ですね』


 『でしょ?』


 暮林さんとのやり取りも楽しいが買い物にもいかねば…。

 一人暮らしだと自分のことは自分でやるしかない。

 今日はスーパーとドラッグストアに行くだけだ。

 買い出しが終わったらジムにいって少し体を動かして夜はのんびりだ。

 

 え?夜は出かけないのかって?

 嫌だよ。

 半干物男の自分は家で引きこもりだ。

 明日も家でゴロゴロのんびりだ!

 家が一番!

 明日は映画かアニメでも見ようかな。


 あー、彼女欲しい。


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