とある男女の初デート④
「ん…」
目を覚ますと自宅のベットとは違う感触に戸惑う。
あれ…ここどこだ。あー、そういえば昨日は暮林さんとデートで…!!?
自分の腕の中に何かいる。
これって…暮林さんじゃないか!
昨日終わってから、甘えてきた暮林さんに腕枕し、抱きしめて寝たんだった…。
うわ…暮林さんの体エッロ…。
そうじゃない。起きて色々準備しないと。
取り合えず風呂だな。
「ん…」
「………」
「…おはよ」
「オハヨウゴザイマス」
腕枕をしている手を抜こうとしたらやっぱり暮林さんを起こしてしまった。
気まずい…。
「昨日そのまま寝ちゃったから裸なのね」
「デスヨ」
「なんで片言なの?」
「…その、すみません」
「なんで謝る?」
「いえ、しちゃいましたから…」
「私が最初に襲ったんだから気にしないで」
暮林さんは気にしてないのだろうか。
こういったことに慣れているのか…?
そうだったらちょっと悲しいな。
「過ぎたことを悔やまない。そんなに私とするの嫌だった?」
「そんなわけないじゃないですか!」
「ならしっかりしなさい。私の相手をしたのが嫌々だったように見えるよ」
嫌々なわけない。ご褒美だった。
こういったことも久しぶり過ぎて何もできない。
女性にこんなことを言わせてしまうのは申し訳なさすぎる。
…俺も切り替えよう。
「竹ちゃんお風呂作ってもらっていい?」
「作ってきますね。服は回収してソファーに置いておきます」
「ありがと」
「…ん」
何?私寝てるんだけど。
あ、竹ちゃんの腕ね。
昨日終わったあとに竹ちゃんに抱き着いて腕枕してもらったんだった。
腕も私みたいなぷにぷにじゃなくてちゃんと鍛えてる腕をしてる。
枕としてはイマイチだったかな。
………あああああああ!
昨日竹ちゃんとしちゃったんだ…。
ちょっかいかけた私が悪いんだけどね…。
竹ちゃん落ち込まないで。
そんなに私の相手するのが嫌だった?
ふーん…ちゃんとしなさいよ。
行為は慣れてたのに私の扱いおかしくない?
狼竹ちゃんだから夜のお店で楽しんでるんでしょうね。
………いやいや、自分で言ってて嫌になる。
竹ちゃんとは彼氏彼女の関係じゃないんだから…。
「ここでいいんですか?」
「うん、ありがと」
ホテルを出ると昨日の雨が嘘のような快晴だった。
服もちゃんと渇いていた。
途中途中で休憩を挟んだけどぎこちなかった。
「二日間ありがとね」
「僕も楽しかったので」
「お礼は今度するね」
「いいですよ。そんな」
暮林さんからヘルメットを受取る。
暮林さんが自分に背を向けて帰ろうとしている。
本当にこれでいいのか?
「暮林さん!」
「どうしたの竹ちゃん。忘れ物?」
「あの…」
「うん?」
「うっ…」
いつからこんなに弱気になったんだ。
伝えたい言葉が口から出ない。
「責任取ってね」
そうだ。
責任を果たす。
「暮林さんのことが好きです」
「…昨日のことを気にしてるなら大丈夫だから」
「気になるから飲み会で距離を縮めようとしてました」
「昨日一気に縮まったけどね」
「僕じゃダメですか」
「ダメじゃないよ。私も竹ちゃんのこと好きだと思う」
「なら」
「でもね。竹ちゃんは昨日のことを気にしてるからそう思うだけ。私だって多分そう」
「知ってますか」
「何を?」
「アルファベットのHの後にはIがあるんですよ」
「へ…」
「僕も誰かを好きになること久しぶりですから、好きっていうのが思い出せないんです。でも暮林さんと一緒にいると楽しいし、嬉しいのは好きだと思うんです」
「そうね」
「だからHから始まる恋はあってもいいでしょ」
「変態」
「誉め言葉ですね」
「………」
「………」
「彼氏欲しいなー」
「立候補します」
「ふふ、よろしくね」
順番はおかしかったかもしれない。
だけどそのおかげで距離が縮まった。
念願の彼女だ!
あれ…?
暮林さんのことそこまで知らないじゃん…。
これから色々知ればいいか。
あー…カップルって何やってるんだろ?
久しぶり過ぎてヤバいな…。
「言っとくけど竹ちゃん彼氏(仮)だからね」
「仮ってなんすか!!?」
頑張ろう…。
二人ともいい大人ですからね。
そりゃぁねぇ…。




