とある男女の初デート②
数回の休憩を挟んで目的地である恵那峡さざなみ公園に到着した。
恵那峡さざなみ公園は遊覧船から桜を見ることができる桜の名所だ。
今年は春が遅かったからかまだ桜は咲いていた。
暮林さんも徐々にバイク慣れたようで、最初のようにワーギャー騒がなくなった。
車と違ったバイクの乗り心地に満足しているようだ。
道中は暮林さんに抱き着かれて良い思いをした。
決して邪まな気持ちはない!
…………ノーコメントで。
「うーん!竹ちゃん運転ありがとね」
「美人とドライブできたので満足です」
「桜が目的じゃ?」
「花より団子ですね」
駐車場にバイクを止め、暮林さんは「んーっ」と伸びをする。
都市部の喧騒からは程遠い場所だ。
空気も澄んでおり、心が綺麗になっていく。
……暮林さん見えてます。
「ちょうど13時からの遊覧船がありますね。空きがあるか見てきますね」
「竹ちゃんは運転で疲れるでしょ。私が行ってくるから休憩してて」
「…ではお言葉に甘えます。飲み物買ってきますけど何にします?」
「お茶で」
遊覧船のチケットは暮林さんが見てきてくれるというので自分は自販機を探す。
お茶を買って戻ると暮林さんが遊覧船のチケットを二枚持っていた。
どうやら13時の遊覧船に乗れるようだ。
お金を出そうとするも運転代ということで固辞されてしまった。
あとでいくら請求されるのか不安だなぁ…。
「足元に気を付けてくださいね」
「今日はスニーカーだから大丈夫」
乗船時間となったため、遊覧船へと向かう。
窓側を暮林さんに譲り、自分は通路側に座る。
桜を遊覧船で見るなんて初めてだな…。
「わお…水の上から見る桜も中々のものね」
「僕も水上からは初めてですね」
「桜をお花見以外で見に来るなんて久しぶり」
「干物ここに極まれりですね」
「今日は出掛けてるから干物じゃないし」
「お兄さんと彼女さんから逃げてきましたからね」
「悪い口はこの口か!」
「いひゃい」
暮林さんと遊覧船からの花見を楽しんだ。
引っ張られた頬が痛い…。
「ではでは帰りますかね」
「帰りも安全運転でお願いね」
一通り桜を満喫し、売店でお土産を見ると15時を過ぎていた。
今から帰れば17時までには暮林さんを送り届けることができるだろう。
帰りも安全運転だ。
安全運転で帰るので脇腹触るの勘弁してもらっていいですか…?
ポツポツ……。
あれ……雨か。
まだ少ししか走らせてないのに困ったな…。
ちょっと雨宿りできる場所で休憩しよう。
自分一人だけだったら我慢するが、暮林さんと一緒なので無茶はできない。
ちょうどコンビニがあるし、あそこで一時避難だ。
「大丈夫ですか?」
「私は大丈夫よ。竹ちゃんこそ運転大丈夫?」
「僕は全然問題ないですが…。暮林さんがびしょ濡れになるのは避けようかと」
「私は大丈夫なのに。ならちょっとタバコ休憩としましょ」
幸いタバコは濡れておらず、すぐに火をがついた。
タバコを片手にスマホで雨雲確認だ。
「げっ」
「ダメね」
暮林さんも天気を確認していたようだ。
今から深夜まで降り続くようだ。
「すみません。天気を確認してなかった僕のミスです」
「竹ちゃんは悪くないからね」
これは困った。
自分なら濡れネズミになってでも帰宅するが…。
一時間以上も暮林さんに冷たい雨を我慢してもらうのは厳しい。
「これは帰れないねー。どうしよっか」
「うーん…。合羽でも厳しい雨ですね…」
「ホテルでも泊まる?」
なんですと。
ホテル?HOTEL?
暮林さんと二人でホテル?
これは…!
…冗談はここまでにしておこう。
この時期ならどこかビジネスホテルが空いてるだろう。
「一部屋しか空きがない?はい…ありがとうございます」
「そっちもNG?」
「ダメですね。満室じゃないですけど空きが一部屋しかないみたいです」
ホテル自体部屋数が少ないようで、どこも一部屋しか空いてない。
最悪暮林さんだけでもホテルに泊まってもらおう。
「暮林さんだけでもホテルに泊まってください。僕はラブホでもいきます」
「女の子呼ぶの?」
「僕をなんだと…」
「変態」
「誉め言葉ですね」
「ふーん…私は竹ちゃんと一緒でもいいよ」
なんですと。
ちょっと待って。
性欲の塊である僕と同じだって?
これは暮林さんからのお誘…。
「竹ちゃん紳士だから一緒にいても平気でしょ」
「…ソウデスネ」
「それに…」
暮林さんが僕の胸をちょん、と押す。
「襲ってもいいけど責任はとってね」
ドウシテコウナッタ。
良いところですよ!
恵那峡さざなみ公園。
興味ある方は是非行ってみてください。
遊覧船から見る桜も中々良いものです。
冬は雪景色の中を遊覧船でのんびりできるかも?
冬に行ったことないので何とも言えませんが…。




