とある男の失敗
暮林さんと色々あった先週から数日。
今週は萩田さんからのお願いもなく、平和だなーと仕事をこなす。
先週相談のあった新村くんの件は担当課長である嶋さんが上手く調整したようだ。
これで自分の余計な仕事も片が付きそうだ。
まさか暮林さんと距離が縮まると思ってなかった。
半分事故のように思えるが、無事に彼氏(仮)になれたし。
出会ってから1年。気になり始めて半年。
長かった。貪欲にアタックしたわけじゃないけど…。
結果良ければ全て良しかな。
それにしても…。
久しぶりだったから頑張り過ぎたかな。
いや、暮林さんが可愛いのがいけないんだ!
いつもの美人な暮林さんが可愛くなるとかギャップ萌えだろ!
アカン…ムラムラするから思い出すのはやめとこ…。
「竹ー」
「はーい」
オジキに呼ばれたから行きますかね。
あー…疲れた。
前任者が作成したツールを直せって…。
マクロはわかるけどアクセスはそこまでなんだけどなぁ…。
オジキからのお願いは今日も面倒な案件だった。
おかげで2時間も残業してしまった…。
水曜日なのに残業だ…。
今日取れなかった定時退社は明日か明後日に振替よう。
梅田がで使えるようになってから、自分の業務量は減ったように思う。
でも最終チェックは必ず自分がやっている。
使えるようになったといっても細かいミスは多い。
2年目にこれ以上求めるのは酷だろう。
それにしても…
俺は何でも屋じゃないんだけどね!
俺は未来からきた猫型ロボットじゃないんだけどなぁ。
萩田さんは風貌からしてガキ大将だな。
お前の物は俺の物の危ない思想の持主かもしれない。
でもカラオケは上手かったな…。
帰ろ帰ろ…。
「あ…」
帰宅し、ソファーでゴロゴロとゲームをしているとマズイことを思い出した。
暮林さんに返信してない…。
うわあああああああああ!
付き合って数日なのにこれはマズイ!
仕事にかまけて返信忘れてた…。
元カノの「なんで連絡くれないの!?」を思い出してしまう…。
これじゃ暮林さんと付き合えたから満足して興味がなくなった男みたいじゃないか。
そんなことは絶対にない。
早急に返信しないと…。
「うーん…怒ってる?」
急いで返信して1時間経つが暮林さんからの返信はない。
社会人だから頻繁に返信はできない。
だけどそこは暮林さんも理解してくれているはずだ。
同棲しているわけではない。だから暮林さんとの時間は限られている。
仕事が忙しいからと彼女を蔑ろにしたくはない。
仕事も私生活も気を抜きたくない。
あと30分。いや、1時間返信なかったら再度連絡しよう…。
取り合えず追加の筋トレして邪念を…おわっ!?
「電話?珍しいな…」
スマホの画面には暮林さんの名前が表示されている。
仕事以外で電話してくるなんて珍しい…。
スマホを手に取り通話ボタンを押す。
「こんばんは。返信できなくてすみません」
『こ、こんばんは。返信?大丈夫だよ。仕事あるんだから仕方ないじゃん』
「ありがとうございます。どうしましたか?電話なんて珍しいですよね」
『そ、そうだね。た、竹ちゃんの声が聞きたくなってね!それでね…チョット!』
嬉しいことを言ってくれる。
やっぱり暮林さんはいいなぁ…。
誰か隣にいるのかな?
遠くて聞こえないけど誰かと言い合っているような…。
『ごめんね!それで…今週の金曜日なんだけど飲みに行かない?も、もちろん先約があったら――』
「先約があったとしてもキャンセルしますよ。優先すべきは暮林さんです」
『なんでそんなこと言うかなー?付き合いを疎かにしちゃダメだからね』
「ホントに金曜日は何もないので大丈夫ですよ」
『…なら飲まない?』
喜んで!
ひゃっほい!
電話越しだけど、改めて好きと思い始めた女性の声は癒される。
居酒屋どこにしようかな。
暮林さんどこがいいか聞かなきゃなー。
「何食べたいです?希望があれば探しますよ」
『や、今回は私が探すから大丈夫。竹ちゃん何か希望ある?』
「なんでもござれですよー」
『おっけーい。それでね…』
なんだと…。
ちょっと待って!
タイム!審判タイム!
タイムアウト!
『金曜日…。竹ちゃん家泊まってもいい?』
最近の恋愛ってこんなにスピーディーなの…?
教えてエロい人!




