第十章 はじまりは今
第十章 はじまりは今
「何よ、これ?」
クリスは、部屋に炊かれたスモークに驚いている。
「これ、ドライアイスですぅ?」
レナも同様驚いている。
「違いますよ。これはスモークと言って雰囲気を出すためにやる演出の一つですよ」
ジョンが、いかにも昔やったてかの様に説明した。
アレクは、スモークに動揺せず部屋の奥のほうをじっと眺めていた。
「この部屋は一体なんだろう?」
その時、待っていたかのように部屋の奥から何かが現れた。
その何かはクリスより背が低く年下のように見える。
「みなさ〜ん、はじめましてぇ。私がこの屋敷の主のマリィだよ。市民で言うところの魔女さんだね」
そいつは、手を振ってたりする。
あまりの軽すぎる態度に全員こけてしまった。
「レナ、魔女さんに会えたですぅ!!」
何故か、レナだけは目を輝かせていた。
「な、何考えてるんだ?」
「そうよ。あれじゃあ、魔女の雰囲気じゃないわよ」
アレクは、クリスの方を見た。
「雰囲気って、そういう問題か?」
「そうよ。そういう問題よ」
クリスは、力を入れて反論した。
「目立とうとしている辺りはレナさんにそっくりですね」
ジョンがアレクにそっと耳打ちをした。
「ああ、確かに…」
アレクもそう思ったので頷く。
「さぁ〜て、せっかくここまで来たんだから、ここで一つなにかしましょう」
マリィは、ウインクした。
「何かしましょうって言われたってねぇ…?」
アレクは途方にくれてしまった。
レナはとことことマリィのところへ歩いていった。
「あのね、魔女さん。レナ、冒険に出たいですぅ」
うわぁっ、あの命知らず…。
「そぉ、冒険ねぇ…。行くんならアドバイスくらいはしてあげるよぉ」
マリィは、相変わらず軽い態度で応対している。
でもなんかあの二人仲良くなりそうな雰囲気…。
「ねぇ、あなた一体何物なの?」
クリスは一歩前へと進み出た。
「え〜私ぃ?魔女だよ。魔女ってなんだか解る?」
今度は逆に質問を返されてしまった。
「えぇっ?魔女って非常に気まぐれで、人に迷惑かけるのが趣味みたいな…」
クリスは返答に詰まってしまった。
確か、今まで読んだ本の中の魔女はそんな感じだったはず。
「違うよぉ。確かにそういうことが大好きな困ったさんもいっぱいいるけど、魔女って言うのは基本的にいい人達(?)なんだよぉ」
「魔女さんって、願い事叶えてくれるんですぅ?」
レナがさっきから目を輝かせていたのは、そういうわけか。
確かにそう言う話もあるしな。
「そぉねぇ。せっかくだから叶えてあげてもいいんだけどぉ。ただ叶えたんじゃあ面白く無いから、私とゲームしてあなた達が勝ったら叶えてあげるわ。但し一人一つね」
マリィはウインクする。
「ずいぶんと太っ腹だな。なにかあるんじゃないのか?」
アレクは怪しく思った。
すると、マリィはあわてて手を振って否定をした。
「そんなことないよぉ。だって、みんなここまで来ないから私は退屈だったんだよぉ」
そうか、こいつもヒマ人なんだな…。
「ゲームって?」
クリスが聞いた。
「ん〜とねぇ、じゃあ、まずアレクと私が戦うって言うのはどうかなぁ?」
「戦うって今までと同じルールでか?」
アレクが聞いた。
魔女と同じ次元で戦えるわけが無い。
「えぇ?そんなこと出来ると思う?魔女と一般人が戦って勝てるわけ無いよ。だから私は分身で応対するよ。分身は私ほどの力は無いから倒したら勝ち」
「解ったよ」
「アレク。これ返しておくね」
クリスは、アレクに指輪を投げて渡した。
「おう。いっちょがんばるとするか」
「じゃあ、始めるよぉ」
