その6 スカート姿で町を歩いても大丈夫だよね?
頭の中を整理しながら歩いていると、たまに町の人々の視線を感じた。
変なのかな、自分て変なのかな、かなり不安になる。
ほら、あのオジサンもボクを食い入るように見てるよ、どうしよう。
なんせ物珍しさで忘れていたけど、ボクは今、人が大勢いる町の中を初めてスカートを穿いて歩いているのだ。
だんだんと露出をしているような気分になってくるのは気のせいか。
ボクのこの格好、肌が半分露出しているのだ。足も肩も丸出しである。露出規制に引っかかったりしないだろうか。
この世界に転生してからモンスターに襲われて助けられて町に来て、めまぐるしい展開に完全に忘れていた。
人前に出て大勢の視線に晒されて思い出したよ。
今のボクは女の子なんだよね。
考えてみればそうだ、ボクは女の子の服なんか着た事が無いのだ、何か重大な間違いを犯していたって不思議ではないのだ。
ボク変なのかな、スカートが変なのかな、もしかして中身が男の子だってバレちゃってるんじゃ!
女の子の服を着て町の中を歩くという行為が、だんだんと恐ろしくなってきた。
ばれてたらどうしよう、人々の目線が怖い。クリームたっぷりのパイを投げられたりしないだろうか。どうせなら甘いやつがいいな。
「やっぱりみのりんみたいな綺麗な女の子と歩いてると、注目度が違うよね~、私たちすっごい見られてるよ。みのりんを見てると女の子の私でもドキドキするもの」
オロオロしてるボクに気が付いているのか付いていないのか、カレンが呑気に言っている。
そんな、綺麗な女の子だなんて……カレンを見てのドキドキ合戦ならボクの圧勝だと思いますよ。
「そ……な事な……い」
赤くなりながら答える、自分の顔を知らないのだ、なにしろ手と足とパンツしか見ていない。
パンツの事を思い出して死にそうになった。
恥ずかしくてまともには見れないけど、隣を歩いているカレンの方が十分すぎるくらいの美少女に思う。
注目を浴びてるのが、実は自分だという事に気がついてないんだろうな、この子。そういう事に疎そうな感じがする。
長いツインテールの黒髪はツヤツヤ輝いて眩しいし、キラキラした瞳もこっちに向けてくる笑顔も眩しくて、存在が太陽のように眩しい女の子。
あーもう、どうしてボクはこんなにも語彙に乏しいんだろうか、ボクのボキャブラ能力では彼女の可愛さと美しさを表現できないのがもどかしい。
とにかく眩しい存在、つまりは恥ずかしくてまともに顔を見れなくて、ただただ眩しいとしか感じられないボクのコミュ障が原因なのだけど。
はあーとため息をついて空を見上げると、太陽をまともに見てしまった。
「あうー眩しいー」
「みのりん大丈夫? ちょっとお店の日陰に入ろうか。もうお昼だもんね、今日は天気いいから太陽サンサンだよ」
カレンに手を引かれて、大きなガラスウィンドウのあるお店の軒下に入った。
女の子と手を繋いでボクはもうフラフラである。
ここで少し休憩しようというカレンの言葉で二人は荷物を日陰に降ろし、ボクは周りを見る。
なるほど、この世界にはガラスは存在しているみたいだと、お店のウィンドウで新しい発見をした。
通りの他の店の窓にもガラスがはめ込まれているようだ。
そしてもう一つの発見をする。
カレン以外の吸い込まれそうな美少女が、ボクの目の前に立っていたのだ。
「う……」
やばい、さっそくキョドる、おおおお女の子だ。
この子の前でどうしていいのかわからない、オロオロとまともに顔を見られないのでその下に視線を落とした。
ちっぱいとかロリパイとかつるぺたで表現した方がいいささやかな山、おっぱいはちょっと可哀想な子だ。これはあんまり見てあげてはいけない。
どうかこの子が挫けずに強く生きていけますように……
この娘を不憫に思って胸から視線を上に外し、まともに顔を見てしまった。
少女もこちらをまともに見つめている。
吸い込まれそうなグリーンアイ、キラキラと輝く目には少し怯えが混ざっていたが、我を忘れて見つめているとその怯えは消えていた。
腰まである青い髪も透き通るようにとても綺麗で、華奢な身体に白い肌、白いトップスに白いミニスカート姿で青と白のトーンはまるで青空を見ているよう。
彼女を表現すると、そうだ眩しい!
はっと我に返ると再びキョドリだす、さあコミュ障炸裂だ。ここからノンストップでオロオロしますよ~。
そんなボクの反応に少女もオロオロ怯えだしたようだ、慌てて彼女に謝る。
「ごめ……じろじろ見……て、怖がらせ……つも……なか……」
…………
ボクは右手を上げてみた。
目の前のロリっ娘は左手を上げる。
右足も上げてみると彼女は左足を上げた、パンツが見えそうになり慌てて降ろす。
バンザイ
バンザイ
「ねえみのりん、さっきから自分の姿見て何やってんの? 漫才の練習? このお店ウィンドウが鏡になってて面白いよね、私もよく服のチェックするよ。……みのりん?」
鏡の前でガタガタ震えだした少女を見てカレンは慌てたようだ。
やっぱりか、途中からそうじゃないかと思ってたけど、やっぱりか。これがボクか、ボクですか。
涙目になった。
いくらなんでも……いくらなんでも……
胸ちっちゃすぎるでしょうよ――!
次回 「女の子扱いされたのがちょっと新鮮」