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とある男女の恋模様  作者: はから
第一章 とある男女の恋模様
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とある男の恋模様

とある男女の恋模様を描いた恋愛物となります。


毎日19時に更新します。


 「彼氏欲しい」


 目の前でハイボール片手に愚痴をこぼすのは美人と有名な暮林 愛海さん。

 そんな美人と居酒屋でサシ飲みしていることに悪い気はしない。


 「僕だって彼女欲しいですよ」


 「竹ちゃんいつもそれじゃん」


 竹ちゃんこと竹科 紅葉は自分の名前だ。

 大手と呼ばれるゼネコンに勤務する28歳独身。

 少々年上に見られることはあるがブサメンではない…多分。

 老け顔なだけだよね…?



 先日打合せ後に取引先の暮林さんからお誘いを受けた。

 若い頃はモデルにキャバ嬢と社内の女性陣から聞いたことがある。

 確かに今でも美人だが昔はもっと綺麗だったのだろう。


 暮林さんが勤めている会社とは取引先ということで頻繁に書類を持ってきてくださる。

 暮林さんが勤めている会社の担当者は自分だ。

 受け渡しに来てくださる方が相当な美人だと聞いた時は嬉しかった。


 社内の女性陣からは愛海の愛からラブちゃんと呼ばれている。

 事務員の和田さんから「ラブちゃんは美人だよー」と言われてウキウキしながら書類を受け取りにいったのも懐かしい。

 初めてお会いした時は美人過ぎて手汗が止まらなかった。

 

 最近は女性が多くなったと言われる建設業界だが、それでも女性社員は少ない。

 そんな男だらけの業界に早7年。

 勤務する中部支社内にも女性はいるが、それでも美人の暮林さんは目の保養に最適だった。

 

 担当として1年と少し。

 1つ違いということもあり、徐々に会話が増えていった。

 そんなこんなで二人で飲みにいくことにもなったのだが…。

 


 世間話をするまで三か月。

 暮林さんの番号を知るまで二か月。

 RINEのIDを知るまで三か月。

 飲みにいけるようになるまで二か月。

 長かった…。


 「暮林さんほどの美女なら選びたい放題でしょ」


 「アラサーの売れ残りだけどね」


 「僕の一つ上なんですからまだ29じゃないですか」


 「来年は30ですけどねー。ていうかまだ誕生日来てないから28!」


 会えば口にするのは「彼氏欲しい」

 連絡先を交換したアプリでも「彼氏欲しい」


 美人な暮林さんでも彼氏はいないらしい。

 こんな美人なら…と思うが美人故の悩みなのか、なかなか彼氏ができないらしい。

 彼氏どころか遊ぶ男もいないので休日はお一人様とのこと。



 「暮林さんならそこらへんの男ならすぐ捕まりますよ。あ、次何にしますか?」


 「私にも選ぶ権利はある。カシオレお願い」


 空になった暮林さんの飲み物と自分の飲み物を注文し、暮林さんの愚痴の間に冷めてしまった焼鳥を手に取る。

 


 「竹ちゃんは最近どうなの」


 「仕事が恋人ですね」


 「そろそろ結婚?」


 「結婚はまだ先ですよ」


 暮林さんが笑いながらグラスに残った氷で遊んでいる。

 このやり取りももう何度目になるかわからない。だけどこのやり取りは嫌いじゃない。


 4年も恋人はいないが人並みに彼女が欲しいと常日頃から思っている。

 あの人に彼女がいてなんで自分には…と思うこともあったが、今ではそんなことを思うことはなくなった。

 

 彼女が欲しい。結婚したい。子供が欲しい。

 28になることもあり、両親からは「結婚は?」と聞かれることもあったが、最近は実家に帰省しても言われることは少なくなった。

 

 一昨年に妹が結婚したこともあり、長男への風当たりも少なくなったと思うべきだろう。

 妹よ。こんな不出来な兄で申し訳ない…。



 「竹ちゃんさ、萩田さんとかオジサマたちにお見合いでもお願いしたらいいのに」


 萩田さんとは自分が所属している部署の課長だ。

 見た目がどう見てもその筋の方に見える強面課長だ。

 強面だが部下の面倒見の良さは見習うべき姿だ。

 

 「萩田さんをお義父さんと呼べと?」


 「そこまで言ってないし。去年きた梅ちゃんとかは?」


 「良い人止まりの竹科です」

 

 良い人止まり。

 入社した頃は若さにまかせて勢いで付き合うことが多かった。

 

 結婚を考えていた彼女にフラれ、それから彼女はいなかったが遊ぶ女性はいた。

 今思うと最低最悪な男だ。


 そんな生活をしていたら今年で28歳。

 地元の同級生や会社の同期などは結婚して家庭を持っている。

 学生の頃は人生設計なども考えていたがまったくもって設計通りにいっていない。


 結婚しました。子供産まれました。

 そのような連絡がくると自分も結婚はまだしも人並みの幸せが欲しいと思ってしまう。


 