マリィは何をするわけでもなくただ、こっちの様子をうかがっている。
「いつでもいいぜ」
アレクは準備運動をしている。
「じゃ、まずは小手調べから行くよぉ」
マリィは、魔法を唱え分身を創り出した。
「うわ…。二人に増えた」
アレクが驚いていると、マリィは笑いながら答えた。
「魔法で作った私の分身人形だから。壊そうが燃やそうが全然大丈夫だよぉ。それと、私のことはマリィでいいからね」
「解ったよ、マリィ」
「え〜とぉ。しゃべらないほうが分身だからね」
「じゃあ、斬っても大丈夫なんだな?」
アレクは剣に手を伸ばした。
「どうぞ、切れたければぁ、斬ってくださいな♪」
「一瞬でかたをつけてやるぜ」
アレクが剣を抜いて構える。
「私が始めって言ったら始めるからねぇ」
「そんなのはいいからとっとと始めてくれ」
「じゃあ、はじめぇ!」
アレクは始めの合図で、斬りかかる。
がしかし、分身は魔法を唱えた。
「中火炎!」
アレクは予想していたのか横へ飛びのく。
「ちっ、魔法も使うのか…」
少なくとも分身といわれるだけの力はあるらしい。
近づかなければ攻撃は出来ない。
「アレクさん、大丈夫ですぅ?」
「ああ、心配ない」
アレクは振り返らずに返事をした。
よし、こうなったら多少は危険だが、肉を切らして骨を絶つ作戦で行くか。
アレクは、再び斬りかかった。
しかし、今度は分身のほうが交わしてしまった。
「!?」
そして分身は、後ろから蹴りを入れてきた。
まともにくらってしまう。
「ぐぁ…」
アレクは、その反動で剣を振る。
相手に少しかすっただけだ。
「先の動きまで読んでやがる…」
何も考えないで攻撃したらどうなるんだろう。
素朴な疑問が浮かんだのでアレクはスタスタと前へ行く。
どうやら分身は無反応のようだ。
そして、思いきり剣できりつけた。
マリィの分身はあっけなく斬れた。
そして煙を上げて消えてしまった。
「楽勝!」
「すごいねぇ。こんなにあっさり倒せるとは思って無かったよぉ。でも小手調べだからね」
マリィは次の手を考えているようだ。
「アレクさん凄いですぅ♪レナびっくりしてしまったんですぅ」
「そう言えば小手調べとか言ってたみたいだがまだあるんだよな?」
「うん。あるよ。え〜と賞品」
マリィは、透明な石の飾りがついた金のネックレスをアレクに手渡した。
「これは、私とあなた達の友好の証よ。大事に持っててね」
「友好の証?」
「これがあればいつでも私を呼び出すことが出来るよ。呼び出す方法はぁ。私の名前を言うだけ」
「解った。大事に扱わせてもらうよ」
アレクはそれを首にかけた。
「そうですぅ。マリィさんも、レナたちの仲間になってくれるんですぅ」
「じゃあ、本番行こうかしらね。私とかくれんぼよ。見つけたら勝ち、見つからなきゃ延々帰れないわよ。私の用意した仮想現実の中でやるわ。制限時間は無いけど早く見つけないと大変なことになるからね」
「待った。死なないか?」
アレクは自分より他人のことを心配している。
「大丈夫。危険なものは一切無いし一日以内には見つかるはずだから食料に関しても心配ないよ」
「レナも大丈夫ですぅ」
レナはガッツポーズをした。
ちなみにガッツポーズはガッツ石松さんが考案したものだ。
「私はいいわ。ここで待ってるわよ」
「挑戦者はアレク君とレナちゃんでいいんだね?」
マリィがぐるりと一同の反応を見る。
ジョンも参加する意思がないらしい。
「はいですぅ!アレクさん、レナと一緒にガンバしちゃうですぅ!!」
「ああ、やってやろうぜ」
「じゃあ行くわよぉ」
マリィは魔法を唱えた。
アレクは自分の意識が遠のいていくのが解った。




