予定
この時代、あらゆる危険は事前に防止することが常識となっていた。
そういうわけで火災報知器も機能が強化され、簡易的な予言、つまり火災が起こる前に危険を報せてくれるようになった。
ある日ある町のある家で、火災報知器が鳴り響いた。家主があわてて家中を見回すと、テーブルに置いた灰皿からタバコが落ちそうになっていた。しっかりともみ消し、ほっ、と一息つく。しかし、すぐにまた警戒の音が鳴り響いた。
もうどこにも原因になりそうなものはない。ということは、隣人が火事を起こすということだろうか。そう合点した家主は急いで家財を窓から外へ脱出させた。
しかし、いつまで経っても火の手が上がる様子はない。不審がった家主は、表へ出てみた。すると、隣人も、そのまた隣人も、それどころか街中の人が表にいた。
話を聞いてみると、どうやら皆の家でも火災報知器が作動したらしい。
故障だろうか、なんて言い合っていると、雨が降りだした。
やけにべとつく雨だった。