 「梅田は可愛い後輩ですよ。恋愛感情はないですね。なんだろう…妹みたいなものですかね」


 「梅ちゃんたしかに小動物みたいな可愛い系だしね」


 「お菓子をあげるとリスみたいに食べるのが可愛いですよ」


 中部支社に去年配属された新入社員の梅ちゃんこと梅田 美菜。

 新入社員らしく何事に元気に挑戦する姿はまるで小動物。

 社内のおじさんやお姉様方。現場の頑固親父たちも可愛がられている新入社員だ。


 チューターの自分のことを女性だと思っていた梅田。

 同じ女性と思ってやってきたのは髭面の老け顔こと竹科 紅葉。

 

 小さい頃から紅葉(こうよう)紅葉(もみじ)と間違えられてきた。

 男だったら紅葉(こうよう)。女だったら紅葉(もみじ)

 名付け親である父のセンスを疑う。


 初対面の挨拶で数秒固まった梅田だったが持ち前の明るさですぐに元気な挨拶が返ってきた。

 配属初日は緊張していた梅田だったが、午後にお菓子を渡すとリスのように食べていた。

 それから安心したのかチューターの自分の後ろを一生懸命ついて回る新入社員。


 支社内では「梅ちゃんの飼い主」「調教師」「裏でペットを売り捌くブローカー」と呼ばれることもしばしば。

 確かに強面な顔だとは思うがブローカーは勘弁してほしい。

 なんだろう…その筋の人に見えるように自分もこの業界に染まってきたのだろうか…。



 「竹ちゃんだって結婚するなら若い娘がいいでしょ」


 「僕は尻に敷かれたいんで」


 「竹ちゃんの性癖で梅ちゃんを変な社会人にしちゃダメだからね」


 「失礼な。梅田(リス子)をそんな目で見てませんよ」


 リス子こと梅田は可愛いが付き合うや結婚したいなどという目では見てない。

 あくまで可愛い後輩。

 ちょっとペットを飼っているみたいに思う時もあるが…。


 

 「竹ちゃんは理想が高過ぎなんじゃないの?」


 「浮気しないでくれたらそれだけで十分です」


 「何?またその話しちゃう?逆ギレビンタの話するには時間がないかなー」


 「僕の武勇伝が聞けないっていうんですか?」


 「武勇伝っていうかドM武勇伝だけどね」


 周囲の人たちにも理想が高過ぎると言われるがそんなことはない。

 過去に浮気されて逆ギレからのビンタを食らった経験上、浮気しない女性と公言しているのに。

 他にも尻に敷かれたい、気が合うなどはあるがそこまで高望みしていると思えない。



 「ん~、そろそろいい時間だし帰りますか」


 「いい時間ですしね。すみませーん、お会計お願いします」


 時間を確認すると23時過ぎ。

 金曜日の週末の飲みとしては少し早いかもしれないが暮林さんと僕の関係はこんなものだ。



 「最後の一口~」


 「忘れ物しないでくださいね」


 「りょーかい」


 暮林さんが電子タバコやスマホなどを鞄にしまい、帰り支度を整える。

 自分も鞄から財布を出して忘れ物がないか机を確認する。

 

 

 「いくら?」


 「5200円なので2000円で」


 「お釣りはいらないよ」


 「2000円ちょっきりじゃお釣りはないですけどね」


 男の甲斐性として奢りますといった初飲みの時に割り勘と言われてから自分が少し多くだし、残りを暮林さんが出すことで落ち着いた。

 少しは格好つけさせてほしいと思ったが、最初から財布を出さない女性よりも好感が持てる。



 「ありゃんしたー」


 店員の威勢のいい声を聴きながら店を出る。 

 金曜日ということもあって飲み屋街の周辺は人が多い。



 「いつもありがとね」


 「これくらいは格好つけさせてください。稼ぎはいいんで」


 「竹ちゃん独身貴族だしね」


 「うむ。よきにはからえ」


 「貴族っていうより悪代官?」


 たわいない話をしつつ暮林さんと駅まで向かう。

 

 まだ肌寒い4月初旬。

 薄手のコートを着ている暮林さんは元モデルだけあってスタイルがいい。

 ほろ酔い美人と駅まで歩くのは気持ちがいい。

 ちょっと履いているショートブーツに踏まれたいと思ってしまったのはご愛敬だ。



 「それじゃ、また来週~」


 「お疲れ様でした。酔って階段から落ちないでくださいね」


 「そこまで飲んでないし。お疲れ様ー」


 カツカツカツと地下に向かう暮林さん。

 足を踏み外すことなく改札へ向かった後姿を見てから自分も自宅へと足を向ける。


 

 「今日もいつも通りか…」


 暮林さんのことが気になる。

 正直付き合いたいと思う。

 もう一歩が踏み出せない。


 この関係が崩れたら?

 いや、暮林さんならフラれても…。

 最初からフラれることが前提のネガティブな自分が嫌になる。


 

 「恋ってなんだっけー?教えてエロい人ー」

 

 恋を忘れて数年。

 恋を忘れた自分の独り言は夜の闇へと消えていった。



 

 

お読みいただきありがとうございます。


誤字脱字報告お待ちしております。

(たくさんあると思いますので…)


よろしければ評価やブクマ登録いただけますと泣いて喜びます( ;∀;)

レビューや感想は数秒間固まります(嬉し過ぎて…)

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